第14話 帰還報告と寝しょべん


 朝餉を済ませ、宿での別れ、女将に持って来ていた塩二貫約19キロを渡し、大喜びされる中、びわ50個、干し柿100個とそれとは別に御屋形様へと、濁酒を一斗樽18ℓ入り三個を頂いたのであった。



 鷲のヒナはまだ飼育が必要であり、八月に行く際に持っていくとの鞍馬からの話であった、三依まで案内を二人が先導するゆえ、ご安心下されと、そして若殿これより我が鞍馬の者達は若殿に全てを捧げますので、よろしくお願い申し上げ致しますと誓いを述べられ、感動のもと別れたのであった。



 真赤であった正太郎のお尻も癒され、青々としたモンゴル斑のお尻に戻っていた、日本の幼子は何故かお尻が青く、そのお尻の青さはモンゴルの民族と関係があると言われているのであった。


 日本の赤子から幼児までお尻が青い事は令和の時代でもなんら不思議な事ではなく日本人であれば極普通の事である。



 帰路では正太郎は相変わらず最初から背負子で背中に荷物として背負われ、里の者と別れた。



「なんで儂だけこの様に背負われて恥ずかしい姿で別れなければならぬのだ」



 と怒りプンプンの正太郎である、そこへ百合が正直に。



「若殿はまだ小さい子供です、幼子なのです、幼子としての自覚を持って下さい」



 とはっきりと言われ。



「この野郎、よくも言ったな、言ってはならぬその一言を、トラの尾を踏んだな」



 と百合を脅も、百合は可愛い赤ちゃん猫の尻尾ですよと言われ、顔を真赤にする正太郎であったのだ。



 帰路は往路よりスムーズに進み、三依では泊まらず関谷で一泊し二日目の夕方には到着した。



 城に到着する前に忠義が騎乗にて間もなく若様が帰還する旨を伝え、城に戻った。


 城では本丸前の門前で、父上と母上様が出迎え。



「よくぞ無事に戻った、一日千秋の思いで待っておったぞと」



 言われ父上、母上に飛びついて泣いた正太郎であったのだ。



 父上より、付き人の者に。


「その方達無事に正太郎と戻り大儀であった、後に褒美をとらす、そち達も今日はゆるりと休むように」


 と言われ解散した、忠義だけは解散せずに私と父の元へ向かうのであった。



「母上様、先に父上に報告しますゆえ、報告しましたら一緒に夕餉を共にしましょう」


 と大人びた事を言う正太郎に笑顔で、母も夕餉を楽しみにしておりますぞと言って一時別れ、父の私室に忠義と向かい、三人にて、此度の平家の里での出来事を報告したのである。



「父上、やはり本当に平家の里には鞍馬の子孫がおりました」



 と報告し、鞍馬の長である鞍馬天狗の話を父上に伝え、祖である与一様と平家の里の者達との秘話を鞍馬天狗から聞いた話を伝えたのである。



「お主の言う事は本当であったのだな、当初は信じる事は出来なかった、わしなりに考え、この那須の家には与一様が残された大きな秘事事が隠されているのではないかと倉庫の中や、古き書置きなども調べておったのだ」



「その中でこの那須の家はその大昔の昔に帝とも何かしらの接点があった様であり、その昔に、戦の折に武蔵野の地名は分らぬが武将とも何らやらあった様な記載された走り書きがあったのだ」



「正太郎が平家の里へ行くにあたり何らかの事がわかれば儲けものであると思っていたが、まさか本当に鞍馬なる者達が居ようとは、それも安徳天皇様の弟君を知らずに与一様はお守りしていたとは、それも源氏の棟梁様である頼朝様に知らせずに平家の一門を守り匿われたとは、これは那須家においてどこまでも隠し通さねばならぬ事であり、むしろ日ノ本にとってこれ以上無き誉な秘事である」



「祖である与一様に繋がる我らはこの事に、どんな事にも変えがたい誇りある出来事であり、どの様な大大名でも出来ない事を成し遂げた与一様の行い、この秘事は日ノ本一の誇りぞ、正太郎もこの事努努ゆめゆめ忘れてはならず、良いな」



「はっ、父上、正太郎も父の嫡子として誇りを持ち与一様が行った秘事に誇りを持ち、ご先祖様へ尽くしてまいります」



「うむ、よくぞ言った、さすがわ我が息子である、他に蒙古の弓についてはどうであった」



「はい、弓については残念ながら父上たちが用いております弓より小さき弓であり、見た限りどれほど役に立つのか皆目見当がつかない様でした、鞍馬が言うには、鞍馬達が利用している弓と大きさは似ており、形は違うなれど、鞍馬の者には弓を作る弓師がおるのでその者に再現させ、本当はどうなのか試して頂ける事になりました」



「なるほどそうであるか、そちと意思が交わる洋一なる者からの話では、その蒙古弓が那須に取って大いに役立ち、大きな力になるとの、そんな話であったな、これまでの洋一からの話はすべて貴重な話であり、弓の話だけが間違いであったとは思えぬ」



「ゆえに疎かに出来ぬ、なんらかの目星があると良いのだが」



「はい、私も良い結果があることを祈っております」



「それとあと三か月後に鞍馬の配下五名が私の配下として来ます、一人は此度同行した侍女の百合と同じ様に女子が1名私の元に来ます、その者を百合と同じく私の侍女として致します、その他四名ほど配下として鞍馬の者が臣下となる事お許し下さい、その者達への俸禄は頂きました村より捻出致しますので、この件もお許し下さい」



「その方はその方でやれる事を思案し進もうとしている事に父として当主として誇りに思うぞ、ここだけの話であるが、わしが五才の時はまだ寝しょんぺんをしておったぞ、正太郎はどうであるか」



 急に顔を赤くし、もごもごと答える正太郎。



「うむ、そちもおしっこを我慢せずに夜中も厠に行く事、鞍馬の配下が来るのであれば、それまでに寝しょべんから卒しておくように、配下の者に示しが付かぬゆえに」



 心の中で、だれが寝しょべんの事を父上に言ったのだ、その者の首をはねねばと、許さん、我の秘事である寝しょべんを伝えた者を探し出さねば、最初に鞍馬の者に、寝しょべんを密告した者を探索せよと、指令を出す事にした正太郎なのであった。



 父上との会話も終わり、母にお土産のビワと干し柿、父には濁酒3樽を渡し、楽しい夕餉を家族で過ごしたのである、もちろん忠義にも渡してあるのであった。



 その夜は、母に甘え一緒に寝た正太郎である、しかし、残念に事にしっかりと寝しょべんをし、母をがっかりさせたのであった。

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