富国

 

「良いか必ず此度は勝つのじゃ、父上にも負けてはならぬ、調練の方はどうであるか?」



「此度は死角がありませぬ、半兵衛殿からも太鼓判を押されております」



「昨年も同じよう事を言って無かったか? まあー良い負ければ罰を与えるだけじゃ」



「えっ、罰ですか?」



「そうじゃ、罰じゃ、去年は負けて、一番罰を受けてしまったのが飯富殿じゃ、哀れにも太郎の尻を拭かされたのじゃ、拷問であったと言っておったぞ!((笑)」



一同大笑いとなる。



「そうで御座る、某とて飯富に今更、尻の穴を見せる事になろうとは切腹ものでありました」



「どうしてその様な事なったのですか、是非聞きとう御座る」



「儂からは恥ずかしくて言えぬ、説明せよ飯富!」



「ご命令とあらば、試合に負け、それを見ておりました嶺松院様が館で太郎様に槍突き500回の罰を与えたのです、必死にやり遂げなんとか500回を終えますと、母上様の三条のお方様がそれでは足りぬと言って500回追加させたのです、綱引きを終えてから1000回で御座います」



「両腕は腫れ上がり箸も持てませぬ、翌朝には腕に力が入らず褌も付けられませんでした、厠に行くにも介助が必要となり、太郎様が便をした際にその都度某が拭き取ったのです、それも4日程続くという恐ろしい出来事で御座いました!」



「判ったであろう、笑っている場合ではない、何も関係ない飯富殿を見よ、騎馬隊を率いて日ノ本一の者が被害を受けたのじゃ、他人事ではないのだ、そこで此度は綱引きに出る者は太郎館で泊りがけで調練を行う、負けた場合は太郎館で太郎殿と同じ罰を受けるのじゃ、良いな!!」



「お待ち下され、仮に負けた場合は如何致すのでしょうか、皆が腕が腫れ使えなくなった時は?」



「安心するが良い、その時の為に手慣れた飯富殿がいるのじゃ」



「某いやで御座る、もうこれ以上他人の尻穴の面倒を見とうありませぬ」



「え~い、煩い、勝てば良いのじゃ、飯富殿に尻の穴を見せたく無くば勝つのじゃ(笑)」





そしていよいよ秋祭りが始まった。

秋祭りは昨年から模様替えされ領民で楽しく競技に参加し又は鑑賞する内容に工夫された。



目玉の競技は綱引きである、各村又は城下町等で、6名の力自慢を1組作り他の組と綱を引く大会を行う、参加する者は男女自由である。


他に例年と同じ相撲大会を行う。 (元服前の子供の相撲大会も行う)

弓の競技。

騎馬の技競い。

料理の品評会を行う(男女問わず、工夫した料理を作り那須奥方衆にて品評を行う)

昨年の品評会では周知徹底されず、どれもこれも目新しい料理が無く品評する品が無く再度徹底された。



祭り会場には例年通り、芋粥、肉の串焼き、アジの干物焼き、焼き芋、栗おこわ、大学芋、焼きとうもろこし、きな粉もち、麦菓子、べっ甲あめ、氷菓子、濁酒、澄酒、甘酒、麦茶、温かい牛乳、多数の豪華露天販売所を多数用意した。



高櫓を設置し、烏山太鼓の勇壮な舞で開始された。

秋祭りには桟敷席を用意し、祭りへ大きく寄付した者、招待客など観覧出来るようにした。


人気の相撲大会、弓の競技、騎馬の技競いも順調に行われ、いよいよ最大の目玉競技綱引きとなった。


参加希望が余りにも多く、参加する場合に一つの予選前に更なる予選を行った。



大きい岩に綱が掛け、それを1尺(約30cm)引いて動かせば予選に参加出来る事にした。

その結果100組にて予選が初日、2日目に行われ、決勝戦を3日目に行った。

その結果決勝戦に進出した8組は次の通りになった。



1、佐久山村、木こり衆(去年も決勝戦に進出、得意の木こり歌を歌い勝ち上がった)


