第31話 正太郎の政・・・1


昨年11月に堺に行って物が大きく見える透明な板を手に入れる様に使わした鞍馬の配下が戻った、10名ほどの人を連れて戻ったのである。



「よくぞ戻った、四か月もの間、実に苦労をかけた」



「はっ、ご指示の通りの結果とはならず申し訳ございません」



「えっ、そうなのか、えーと、どいう事なのか報告してほしい」



「ご命令の物が大きく見える透明な板なる物はここに10枚ほど手に入れましたが、ほとんどが、修繕が必要な物との事です、それと大変も申し訳ございませんが、頂いた費えが不足しており、満足な結果になりませんでした」



「えっ、不足、詳しい事を報告してくれ、そちの失態ではないかと思うゆえ、何があったのか教えてくれ」



「はっ、正太郎様より拝命を受け、堺に着きましたが、物を買う事に慣れておりませぬので、堺で有名な油屋という商屋が色々な品を取り扱っていると聞き、正太郎様から依頼された透明な、物が大きく見える板を購入したいと番頭に依頼したのです」



「それで頂きました銭10貫を渡し、これでお願いすると、他に切子なる職人とか良さそうな職人もお願い致しました、他浪人とかも召し抱えたいゆえ何とかして欲しいと依頼しました」



「うんうん、それから、どうなったの?」



「番頭の話では渡しました銭10貫では、そこにある数しか渡せない、10貫では少なすぎると、失礼な物言いを言われましたが、10枚ほど手に入れるので精一杯で御座いました」


 

「ここに連れてきた者も、上方にて働いた者達が多いのですが、上方では国内が戦で荒れており、日々の生活が儘ならず、堺へ逃げて来た職人達で、その油屋が、なんらかの仕事を与え、糊口をしのいでいた者達を、渡されましたのでお連れ致しました」



「うー、それは、むしろ、申し訳ない事をお主に頼んでしまったのう、10貫が大金だと思っていが・・・儂の落ち度であった、他にはあるか」




「はっ、連れて来たの者達の家族は費えが足らず、ここにお連れ出来れませなんだ、この者達に不便をおかけしております」




「本来であればここにいる者達の家族をお連れしたかったのですが、油屋様の配慮で今少し面倒を見て頂いております」




「なんと・・・では、ここにいる者の家族は、その油屋なる商家で面倒を見て頂いているのか?」



「はい、その通りで御座います」



「家族を含めるといかほどの人数になるのか?」



「はっ、60人ほどおります」



「それはなんとかしなければならぬ、忠義、これはどうすれば良いかのう?」




「60人もとなると大変な数です、ここに来るまでの移動も容易ならず・・・たしか・・・此度、軍事同盟を結ばれた小田様にお力をお借りしては如何でしょうか」



「それはどいう事だ?」



「大きい湖にて、案内された時に定期的に堺に貿易の船を出していると言っておられました、その船を出して頂き、その60名をお連れ出来ないでしょうか、500石船を何艘かお持ちであると言っておられましたかと」



「おおーたしかに彦太郎殿が言っておった、それなら60人は大丈夫であるのかのう、船の事は儂にはさっぱりじゃ」



「某しにもわかりませぬが、大きい船かと思います、60名もの人の移動となれば、船の方が安全かと思いまする、それにこの者達の奥方や子供もおるかと、陸での長旅より船の方が良いかと」




「恐れながらよろしいでしょうか」




「おっ、すまぬ、まだお主達の事を聞いておらなかった、意見があれば遠慮せずに言ってくれ」



「はっ、申し訳ありませぬ、それがし幸地と申します、船大工でした、今お話の中で、500石船のお話が出ておりましたので、500石船であれば60人の人数であれば問題はないかと思いまする、ただ荷運びの船ですので、移動に日数が必要となります、人が多ければ少し手を入れねばなりませぬと思われます」



「その方、船大工であったか、それは良き話を教えてくれた、どうであろうか忠義、小田殿にお力を借りようではないか」



「それなら当家の者と、今話した大工、幸地を伴って行くのがよろしいのでは」 



「確かにそうであるな、では、忠義その様に手配を頼む、幸地も同行し、力をかしてくれ」



「とんでもございませぬ、こちらこそ感謝申し上げ致します」




「それかとすまぬが、連れて来た者達を紹介してほしい」



「はっ、ではこちらの者は医師見習い 18才 幸之助 見習期間5年との事です、師匠が野盗に襲われ亡くなり、出入りしていた油屋でお世話になっていたとの事です、次にこちらは先ほどの船大工親方 幸地と弟子になります、親方53才 幸地 弟子二名 吉男18才と幸吉22才になります」




「それと船大工親方の幸地が誘った仕事仲間、鳶職人 佐吉25才、左官職人、吉兵衛25才、井戸掘り師 市蔵30才になります、それと焼物職人 28才 伝左衛門 になります」




