第21話  蒙古弓の恐るべき正体・・・2


「父上、この様に小さき蒙古の弓と那須家が得意とする弓の併せ業を使えば、合戦時に使用出来れば大いに役立つかと思われます、いかがでしょうか?」



「その事よ、弓之坊よ、その弓を使う場合、良き思案はあるか」



「はっ、我々が使う弓と大きさは、ほぼ同じなれど、強き弓きゆえ、那須家の皆様であれば、自在に操り馬上にても比類なき扱いがお出来かと、特に那須家の皆様なら容易い事かと」



「でものう、蒙古弓という名では忌避されるかも知れぬのう」



「 弓之坊どの、弓を再現するにあたって、全く同じ材料で再現出来たのか?」




「はっ、若様、それは某の手元にある木をいろいろと張り合わせております、又、張り合わせる木も種類を変えております」



「木を変える理由はなんでなのじゃ?」



「それは同じ木だけの張り合わせでは、しなり具合も弓の強度も違い、同じ木だけで貼り合わせるとしなりが弱く折れやすく成ります、その為蒙古弓もいろいろな材料を張り合わせ作られております」



「なるほど、それでは父上、弓の構造は似ておりまするが、あくまでも那須の領国で作られた新しき弓という事であれば忌避されずに使用できるかと」



「おお、そのように考えれば良いな、名も別にあった方が良いな」



「父上、それなら那須の地にちなんで、『那須五峰弓』ではいかがでしょうか、五峰とは那須山の峰々をなす五峰から取った那須家を象徴する名に繋がります、どうでしょうか?」



「茶臼岳、朝日岳、三本槍岳、南月山、黒尾谷山の五峰であるな」



「はい、『那須五峰弓』なる名とは、色々な木々が張り合わせて作られておりますれば、那須連山と同じ様に五峰からなる那須山との頃合も良く、むしろ愛されるのでないでしょうか」



「お主もよく即座にその様な名を思いつくものよ、大人になると頭が固くなり困ったもんよ、それにしても良き名であるな、どうであろう、その方弓之坊が新たに創り出した弓の名を『那須五峰弓』という名は」



「はっ、実に素晴らしき弓の名であり、若様のお知恵の凄さに感心し、声も出ませんでした」



「うむ、ではこの弓の名を『那須五峰弓』とし、那須家の新たな弓としようではないか」



「弓之坊よ、その弓は年にいかほど作れようか?」



「今ある手元の材料では10~15本であろうかと」



「それならば、那須家にも弓師がおるので、その者たちの材料も提供し作れば増えせるやも知れませぬ。どうでしょうか? 父上」



「そうであるな、もちろん材料は、材木を扱っている者達からも集めれば問題ないであろう、後は弓を作る者達を増やさねばならぬな」



「それであればこの弓師、弓之坊より那須家の弓師に創り方を伝授いたせばよろしいかと思います」



「さすれば、増やせるかと思います」



「そうよのう、合戦ともなれば当家の場合、射者がそれなりにおる、100以上は揃わないと拙いのう」



「父上、先の心配を今しても、仕方ありませぬ、準備出来次第増やしましょう、では天狗殿頼むぞ」



「はっ、鞍馬の名にかけて見事な弓を作りまする」



「弓の説明が先になり済まなった、他の者達を紹介してくれまいか」



「はっ、この若者は、某の息であり、近頃一人前になりました、小太郎です、武芸に長けております」 



「はっ、小太郎でございます、御屋形様、若様よろしくお願い申し上げ致します」



「うむ」



「次なる者は、飛風と申します、鞍馬一番の足の速い者になります」



「ほほう、一番早いとは、どんな感じなのであろうか」



「では飛風より説明致しまする」



「はっ、飛風と申します、五月の折りに若様が平家の里に来られた際に三日ほど要したとお聞きしております、帰りは二日の道のりとの事でしたが、某の足であれば、この城と平家の里を一日で往復出来まする、この位であれば難なく走れまする」



「それは誠か、その足はどうなっておるのか、馬より優れているではないか」



「我ら忍びの者は、皆様が歩かれる道ではなく、山をそのまま越えて移動します、最短の道を歩み、道なき道こそ我らの道でございます」



「この飛風は足早の者であり、今後若様と里にて談合すべき時にも役立つ者になりますので、選びました」



「次に控えております者は、戌いぬいと申します、鷹匠もしておりますれば犬を自在に操れる者になります、若様達が里に来られた際にいち早く、里以外の者が近づく事を知らせたのも、戌が操る犬が若様達を見つけ知らせたのであります、それと此度お預かりしておりました鷲のヒナ2羽も巣立ちし、訓練しているのも戌でございます」



「父上、私が里に行く道中で鷲のヒナ二匹が無事に育った様です、父上に一羽を指し上げ致しますので、父の鷹匠にて面倒見てはいかがでしょうか」



「それは面白い、鷹は数匹居るが鷲は初めてじゃ、楽しみじゃ遠慮なく頂こう」



「次なる者は、申さると申します、一通りなんでも器用にこなします、特に遠方を見る事と聴力が他の者より優れています、色々とお役に立つ者かと連れてきております、弓之坊は弓造りのお役目にてお傍に置けませぬが、小太郎、飛風、戌、申の四名は若様の配下としてお使い下さい」



「あい分かった、忠義を筆頭に私が行う政の為に皆の者よろしく頼む」



「ははーよろしくお願い申し上げます」



「それにしても鞍馬には素晴らしき人材がおるのう、この資胤感じ入ったぞ、しかし、聞いている内にワシの配下にもほしくなったぞ、こりゃ参ったな」



「父上、父上の元には那須家譜代の者達がおります、鞍馬の者を今、配下にしましたら、譜代の者がやっかみ、変な争いになります、幼子の私だから譜代の者達も大目に見るでしょう、そこで父上にこの際なので我儘をお聞き下さい」



「うむ、今更なんであるか、父上より頂いた村が1つありますが、あと2、3の村を頂けないでしょうか、先に頂いた、村で試しに新しき田植えにて収穫できる米の量が従来より増えている様だと村長から聞きました、明日確認しに行くのですが、その通りであれば、増えた石高で配下の者を増やし、又、新たな事を試し、父上を支えて行きとう御座います」



「あははは、私を支えるという言葉でお願いされたら、断わる事が出来ないでは無いか、そちはずるいのう、わはっははは、よろしい、今ある村と隣接している村をいくつか用意する故、自由に致せ」



「此度は皆の者、大義あった、今宵は宴じゃ、暫く休み、また後程にしよう」



「ははー、ありがたきお言葉感謝申し上げ致します」  


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