2、からす山村(去年の優勝チームである、当主組を決勝で破り勝者となった)


3、福原村(去年下馬評とは違い正太郎組に勝ちベスト4まで進出)


4、工夫組(金山で働いている工夫、初出場だが、腕が太く力自慢の者達)


5、長野組(長野業盛が2000名の兵達から選抜した力自慢の者達)


6、マタギ衆(マタギの組頭が集めた熊みたいな連中)


7、正太郎組(山内一豊を大将にアインウイン、武田太郎、佐竹義重、忠義という最強の布陣、去年は前評判であったが、初戦敗退により、飯富が太郎の尻拭きに)


8、当主組(当主資胤が選抜したチーム、去年は決勝でからす山村に負け準優勝に)



「これより8組による順々決勝を行う」



「佐久山組対長野組、配置せよ! 一本勝負である」



「今年は勝つんじゃ、木こりの意地を見せろ、あれだけ歌い込んで練習したんだ、侍に負けんじゃねえーぞ、皆行くぞー! おー!」



「ふっ、ふっ、ふっふふふー我ら箕輪衆の力を示す時が来たぞ、武田を幾度となく退けた箕輪衆の我らの力を天下に示すのじゃ、木こりなどねじ伏せよ! おー!」



「双方よいな、では、勝負開始!」



「負けるな~歌え、歌うのじゃ~、与作は木を切る、とんとんと~とんとんと~(与作は木を切る)とんとんと~とんとんと~、もっと早く歌うのじゃー、とんとんと~とんとんと~(与作は木を切る)とんとんと~とんとんと~、こうなったら、とんとん、だけで行けー、とんとんと~とんとんと~とんとんと~とんとんと~」



「何がとんとんとーんだ、こっちは、ぐんまぐんまぐんまぐんまー、ぐんまぐんまぐんまー、ぐんまぐんまぐんまー、俺達ぐんまぐんまぐんまー、俺達ぐんまぐんまぐんまー」



「なんだあのぐんまとは? きっと何かの呼びかけの合図でしょう、そうか、ではとんとんとーぐんまぐんまぐんまーとの戦いだな」



「もっと引けー力を入れろ、とんとんに負けるな、ぐんまぐんまぐんまー!」



「勝負そこまで、勝者、佐久山村!」



「お~やったぞ、勝ったぞ~! 」



長野「・・・・・」



「残念であったのう長野殿、綱引きは奥が深いのじゃ、某の組が見本を見せるで御座る、よう見ていて下され」



「よいな皆の者判っておろうな、絶対に勝つのじゃよいな、皆を見返してやるのじゃ、飯富殿の世話になってはならぬ!」



「よし調練の結果を出す時ぞー、勝つぞ~! 」



「間もなく太郎が出ます、お方様、間もなくで御座います」



「キャーイケイケ太郎、私の息子太郎~、キャー太郎、私の旦那様~(那須に来てから弾けてしまった、母親の三条のお方と妻の嶺松院)」



「次工夫組対正太郎組、配置に付け!」



「よいか俺達工夫の力を見せつけてやれ、俺達は強いのだ、若様であろうと遠慮はいらぬ、鉱山で働く者達の力を見せてやれー! お~! 」



「この一豊、今日こそ我が名を天下に示す時が来た、皆の者、名を上げよ! お~! 」



何故か今年の一豊チームは全員が鎧兜を身に付けていた、半兵衛の作戦は最前列に佐竹義重、忠義、太郎、一豊、アイン、ウイン、と並び背の小さい者から並び綱を引く力を発揮できるように工夫したのである、どうしても相手の力が強い時は必殺の技を飯富から教えて頂き、必勝を期した。



