半兵衛の『那須強靭化計画』


── 巨大な扇状地 ──



国土地理院の説明文を拝借してます、簡単にネットで扇状地と調べれば確認出来る内容です。



那須野ヶ原扇状地せんじょうち、那須野ヶ原は栃木県北部那須地域に位置し、那珂川と箒川に囲まれた広大な扇状地です、那須連山、大佐飛山地山麓部から箒川と那珂川の合流部にかけて広がる標高150~500mほどの緩やかに傾斜した台地、那須野ヶ原台地とも呼ばれている。



その広さは約4万haにおよび日本でも最大級の扇状地、中央部には扇状地特有の水無川の熊川、蛇尾川さびがわがあります、那須野ヶ原の地表から30~50cmより下部は砂礫層のため、大雨の時以外、表層に流水を見ることはありません、そのため、明治新政府により行われたる開拓事業で、那須疎水が作られ多くの恵みをもたらしました。



それと読者の方1990年代に首都移転計画があった事を覚えているでしょうか? 当時首都の不動産価格が高騰した事と一極集中に膨れ上がった都市機能、そして数十年に一度起きている大地震が起きておらず、その事も背景にありました。



そこで国会論議と地方との綱引きの結果首都移転候補地が選定されたのです、最初は10の地域、そして更に絞り、四つの地域に、その中に那須の地が選ばれています。



何故、那須の地が選ばれているのか?



1、自然災害に強い地域

2、特に地震に強い地域

(地震に強い地域なので皇室の避難先として那須御用邸が別荘としてあります)

3、那須御用邸がある事で迎賓館を作り、日本一大きい別荘地帯に、各国の大使館もこの地に造る事が出来る。

4、那須には国が持っている広大な土地がある、土地を買い上げなくても首都機能を作れる。

5、100万人が生活出来る水源がある。


 ※ 最後の5番が、どの候補地でも問題となったのがこの水源である、那須には100万人の水源がある、100万人の水源確保が出来ない地が候補から外れて行きます、他にも沢山ありましたが、主な理由はこの5までになります。




半兵衛が注目したのは、地下に埋まっている礫層に注目した、ずばり砂利と石です。



「若様、若様が折角作りました荷馬車の活用を考えたら那須の地は広いので道の整備をこの石を使って行いましょう、さすれば頑丈な道が出来、移動もこの上なく容易くなりましょう、それと那須には水車が全然ありません、河川の近くにしか田がありませぬ、土地が広いのに田がとても少ない地で御座います、そこで水路を作り水車で遠くへ水を運べば新たな村も作れ田が沢山作れます」



「ほう、儂も前から田が少ないと思っていたが田には水が必要なので、あまり考えていなかったのじゃ、水路を作り、水車で水を流すのじゃな?」



「そうです、そうなれば広い土地があるので田を何倍も増やせます、これからも他の地より那須に難民が来るものと思われます、新しい村をどんどん作れます、いかがでしょうか?」



「半兵衛がそこまで言うからには既に頭の中で絵が出来ているのであろう、銭は沢山あるので、必要な人を集め、計画を練り、進めようでは無いか、田植えが終われば人の手も増やせる、半兵衛、まずはやってみようではないか」



「はい、ありがとうございます、では忠義殿と義隆殿に相談し勧めまする」



これにより半兵衛による『那須強靭化計画』が動き出す。




折角なので、ここで日本の農作物を大幅に増やす政策で有名なのが、日本三代疎水という水のある所から水路を整え、水が無い地域に水を送り、広大な農地確保をするための、開拓の為に行った事業に日本三代疎水事業を紹介しよう。



三大疎水とは、琵琶湖疎水、安積疎水あさかそすい、那須疎水の三つである、疎水という名で検索すれば簡単にヒットしますのでご参照に。



琵琶湖疏水は、湖水を西隣の京都市へ流すため、明治時代に作られた水路(疏水)である、京都の水源地であり、この疎水こそが京都の生命線となっている、最近では琵琶湖に流れて来る河川からの水量が不足しており、琵琶湖の水面低下が問題になる時がある。



安積疏水あさかそすいは、猪苗代湖より取水し、福島県郡山市とその周辺地域の安積原野に農業用水・工業用水・飲用水を供給している疏水である、水力発電にも使用される。


面積は琵琶湖、霞ケ浦、サロマ湖に次いで日本第4位の猪苗代湖、特徴は透明度が高く、平均水深51.5m、深い所で、94.6m、夏場は湖水浴場としてリゾート地でもある。




那須疎水は、扇状地の説明で紹介しましたが、那須野ヶ原は那須岳、大佐飛山地、高原山より流れ出る複数の河川(那珂川、熊川、蛇尾川、箒川)によって国内最大級の複合扇状地が形成されている、その面積はおよそ4万haにのぼるが河水はそのほとんどが伏流水として地下に潜る、河川の水が地下水となり、人が住む地域も、田畑を耕す地域も限定されていた、その結果作られた疎水は総延長約332.9kmの水路網によって約4,000haの開墾が可能となった、その疎水が整備されているので100万人が生活出来る水源があり根拠として首都移転構想の最有力地になったのです。




