第42話 乱世の様相


乱世の様相を少々記載しておきます。


近年の主な出来事。

1554年3月、武田晴信、北条氏康、今川義元、甲相駿三国同盟締結。

1555年4月、織田信長が守護代織田信友を攻め尾張中枢制圧。

1557年2月、武田軍、葛山譲陥落、善行寺平一帯制圧。

同、4月、長尾景虎、善行寺平に着人、旭山城奪還。

同、7月、第三回川中島の戦い、対峙するも大きな合戦無し。

1558年1月、武田晴信、信濃守護に任じられる。

同じ頃、長尾景虎、上杉憲政から関東管領職の移譲打診。

1559年、2月、晴信出家、武田信玄と名乗る。

同、4月、長尾景虎、足利将軍家に上京、関東管領職相続、越後に戻る際関白近衛前嗣同行。

同、12月北条氏康、嫡男氏政に家督を継がせる。

1560年5月19日、桶狭間の戦い、織田信長、今川義元の首を討ちとる。

同、8月、景虎、初めて関東出陣、上野国掌握。

同、9月、信玄、景虎の隙を突き信濃出陣。

1560~1561年、小田原城の戦い、上杉、長尾連合軍と北条の戦い。

1561年1月、織田信長と徳川家康軍事同盟締結。

1561年、第四回川中島の戦い、最大規模の犠牲を出す。

1563年、六角家観音寺騒動勃発。

同、岡崎を中心に三河一向一揆。


自然災害も少し紹介、日本中世災害年表抜粋、ほんの一例です。


15580130 天下天下大旱、熊野年代記印影本

15580130 上野今年夏、大日照、赤城山年代記赤城神社奉讃会

15580130 常陸餓死、和光院和漢合運東大謄写本

15580725 京都大雹降、長享年後畿内兵乱記後鑑328

15590218 甲斐この年から永禄四年まで、三年、疫病流行、小佐野正秀覚書勝山記

15590218 越後霖雨、両年荒亡ニ依テ…諸役等悉ク免除、上杉年譜6 越佐史料4

15590218 天下この年、天下疫病、人多死、異本塔寺長帳中世東国災害史略年表

15590218 津軽(弘前)津軽旱る、大凶作、日記八木橋文庫

1559053 1甲斐大洪水、夕顔、茄子、麻、稗、苗ことに鴬菜悉く打おり、何もなし、大麦は半分こぼれ候、小佐野正秀覚書 勝山記

15590717 京都祈雨、御湯殿上日記旱魃霖雨史料

15600207 甲斐己未(永禄2)~酉の年(永禄4)まで、三年疫病流行り、村郷あき申し候事無限、小佐野正秀覚書勝山記

15600307 甲斐大雪、小佐野正秀覚書勝山記

15600530 伊勢太神宮をして、災異を祈禳せしむ、瑞光院記 史料綜覧10-496

15600716 甲斐~十月、長雨、耕作以下、何もこれ無く候、疫病流行り、多死無限、小佐野正秀覚書勝山記

15610126 能登大疫、土民死数万人、永光寺年代記加能史料研究2

15610126 甲斐永禄二年からこの年まで三年、疫病流行る、小佐野正秀覚書勝山記

15610126 この年、日本疫病疱瘡悪風気、人多死、異本塔寺長帳中世東国災害史略年表

15610723 加賀 霰降、疫病、産福寺年代記加能地域史11

15610920 陸奥(弘前)八月四日、大風吹、日記八木橋文庫

15620124 丹波 十日比より十四、五日迄、大雪、 天寧寺年代記 東大影写本

15620214 能登 大疫、土民死者億万人、去年ト当年如此、永光寺年代記 加能史料研究    

15620214 武蔵 依大乱、大疫ニ、大飢饉、 年代記配合抄 内閣文庫

15620810 伊予 そのころは飢饉にて、貴賤飢えぬ、清良記6 松浦郁郎校訂



ここに紹介した災害はほんの一例です、甲斐国での災害が多く、信玄が生き延びるために勢力拡大が必要な理由です、乱取りで、作物を奪い、人攫いをし、人を売る。 これが甲斐の戦国です。




─── 正太郎 ───



9月に入り実のり収穫が目の前に、そこへ、千本義隆、鞍馬天狗一行が油屋の船で小田家の領地、霞ケ浦に寄港したと知らせが届いた、堺の油屋の主人、油屋常言が一緒であると先触れが来た。


土浦の小田城より、烏山城まで途中から奥州街道で繋がっており、距離にして約80キロ、馬での移動であれば二日で来れる距離。


先に千本義隆と鞍馬の者数名と油屋常言が来る事になり、他の者は荷馬車と荷物を運び遅れて来る事になった。


烏山に到着した翌日に、当主資胤と正太郎にて広間にて謁見となった、千本義隆より、無事に帝へ献上の品をお届けする事が出来た事と、正二位、山科言継様から帝様から資胤様へ。



