第63 上京・・・1



── 魔都戦国ツアー ──




少し時間は遡り令和の洋一と玲子は無事に結婚式を終え、5月7日早朝に新婚旅行に向かった、旅行のプランは玲子が、私に任せてという事でお任せプラン、新幹線の中で所で、どんなプランなのかと楽しみに聞く洋一に、これよこれと言ってあるチケットが渡された、そこに書かれていたチケットには。




『古の魔都を舞台に戦国武将たちの怨念、欲望と裏切り、狂気に走った武士達が繰り広げた殺し合い、戦の跡が生々しく残る戦国時代の魔都京都、戦国にまつわる殺された者達の恐怖の闇の怨念が渦巻く負のパワースポットへあなたを道案内します!』と書かれていた。




魔都・・・・・に行くの? ・・・新婚旅行なのに・・・到着する前に魔に襲われる洋一、今日はホテルの近く散策だから大丈夫と笑って説明する玲子であった、何が大丈夫なのか、サッパリな洋一、もう諦めるしか無い洋一であった。



京都に着き、先ずホテルにチェックインしてタクシーで目的地へ。



「ここよここ、ここは日本三大怨霊首塚って言われている所なの、栗田口刑場跡で酒呑童子って有名な鬼の首塚よ、都に出ては金銀を盗み、悪行の数々をした鬼、陰陽師安倍晴明が酒呑童子の仕業だと突き止め、酒呑童子たちを油断させて毒酒を飲ませて寝込みを襲って名刀で酒呑童子の首を切り落とした首塚よ」



「酒呑童子って、相当の悪党で逆らう者には誰であれ、殺しまくって、当時の人々は危険な存在を鬼という表現で表していたから、鬼の頭目が酒呑童子だったんだ、本当にあるんだねぇー、すごいねぇー!」



一体何が凄いのか、こんな所へ、新婚旅行で旦那を連れて来た玲子の方が凄いと思った洋一。



「次はあそこね、菅原道真の北野天満宮だね、有名な『東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな!』で、よく知られた学問の神様の菅原道真公の神社、学問の神様で有名な菅原道真公の神社だよ、藤原時平という左大臣に才能を妬まれ、ざん言で左遷され、無念の死を遂げた道真さん、それから起きた天災や社会の混乱が道真の怨霊たたりであると、都中が恐怖に陥りその怨霊を鎮めるためこの北野天満宮が建てられたんだよ」



「受験シーズンに賑わう所だね、学問の神様なのに、可哀想な最後だったんだよね」



凄い話だよねぇーと説明する玲子に、頭を上下に振りながら、どう考えても新婚旅行でここに連れて来た玲子さんの方がよっぽど凄いと頭を上下に振る洋一、この日はホテルに帰る事になりホットするも、明日の説明を始める玲子であった。



明日はねえーその道の専門の人が添乗してバスツアーだから、安心してねと、何が安心なのか本当に解らない洋一、楽しみだねえーと、嬉しそうに話す玲子に、何も言えず、ウソ泣きではなく、うそ笑いをするしかなった。



玲子が、洋一に他にどこか行きたいか聞いたので、やっとの思いで三十三間堂に行きたいとやっと一ヵ所言えた。



「成程、さすが洋一さんだね、弓士の聖地だからね、京都蓮華王院(別名三十三間堂)全長(小口から小口まで)121.7mを渡り廊下だったかな? その長い距離を通し矢で向こう側まで射やれば一人前で、その昔、日本一の弓士を決める場所だったよね?」



「よく知っていますね、流石玲子さんです、実際に121m打てる場所って中々無いんですよ、野原とか行けば幾らでもありますが、堂々と打てる所はそれ程ないので、戦国時代からそこでは競われていた場所なので、どうしてもじっくり見学したかったんです」



うんうん、わかるわかる私の怨霊スポットと同じだね、じゃー最終日に、見てから帰ろうね、と玲子が言うも、そんなに怨霊スポット行きたかったのかと、玲子に寒気を覚える洋一。

(俺の方が玲子さんを恨むかも・・・)




翌日の戦国ツアーは、予想以上にハードなツアーとなった、次から次とここで有名な将軍が死んだ、ここで信長に1000人以上殺された、ここで信長が明智に殺された、この井戸に~された、ここで~があった、もう勘弁してくれー、一生に一度の新婚旅行なのに、俺の新婚旅行を返せーと叫びたい洋一、戦国ツアーをなんとか生還した洋一、その夜、恐ろしい夢を見るのであった。



あれ、なんか乗り物に乗っている、これは・・ここは、あの悪夢の花やしき・・・ぎゃー、うおー侍の亡霊が追いかけて来るぞ~ぎゃー、ぜえぜえー、今度はスイーツ店だ、うおー玲子さんが生首のパフェ食べてる、洋一さん~あ~んして・・・出来るかボケー・・・恐ろしい夢を見た洋一であった。