「配置に付け、まだまだ引いてはならぬ、では、参るぞ、勝負開始!」



「よし声をだせー、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ」



「こっちも負けるな声を出せー、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!」



「なんじゃ、あのかけ声は? 誰があの様なかけ声にしたのじゃ、儂は聞いておらんぞ!(怒)、どうなっておるのか半兵衛」



「皆、あのように叫べば、負けないと、飯富殿に尻を拭かれる事を想像してしまい、力を出すと言っておりました」



「本当か? むしろ飯富殿を励まして尻を拭かせる様に仕向けておらぬであろうな!」



「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!」



「勝負あった、そこまで、勝者正太郎組!」



「お~勝ったぞ、本当に勝ちおった、飯富殿の顔色も真っ青から赤みに戻ったぞ」



「よしよし、それで良いのじゃ、勝てば良いのじゃ」



「勝ちました、お方様勝ちました、太郎殿が勝ちました」



「次、からす山村対マタギ衆、配置せよ!」



「お~これは見物である、去年の優勝した村ぞ、マタギ衆も初参加でここまで来るとは」



「では良いな、勝負開始!」



「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ」



 マタギ衆「・・・・・・・・・・・・・・・・」



「マタギ衆は何も言っておらんぞ、どうしたのだ?」


「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、・・・・・・・・・・・・・」



「勝負そこまで、勝者からす山村!」



「結局マタギ衆は一言も話さず終わったぞ」



「マタギは人見知りが多いと聞きます、あの様に数千人が見ておれば余計声が出せなかったのでしょう」




「なんと・・・・まあーよい、次は当主組が出るぞ」



「次当主組対福原組、配置せよ」



「いよいよ我らの当主組の出番である、侍の力を見せる時ぞ、御屋形様に恥をかかせるな、良いな! お~! 」



「よし、いくべ、農民を舐めなんな、農民力を見せてやるべ、お~! 」



「では良いな、勝負開始!」



「えっさ、えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ!」



「そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!」



「おっ、互角の勝負だぞ、流石両方とも去年決勝まで来た組だ。」



「えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ、そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、そうれ、えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ、そうれ、そうれ、そうれ!」



「勝負そこまで、勝者当主組!」



「お~父上の組が勝ったぞ、良い勝負であった」



「これより準決勝を行う、4組前へ、佐久山村、正太郎組、からす山村、当主組の4組にて行う、ではくじを引きし対戦相手を決める」



「くじ引きの結果、佐久山対当主組、正太郎組対からす山村となりました、では最初に佐久山村対当主組にて行います、両者配置に付け」



「準備はよいな、勝負開始!」



「歌え、歌うのじゃ~、与作は木を切る、とんとんと~とんとんと~(与作は木を切る)とんとんと~とんとんと~、もっと早く歌うのじゃー、もっと早く、とんとんと~とんとんと~(与作は木を切る)とんとんと~とんとんと~、もっと早くじゃー、良し勝負じゃ、とんとんだけで行けー、とんとんと~とんとんと~とんとんと~とんとんと~」



「そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、そうれ、そうれ、そうれ! とんとんに押されとるぞー、声を出せー、出すんじゃー! おのれーとんとんとーの声に調子が狂う、声を張り上げ引けーそうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!」



「とんとんと~とんとんと~とんとんと~とんとんと~そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!」



「勝負あった、そこまで、勝者当主組!」



「ふ~危なかった、とんとんにやられる所だった」



「ほ~予想通り父上の組が残ったぞ、次は儂らだ、一豊頼んだぞ!」



「若様ご安心あれ、飯富殿も安心して見ていて下され」



「ここからが勝負でありますぞ一豊殿、いざという時は某と飯富殿で授けたあの手を使うので御座る」



「ふふふふふ、あの手で御座いますね、お任せあれ」



「次正太郎組対からす山村、配置に付け!」



「勝負開始!」



「オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ」



「流石前年度の優勝組じゃ、互角であるぞ!」



「オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、オブ!、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ。」



「全く動きませぬぞ、あれを使うしか、半兵衛殿合図を一豊殿に合図を!」



軍配の右手を上げた半兵衛!