「それと、この者達が外ノ国で南蛮人の奴隷なっていた者達で、油屋にて南蛮人より奴隷を買い入れ使用人として働いたいたそうですが、この様に体が大きく色が黒く珍しい為に堺ではこの珍しい二人を見ようと油屋に連日人だかりとなり、仕事にならず困っていたところへ、当方が浪人を探していたので、渡されました、この者達は生まれ育った国では戦士言っておりましたので、お連れ致しました」




「黒人奴隷 戦士2名 名を アウン と ウイン 兄弟になります、年齢は本人達も判らないと、ほぼ20才位かと思われます、他に若様から言われました、切子なる職人は油屋でも判らないそうです、此度は費えが無くなり浪人はお連れできませんでした、以上となります」




「お主、大変であったな、しかし実に凄いぞ、銭も足らずこの様に職人達をよくぞ連れて来た、皆の者、挨拶が遅れたが、わしは、那須家嫡男、正太郎である、よくぞ参った、これからの生活は皆が安心して暮らせる様にいたすゆえ、どうか那須家に仕えて欲しい、よろしく頼む」



「はっ、こちらこそお世話になります、どうぞよろしくお願い致します」



「うむ、よろしく頼む、ところで、その黒い戦士の二人は言葉は話せるのかな?」



「はっ、発音はまだまだですが、こちらの言葉はほぼ通じる様です」



「ほほう、そうか、見た所、体が物凄く大きい様だが」



「はっ、二人とも1間と三寸(190㎝)ほどはありそうです、見事な体格をしております」



「二人はどんな戦士だったのだ、どうして奴隷になってしまったのだ、言葉は解るか」



「はい、私達は兄弟です・・海の近くで狩りをしていました、南蛮人が来て、お酒を飲み、眠って、起きたら奴隷にされました・・・私の武器は槍になります、弓も使えます、二人で獅子も倒しました」



「なんだと人さらいをされて、奴隷にされて、日本まで来たのだな?」




「とんでもない話であるな、南蛮人の奴隷とは、お主達の様にさらわれた者なのか?」



「はい、沢山いました」



「南蛮人とは、野盗と変わらぬ奴らであるな」




「はっ、油屋の話では、その奴隷となった者は商品と同じで、小さい子供から年若い娘などを、さらっては奴隷にし、慰み者として売っているとの事です、油屋も、南蛮人とは商売になるので取引はしているが、貪欲で悪辣な奴らであると言っておられました」



「此度は、油屋という商家になにかと世話になったのじゃな、南蛮人の事も聞けたし、思う事はあるが、先ずは、皆の者休息してくれ、今後の事はおいおい考える事といたそう、皆の者大義であった、ゆるりと休むがよい、また後程に致そう」



「忠義皆を宿舎に案内を頼む、その後に、鞍馬の者と一緒に部屋に来てくれ」



「はっ、では皆の者ついて参れ」




「此度そなたの働き見事であった、しかし10貫では不足であったとは、済まなかったのう、油屋にいる家族達をこちらに移す際にお礼をしなければならぬな~」



「それなれば若様が言われていた、此度、堺の油屋なる所と縁が出来ましたので、あの貴重なる品を売ったらどうでしょうか、油屋もあれほど貴重な品なれば喉から手がほど欲しいかと、思われます、世話になった油屋にも恩を返し、品を売れば恩を売る事にもなり、若様の政を勧める上でこの際、誼を通じる事にしてはどうでしょうか」



「おおー、でかした、忠義、その通りじゃ・・・それが良い」



「あのな、そちが堺にいっている間に、天狗殿より、あの椎茸栽培が成功したとあり、こないだ幾らか届けてくれたのよ」



「なんとあの椎茸が成功したのですか、帝すら食する事が出来ないと言われていた、あの椎茸が、きっと油屋なら喜んで買って頂けると思います、油屋は堺では有名な豪商です、蔵だけで20は持っているかと」



「それは凄いのう、名前が油屋なので気にはなっていたが」



「はっ、名前こそ油屋ですが、油は勿論ですが、米、塩、味噌、穀類、茶、漆器と何でも扱っております」



「では、そちから飛風に天狗のもとに行ってもらい、干した椎茸を2~3斤(1200g~1800g)を城に届けて欲しいと使いをだして欲しい」




「それからそちには又、堺に行ってもらわなければならぬので、準備が整うまで休む様にしてくれ」



「忠義には、小田彦太郎殿に文を書くので使いを出してくれ、職人達だが、城からも近い平蔵の村に住んでもらうので、大工を手配して家を建てて欲しい、連れて来た船大工は小田殿にお借り出来る船を家族が乗れるように工夫して頂こう」



「はっ、では某その様に手配り致します」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る