最終日、なんとか息を吹き返し、午前中はじっくりと三十三間堂を見る事に、玲子は最後に、これこれと言って餡蜜を二杯平らげていた、結婚指輪をはめる事を諦めたのかと聞こうと思ったが、言葉が口から出る瞬間、口を押え、地雷を踏むかも知れないと危険を回避した洋一。





── 那須資胤 ──




「これより帝の元へ出立する皆の者、出立じゃー!!」



1564年9月末、下野国那須烏山城から都に向け上京を開始した、史実には無い出来事である、1564年の佐竹との合戦により、史実とは違う、那須の新しい歴史が動き出したのである。



騎馬隊を中心に300名、荷駄隊50名、正太郎配下より、千本義隆、明智十兵衛、鞍馬天狗他配下複数を付ける事になった、数々の献上品と銭500貫(現代の5000万)を用意した、菓子職人飯之介を伴い資胤の食事と歌会で提供する麦菓子など用意する予定であった。



此度の上京は佐竹との合戦で勝利する事を前提で正太郎が計画していた事である、通行する道々の領国の大名へ、朝廷への那須家が帝に届ける献上の品である事、当主が帝の元に行く為の通行である旨と伝え、通行する許可を事前に得た上での堂々たる上京なのである。



上京のルートは、烏山→宇都宮→古河→岩槻→江戸→戸塚→小田原→箱根を抜け沼津→と続き東海道で上京するルートにした、東海道は、五畿七道駅路と呼ばれ律令制の古くからある道であり、主要な道路であった、問題は烏山と言う地から遠くに京があり大変な長距離の移動となる。



騎馬での移動ではあるが、10日以上は要する、途中に、ほぼ交流の無かった小田原の北条、今川、織田、京に近づけば六角など大大名の領国内を通過するという事が、通行許可を得たとは言え、けして安全が保証された訳ではない、そこで念の為に、同行する鞍馬の配下とは別に、密かに先行部隊を送り出し、安全確保を行い進む事ととした。



宿泊する場所も、宿場町を利用し、事前に宿を押さえていた、小さき家ではあるが、安全性を確保すると共に、那須家の家紋を堂々と上げ、これが朝廷をお守りする大名の姿であるという事を天下に示す行軍としたのである。




那須家の上京計画が具体的になるに従い、小田家でもこの際上京すべしという判断をし当主、小田氏治は号令を掛け、小田家は船での上京と言う事もあり、5隻の船で300名の伴を従え上京する事になった。



那須家より、事前に献上する品についてもお互いが恥をかかぬように配慮し小田家では塩と海産物など那須で用意が大変なものを揃えた。



京周辺での宿泊する宿手配は両家とも油屋に依頼し、油屋も、大きくなった那須家、さらに小田家とも誼をえる事が出来ると判断し、油屋総出で、取り組んだ。



京での合流は10月15日前後とし、それぞれが出立となった。



那須家の出立時には壮麗な狩衣装束で周辺の農民達に見送られての荘厳な衣装であったが、途中の休憩宿場では、軽装な動きやすい衣装に変え、持参している弓も大きい和弓である、五峰弓も持参しているが馬の鞍に弓を収める専用の皮袋を付けそこに収納しており、外見は今までの和弓の武装とした。



上京への移動は事前に各領地の通行許可を得ており、関所での通行も荷改めも無く移動が行えた、ただ通行時に、北条家と織田家からは、是非逗留し宿泊して行く様にと当主からの誘いがあり、歓待を受ける事にした、両家の共通した事柄は、どうやって佐竹を破ったのか、どの様な戦法で戦ったのかと言う事に強烈に関心を示しており、両家とも弓にて撃退し、破った事に驚き、驚愕していたのである。



特に織田信長は、鉄砲という近代兵器に傾注しており、この時点で大金をかけ1000丁以上の鉄砲を所持しており、全く鉄砲を所持していない那須が鉄砲を所持している佐竹を打ち破った事に衝撃を受けていた、雨も降っておらず、何故鉄砲が役に立たないのか? どうしても納得も理解も出来ないという怒りすらその表情から見て取れた。



那須資胤も、鉄砲を使わずに弓で勝った以上の他に説明も出来ず、後日歓待のお礼に与一様が乗っている我らの那須駒を送るという事で、機嫌が良くなり、翌日に出立出来たのである、正直面倒な人であり、感情を抑える事が出来ない、出来れば誼を通じたくない家であると思った。



それに比べ北条家当主、北条氏政は、弓で勝った事に、感心し、流石坂東武者の御家柄、与一様のお家である、と大喜びであった、これまでに佐竹とも北条家は戦っており、それを破った那須に我事の様に喜んでいた、是非、帰路の際にも寄って頂きたいと懇願され、これまた、後日那須駒を送る事となったのである。





いよいよ上京出発ですね、信長も弓に負けた佐竹にショックなんだと思います。

次章「上京2」になります。

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