「おっ、あれは合図である、よし、皆の者、これより必殺の『蛇行綱引き』じゃ、右に左に綱を揺らすのだ、揺らして綱を引っ張れ、それそれそれ揺らして引っ張るのじゃ!」



「勝負あった!」



「お~必殺技が炸裂したようだ、勝ったぞ!」



「勝負あった、正太郎組失格! 正太郎組失格! 勝者からす山組!」



「審判より説明致します、只今は、正太郎組が綱を左右に引き、からす山組の綱引きを妨害しました、よって失格と致しました」



「なんとなんと・・・・なんと・・・失格とは・・・」



おのれ太郎・・・阿修羅となった妻と母、この恥辱晴らさんでおくものか見ておれきゃつのそっ首を刎ねて見せようか!



「だれがだれが反則技を教えたのじゃ、だれだ(怒)! 」



「そう言えば一豊が『蛇行綱引き』と叫んでおった、どこかで聞いた事があるぞ・・・・えっ、もしかして、もしかするのか?・・・『蛇行突撃』と『蛇行綱引き』・・・もしや飯富殿か?」



「若様申し訳ありませぬ、半兵衛殿より必殺技がないかと相談され、蛇行を授けました」



「それがし半兵衛の責であります、あのように強烈な技になるとはもう少し緩やかに蛇行すれば・・・」



「馬鹿もん、蛇行そのものが反則なのじゃ、反則で失格とは、開いた口が閉まらん」



「あっははは、策士、策に溺れるとはこの事よ、見ておれ、勝負とはこのようにやるのよ」



「よいか必ず勝つのじゃ、今年こそは優勝するのだ!」



「次勝った組が優勝となります、当主組対からす山村、位置に付け!」



「勝負開始!」



「そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、そうれ、そうれ、そうれ、よいしょ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ」



「全く動かぬぞ、流石からすや山村じゃ」



「がんばれー当主組、負けるなからす山、どっちも負けるな~! 」



数千名の観衆からやんややんやの声援が飛び交う中。



「勝負そこまで、一旦水入りとする、両者呼吸を整え再度行う」



決着が着かず水入りとなる大一番、両者に盛大な拍手が巻き起こる。



「両者前に、これにて最後決着が着くまで勝負を行う」



「最後の死力を尽くすのだ、ここで力を出さねば何時出すのじゃ、全ての力を出すのだ」



「もあ勝とうが負けようがどうでも良い、おら達は全ての百姓の代表じゃ、農民達に夢をあたえるんだ、力を出し切ろう、それが俺達の那須への恩返しだ!」



「勝負開始!」


「そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、そうれ、そうれ、そうれ、よいしょ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ、よいしょ、そうれ」



「もう力が・・綱が握れねぇー、みんなすまん、もう握れねぇー、許してくれ~、すまねぇー!」



「勝負あった、勝者、からすやま村、勝者からすやま村、優勝はからすやま村!」



「勝ったのか、勝ったのかおら達、もう駄目だと思っただ、うぉ~勝っただ、勝っただあ~」



数千名の観衆から暖かい拍手、泣く者、抱き合う者、見守る侍達からも大きい拍手が巻き起こった、そこへ当主資胤が優勝したからす山村の選手一人一人に、両手で握手を行った。


見事であった、その方達は那須の誇りぞと言って一人一人の手を包んだ。

表彰も無事に終わり、最後は那須巫女48による祝いの舞で終了となった。


この後地獄の太郎館でお仕置きが行われた事は秘事とされ、六人の生贄と今回は半兵衛も飯富と一緒に皆の尻拭きを行う事になった。


料理の品評会も行われたが、残念ながら今年も表彰に値する料理が出品されず、翌年に持ち越された。





── 富国 ──




「大変であったのう、何度かお許し願えないかと三条のお方様の顔色を伺ったのだが、とても儂では勝負にならぬと思い退散した、済まなかったのう、普段は菩薩のような三条様が閻魔様になっておった、儂では無理である」