半兵衛は主要道路の整備として、この豊富にある礫(岩と砕石)を利用して強固な道作りを計画した、中心地は烏山城に続く道である。




1、烏山~大子~大津浜への道、2、大津浜~高萩までの海岸線の道、3、烏山~大田原~芦野までの道、この主要三線の道路整備と、主要三線に絡む河川から水車を利用し用水路を整備し、農地の開拓事業を行う事にした。






── 躑躅ヶ崎館 ──





「なにを愚図愚図しておるのじゃ、早く消さぬか、水を皆で汲んで消すのじゃ、女子は外に出ていろ邪魔建てするな、なんでこんなになるまで気付かぬのじゃ、馬鹿者!」




結局炊事場からの火事はその周りの部屋を焼くものの朝方には鎮火出来た、炊事場からの火の回りが早かったのは、鞍馬の配下による工夫であり、ニ刻程時間が稼げれば良いだけであり、その通りの火付けとなった。



「なんでその方達までここにいるのじゃ、誰が呼んだのじゃ、見張りをなんと心得る、早く戻れ! たかがこの程度狼狽え追って」



後始末に追われる中、寺に戻った者達が顔色を変え戻って来た。



「大変です御屋形様、太郎様が居りませぬ、寺に降りませぬ、さらに飯富虎昌、長坂源五郎、曽根周防の三名も寺から抜け出しました、見張りの者達が倒されております」



「あ~、なんだと、この馬鹿者 誰かが手引きしたに違いない、これは、この火事も仕組まれたのじゃ」



信玄は直ぐに何者かによって仕組まれ、太郎と飯富虎昌、長坂源五郎、曽根周防を逃がしたに違いないと判断した。



「騎馬隊を使い急ぎ甲斐の国から外へ通じる道々の関所を閉じるのだ、甲斐から通じる全ての道を塞ぐのじゃ、獣道にも見張りを付け絶対に通してはならん、特に駿河(現在の静岡県東部沼津から大井川まで)と遠江(現在の静岡県西部大井川から浜名湖周辺)に通じる道は厳重に見張るのじゃ、恐らくその方面に行ったに違いない」



それにしても一体誰が太郎達を手引きしたのじゃ、これは不味い、太郎が今川へ抜けたら、我らの計画が露見してしまう、場合によっては北条とも手切れとなり追い込まれるやもしれん、手を打たねばならぬ、どうすれば良いか、と思案する信玄であった、そこへ弟の信康が顔色を変えながら。



「兄上これは大変な事になりました、太郎が今川に通じたならば、北条とも手切れとなりましょうぞ、今川領内と北条領内に忍びを放ち、通じる前に見つけ取り押さえましょう、歯向かう様であれば残念ですが斬るしかありません、太郎だけでも押さえればなんとかなります」



「そうであった、信康の言う通りである、今川、北条の領内に入っても取り押さえれば良いのじゃ、今から手配するのじゃ、千代女にも歩き巫女を多数今川と北条と接する領内に放ち見張らせよ、それらしい者がいたら忍びに知らせるのじゃ、頼む一刻を争う、信康手を打つのじゃ」



「では早速手を打ちまする、まだ二刻程四時間しか経っておりません、まだ遠くへ行っておらぬでしょう、甲斐の国より出れません、きっと領内のどこかに潜伏しております、領内も探索させます」



御屋形様からの指令を受け、急ぎ歩き巫女達を集め駿河と遠江今川領と北条領内に手元にいる巫女達全てを送った、千代女は数ヶ月前に戻らぬ巫女達の捜索に手練れの巫女四名を那須へ送ったが、その者達も戻っておらず、此度の件といい、何か知らない事が起きていると考えていた。



那須から戻らぬ巫女と今回の太郎様の事、全く関係ない事であり一見繋がりが無いようであるが、歩き巫女を束ねる長として何かを感じていた、千代女は幼い頃より忍びの子として調練を受けていたが、育つにつれ、人の心が見通せる、相手が考えている事を誰よりも読める子であった、又、先読みという不思議な力があると見抜いた師匠が神官であり特殊な宿禰に千代女を連れて行き見てもらった所、千代女には人を操る力が、特殊な力が宿っているとして、千代女を引き取り、宿禰の元で修行していたのだ。



宿禰の元では日ノ本の神話に出て来る神々と関連する場所を廻りその場所にて宿禰から数々の呪印と陰呪という負が宿った言霊を千代女の魂に封印され、人を操る呪印の力を授かり忍びとしてではなく、人を操る巫女の長として信玄に仕える事になったのである。



私の封印を解ける者は日ノ本の神々から神託を受けた系譜の宿禰だけであり、まさかその様な存在が関連しているとは思えない、だが、しかし、武田家に取って見過ごす事が出来ない、まだ目に見えない芽が地中で育っていると確信する千代女であった、この段階では千代女以外その様に考える者は誰1人いなかった。





最後に何やら危ない女が登場しました、千代女が魔女の様に見えます。

次章「永禄の変」になります。

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