第16話 洋一の模索・・・2
群馬県明和町役場で今成について同じ今成という名の受付女性と話す洋一。
「実は私の住んでいる川越市が私の苗字である今成という発祥の地だとは理解しているのですが、同じ今成の家は少なく、最近知ったのですが、ここの明和町に今成という苗字の方が沢山いるという不思議な話を聞きまして、どうしてなのか、何故川越には少ないのに、この明和町に多いのかと思い今日来ました」
と伝える洋一であった。
その話を聞いていた受付の女性は、同じ今成の今成玲子24才の町職員であった、洋一が説明をしていく中で玲子の目に怪しい光が灯った、獲物を見つけ仕留める気満々のオオカミの目付きになっていたのだ。
玲子の趣味は歴オタという歴女なのだ、それも戦国時代をターゲットに、信長、秀吉、家康というトップレベルの武将には関心を示さず、大名としてはマイナーでありながら、名前が知れている武将をターゲットにしている歴オタの玲子なのであった。
そこへ面白そうな話をする洋一が目の前に現れたのである。
「そうですか、それで今成を調べているのですね、今日はこの後、お時間はおありでしょうかと?」
言われ、特に何も予定はありませんと述べる洋一。
「では私、今日は午後から半休の休みになっているので、私でよろしければ今成について以前調べた事がありますので解る範囲でお教え致しますのでそれでよろしいでしょうか?」
「えっ、それではご迷惑にならないですか?」
(玲子・・・いやいやこんな面白そうな話をする人を逃がす訳ないじゃん、と頭の中で述べる玲子)
「全然大丈夫です、私も午後からの半休は、予定は入れておりません」
と言う玲子であった。
「それではすいませんが、よろしくお願い致します」
とお礼を言う洋一、約1時間後に目の前の役場駐車場で合流する事となった。
洋一はその間に軽く昼飯を食べに近所の洋食屋へ行きランチを食べに。
それにしても偶然にも、あっという間に今成さんという方に会えるとは、この町は今成で成り立っているのかと笑える妄想をしていたのだ、午後予定通りに女性と駐車場で合流、別々の車で玲子の後について行くと、先程昼食をたべた洋食屋へと入る事に、この町にはファミレスはないのか、と頭の中で考え、又ここの洋食屋に来てしまった洋一。
お店に入り玲子はテーブルへ案内し、何を飲むのをか聞き、店の奥にいるマスターに、お父さんコーヒー二つ、と、信じられない言葉を発したのだ。それを聞いた洋一は。
「ここのお店はお父様のお店なのですね、先程昼食をここで頂いた。」
と伝え、二人で笑うのであった。
そこへ、お父さんが、おっ、という怪訝な顔をしてコーヒーを差し出したので、洋一が立ち上がり。
「今成洋一と申します、お世話になります」
と挨拶したのである。
玲子の父は今成と聞いて。
「えっ、えーと、どちらの親類の今成さんでしたか?」
と聞くが、慌てて玲子が。
「いやいやこちら方は川越市の今成さんで親類の方じゃない」
と説明したので、余計に父親は川越ですか、玲子のお友達なのかと聞かれ。
「私も先程役場で初めてお会いしたばかりです。」
と説明、ますます不思議がる父に、洋一が。
「実は私が住んでいる川越には同じ苗字の方が少なく、何故かこの町に今成さんが沢山いる事を知ったので、役場を訪ねまして、そこでお嬢様の今成さんにお会いしたのです」
と説明した洋一。
「なるほどそれで玲子にカモにされたのか」
と笑う父親のマスター、?マークの洋一。
「いいからお父さんはあっちに行って」
追いやる玲子であった。
「改めまして今成玲子と申します、わざわざお連れして申し訳ありませんでした」
「いやこちらこそ変な事に時間をさいて頂き申し訳ありません」
「ではなぜこの町に今成が多いのかという話でしたよね」
「はいそうです」
「実は以前に私も近所に沢山今成という名前の家があるので不思議に思い調べた事があるんです、その時に第一の疑問は、確かに今成という苗字の発祥は川越市の今成館から来ていると判明したのですが、その川越には数件しか今成さんという家が無いと判ったのです」
その数件はほとんど私の家の親類だと思いますと述べる洋一。
「そうですか、ではここ明和町に今成という方は何件位あると思いますか?」
と質問される洋一。
しばらく考える洋一であるが検討もつかない様子だったので。
「玲子がこの町には100世帯以上いると思います、家族の人数を入れれば数百人は今成がいます」
「えー、100世帯以上ですか、そんなにいるのですか、ここの方が発祥の地では?」
と驚く洋一。
「そうですよね、洋一さんも驚きですよね、では明和町の人口と世帯数は、ご存じですか?」
と聞く玲子。
相変わらず答えられない洋一を見て。
(この人は町の事を何も事前調査をしないで、来てやがったのかと・・・と心の声が)
「この町の人口は、ほぼ11,000人で約3,900世帯です、その中に100世帯以上の今成さんが住んでいます」
「それについて洋一さんはどんな印象ですか?」
と聞く玲子。
(この人は結局何も調べないで私の話を聞いているのか、私が今成を調べるのにそれなりの時間をかけて調査したのに、この目の前に人は、何もしないで、回答だけ聞いて、私が調べ上げた内容を持ち去ろうとしているのかと、そう思うとちょっと、すこしだけ虐めていいよね、と、玲子に宿っている悪魔の声が囁くのであった)
自分が何も考えずに来てしまった事を後悔した、簡単な事を質問されても何も答える事の出来ない子供の様に下を向く洋一であった。
暫く会話が途切れる中、玲子は、今成が多い理由に、私が調べた調査では、戦国時代と関係があると思っていると発言、すると突然、戦国時代というキーワードが洋一の脳裏に突き刺さったのである。
急に顔を玲子に向ける洋一、その話を、もっと聞きたいという真顔に変形した洋一に驚く玲子。
(何を急に真剣な表情で、私の顔を見つめるのよ、今まで何も答えられないで下を向いていたのに、と思い次の言葉を口に出すのである)
「戦国時代に、この明和町と川越が関係した争いがあったのです」
と発言を口にした途端に更に顔を近づける洋一。
(何よこの人、今成という名前に反応が薄い割に戦国時代という話になったら急に、どストライクって顔になったけど、一体どうなっているのよ?)
「それはどんな争いなのでしょうか?」
とさらに関係している大名とか、武将とか、栃木県も関係ありますか?と、連続で聞いてくる洋一。
(ちょっとまって、えっ、何、急に、大名、武将、栃木県だって、・・・この人は何か他の事を調べているのか? そもそも今成なんて名前はどうでも良くて、他の何かを知りたがっているのか)
連続で質問された玲子の目に怪しい光が・・・ 歴オタの勘が、二回目の獲物を狙う狼の目付きに変わった、この獲物は美味しいかも、これは生餌が、極上の生餌が・・・私の前に美味しい生餌が・・・・・これは決して逃がさないという顔付になった玲子がそこいたのであった。
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