「某もやっとの思いで家に帰りましたが百合が、あの百合が・・変化へんげしておりました」



「某明年春に婚儀を行う予定でありますが、この話が漏れましたら流れるかも知れませぬ、どうか皆さま、半兵衛殿と飯富殿に尻を拭かれた事、墓場まで持っていって下され」



「うっ、・・・・・・・言葉にもならん」



「某も同じくであります」



「忠義、お前もか・・・・」



「某は家に帰っても何も御座りませんでした、むしろよう頑張りましたなと暖かく某を励ましてくれております」



「一豊よ、その様な奥方を持っているのはお主だけよ、なんというか、天然というか、なにしろ奥方のまつ殿はそんな感じの方である、儂にも良く判らん」



「そうじゃ、あまりの出来事で忘れていた、今後の事である、これから行う政についてじゃ、那須の国は富国の為の政を行う、今の内にしっかりと仕組みを整え、何事にも対処できる強い国にするのじゃ、父上とも相談し、先ずは我らにて考え富国の政策を取りまとめる事になった」



「そこで幾つかの事を仕組みとして那須全体の強化に備えるのじゃ」



「1、育成と教育、2、開墾と増収、3、常備兵増員、4、殖産奨励、5、外交による戦の回避、6、諸国との交易が主な項目じゃ」



「我らの役目の配置換えも行う、長年いろいろ見て来たが皆も大きく成長しており得手不得手が見えて来た、得手の長所を伸ばし政を行う方が良いと思う」



「1、育成と教育は、公家殿を中心に行う、特に読書きが出来る者を多く育てねばなるまい、仕官学校でもそうだが、教える者達が多くいないと事切れる、そこで公家殿の他に主人を亡くした奥方で読書きの教えが出来る者を教師して雇い、多くの子供の面倒を見るのじゃ、例えば1000名の者を見るのに数十人は必要であろう、それも一ヵ所だけでは無理である、何ヵ所かに分け学び舎を作るのじゃ、そうすれば多くの子が習う事が出来る、その仕組みを公家殿と福原が中心となり考えよ」



「はっ、判りました」



「2、開墾と増収、これは以前から取り組んでいるのでそのまま続けて増産を図る」



「3、常備兵の増員、これは農繁期となれば農民足軽は徴兵が出来ぬ、農繁期だろうが関係なく常時戦える兵の増員である、これは忠義が適任である、何れ芦野家の当主となる、立場を利用し全体の増員を図るのじゃ、その補佐に槍隊の太郎、弓隊の千本義隆が適任の者を増員するのじゃ、槍隊の副に佐竹義重殿が付く様に何れ槍隊も数千名という大きい規模にする予定じゃ、弓隊の増員は各七家に振れば問題ない」



「4、殖産の奨励とは、産業じゃ、色々な職人を沢山増やし、育成を図るのじゃ、どこかの地で戦になって生産出来ぬ場合が生じても、他の地でそれを補う事が出来る様にする事も大切じゃ、何しろ物を作り出す産業を整えるのじゃ、これは十兵衛にお願いしたい」



「はっ、判りました」



「5、外交は諸国と渡り合い、軍略を持って那須が有利になるよう戦略を練り対処する所じゃ、具体的には和田殿と半兵衛が行う事になる、三家に関係する部門ゆえ、儂も責任者として見る」



「6、諸国との交易じゃ、帆船が整いつつあり、士官学校を卒した者も出始めた、今後那須が交易を行うのじゃ、油屋から仕入れるだけでは交易の経験が積めぬ、これからは交易にも力を入れるのじゃ、交易については準備が整い相応して者を責任者とする」



「大まかな方針は以上じゃ、それぞれ計画を練り纏めよ、纏まり次第父上と相談し決済する、大事な事は那須が大国となった事に胡坐をかいてはいかん、もっともっと富める国にして行く事じゃ、以上じゃ」






正太郎組失格・・・・『蛇行綱引き』・・・やはりそんな事したら失格であろう。

次章「駿河侵攻」になります。

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