「此度の帝への忠勤、誠に持って見事であり、帝もお喜びであると言付かりました」



「うむ、よくぞ果たした、無事に帰還し大役を務めた、褒めて遣わす」



「はっ、それとここに堺の商家、油屋殿の配慮により、船を出して頂き、正太郎様にて依頼しておりました荷馬車も運ばれております、荷馬車は数日後に届きます」



「うむ、油屋であるな」



「はい、それがし堺にて商人をしております、油屋常言と申します、資胤様、若様お初にお目にかかります、どうぞ良しなにお願い致します、堺にて長年商いをしておりますので、京をはじめ周辺の国持大名とも誼を通じております、那須様のお役に立てれば幸いです」



「よく遠き那須の地まで来てくれた、先ずはゆるとり休まれるがよい、いろいろと相談したき事がありそうで嫡子、正太郎が心待ちにしていたぞ」 



「お初にお目にかかる、嫡子正太郎です、油屋殿にはなにかと世話になり、これからも懇意にと考えている、後日ゆるりと相談しようではないか」



「はい、楽しみにしております」



では下がって、休まれよ、天狗だけが残り報告となった。



「某帝に仕えている鞍馬の長、鞍馬天狗と面通しが出来ました、帝を陰ながら那須家がお守りしたい旨も伝わりました事報告いたします」



「父上、凄い事になりました、小さき那須の家ではありますが、京に、朝廷にしっかりと那須の幟を立てました、見える者には見え、眼曇る者には見えぬ幟です、父上、明年の佐竹との戦いに勝ち、戦勝のご報告を父上を帝の元へ参って下さい」



「必ず父上が帝の元に行けます様、正太郎が道を開きます」



「最近、儂はその方の言うがままに操られているのう、あっははは、だが、実に嬉しいぞ、儂が付いているゆえ、その方の考えている事を突き進むがよい」



「はっ、父上、ありがとうございます」



「天狗殿よ、他にあるか?」



「帝に仕える天狗より、京は戦乱の嵐が吹き荒れていると、織田信長の伸張著しく、足利将軍は三好追討を叫び、関東管領職になった上杉家が北条と戦い、さらに野盗が京の町を徘徊、火付けも多発しており、人心危うき事、帝は悲嘆にくれ嘆いているとお聞きしました」



「此度、那須家にて帝に献上の事を殊の外、天狗も喜ばれ、某に火薬の調合を記した秘伝書を渡されました、この調合法があれば、那須のお家をより強くし、さらには帝をお守りにするに必要であろうと渡されました」



「ほう、それは貴重なる物を、天狗殿が言われていた てつはう に必要な火薬であるな?」



「はい、調合の配分が不明であり、使い道によってそれぞれ配合が違いますゆえ、困っておりました、帝に仕える天狗に確認した所、秘伝の書を授かりました」



「元を辿れば同じ鞍馬、心に感じる物があり、真心が通じたのだ、分かれた命が、数百年振りに、再びめぐ会えた鞍馬と鞍馬である、時とは長さではない、良き話である、実に感じ入った」



「さらに忙しくなるであろう、鞍馬よ、これからも頼りにしているぞ」



「はっ、ありがとうござりまする」




─── 翌日 ───




料理人飯之助より、菓子について試作品が出来たと報告を受け、百合と梅を伴って炊事場にいく正太郎。



「ほうこれが、麦粉と砂糖にクルミと油を混ぜ、焼き上げた菓子か、百合、梅食べてみよ」


もぐもぐ・・・


「おい、おい・・二枚目を食べなくても」


もぐもぐ・・・



「きさま・・おのれ・・・こらー、勝手に3枚目を食べるな、忠義こ奴らをここから連れ出せ」



「あ奴らを見ておれば、相当気に入った様だな、では、忠義一緒に食してみよう、もぐもぐ、ダメだ手が伸びる、忠義まで、もごもご、儂がもぐもぐ2枚目なのに3枚目を食べるな」



「おのれー、どいつもこいつも、それにしても甘くて美味じゃ、左之助、これは日持ちはするのか?」 



「はい、壺などに入れておけば持ちます、湿気さえ防げば大丈夫です」



「これなら皆も喜ぶであろうな、作るのは簡単なのか?」



「はい、砂糖を使いますので値は張りますが、簡単で御座います、こちらもどうぞ」



「これは・・・これは・・・飴ですね」



「はい、梅を飴で包んでおります、見た目も綺麗で酸っぱい梅と甘い飴が口の中でいい具合で絡み美味しく頂ける飴です」



「ほう飴とはどれ・・・・これは喜ばれるぞ、口が寂しい時には、これはいい」



「間もなく田の収穫が始まる、その時に村を回るので沢山作ってほしい、大丈夫か? それと菓子の方は今夜母上や母の侍女達にも上げたいのでなんとか焼いて欲しい」



「はい、ただ、梅が今の季節ではなくそれほどありませぬ、梅の無い飴になります」



「それで充分じゃ、甘いなら皆が喜ぶ、今夜油屋との歓迎の宴がある、それにお披露目を行う、左之助よくやった」



「はい、ありがとうございます。」

(砂糖をあんなに使ったけど大丈夫かな)

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