小田原北条家・・・2


 ── 後北条家 ──




史実において、小田原城を居城とし、戦国期関東の覇者として五代に渡って栄華を築き上げた大大名である、4代目氏政の代で秀吉が天下統一する前の石高は240万石にまで極めるが秀吉が北条討伐の軍を起こし僅か半年もかからずに滅亡となる。



初代伊勢宗瑞後の北条早雲が築きし初代となる、伊豆一国を治め、相模に進出し小田原に拠点を構える、日本の戦国期初期を代表する後の北条早雲である。



二代目北条氏綱、氏綱の代で伊勢性から北条姓に変え、後北条と呼ばれる事に、敵対勢力は北条と言う名を認めず、伊勢と言う名で卑下した名称で呼ぶ大名も多かった、氏綱の代で、武蔵、駿河、下総の一部まで領地を拡大し、関東の覇者に。



三代目北条氏康は大規模な検地を行い内政に力を入れる、体制を整え、天文151546年には氏康の名を天下にした河越夜戦に勝利し、山内・扇谷、両上杉氏を関東から排除し、その勢力範囲は上野群馬県にまで拡大した。



四代目北条氏政は氏康存命中の永禄31560年に家督を継承し、永禄41561年の上杉謙信、永禄121569年の武田信玄による小田原攻めを退け、氏直に家督を譲るも、北条氏の最高実力者として君臨、天正181590年の豊臣秀吉による小田原攻めの敗北で切腹となる。



五代目北条氏直は氏政存命中天正81580年に家督を継承する、秀吉による小田原合戦の敗北後、高野山追放、翌年に亡くなる、約90年にわたる戦国大名北条家は終焉する。



正太郎は配下の者達と小田原北条家に向かっていた。



「これは又どでかい城である、町ごと入った城ではないか、どれ程の兵がいるのか想像もつかない、こんなに立派な城を作るのにどれだけの銭と人が必要なのであろうか?」



「某十兵衛も驚きです、これだけの城を作るには何年にも渡って普請を行わなければなりませぬ、流石は早雲殿が築かれた城で御座います、烏山も決して小さい城では御座いませんが、人とはこの様な城を作れるのですね、本当に想像が尽きませぬ」



「この半兵衛船酔いから、この城を見ましたら覚めました、只々驚きとしか言えませぬ」



「若様いずれ某が城づくりを学び若様にこれ以上の城を御造り致します、今暫くの辛抱で御座います」



「まてまて忠義、儂は凄い城を見て驚いているが、烏山城で充分である、この様に大きい城では幾ら金が出たと言っても全部吸い取られてしまう、そんなの嫌じゃ、他に幾らでもやる事はあるのだ、それにしても本当にでかいのう、しかし、この様に大きい城があっても負ける時は負けるもんじゃ」



そうこう港で話していると城から、迎えがやって来た。



「某北条家家臣松田と言います、那須家嫡男正太郎様で御座いましょうか? お迎えに上がりました」


 

「私が那須家嫡男那須正太郎です、わざわざのお迎え忝けのう御座ります、松田殿と言われましたか、私はこの様に立派なお城を見るのは初めてで御座います、本当に驚きました、北条様が治めている領国には他にも大きい城が御座いますのでしょうか?」



「お褒め頂き恐縮です、この小田原の城より大きい城は御座りませんが、些か大きいかと思われる城はありまするが、早雲様より治めておりますここ小田原は特別に御座りまする、北条家にとってこの城は命そのもので御座います」



資料によれば小田原城は総構えの城下を囲むその距離は9キロという巨大な大きさであり、現在の小田原城址公園には当時の貴重資料を見学できる場となっており家族が一日中過ごせる公園なども整備されていると小田原市のHPに紹介されています。



夕刻に城に到着し、正太郎達が滞在する本丸近くの離れの建物一棟が宛てがわられた、その建物も身分ある者が来た際に寝泊まり出来る迎賓の立派な造りであった、部屋にて休憩していると早速案内の者が現れ、当主氏政がお会いしたいとの事で迎えが来た、忠義、十兵衛、半兵衛、鞍馬天狗を引き連れて当主の元へ向かう正太郎。



通された部屋には既に上座に北条氏政と重厚な面持ちの二人が両側に座っており、やや離れた所に一人の男性が腰を下ろしていた、下座に座り。



「那須家嫡男、正太郎で御座います、此度当主資胤に代わりまして、全権委任を受け北条様の元にまかり越しました、何卒宜しくお願い致します」



正面の氏政に向かって拝礼し挨拶を行い氏政より。



「遠き小田原にお越し頂き感謝致します、私が当主の氏政になります、こちらに降りますのは、私の父、先の当主氏康になります、そしてこちらは、曾祖父様のご兄弟であります幻庵様で御座います、そちらに控えているのが風魔小太郎になります」



1565年2月末の時点では、北条氏康は50才、北条幻庵は61才でまだ健在であった。



「申し遅れました、私の横に控えている者は、芦野忠義、某一番の重臣の者になります、こちらが明智十兵衛、竹中半兵衛、風魔殿とは面識のある鞍馬天狗になります」



鞍馬天狗という名に注目する三人であった。



「こちらが当主資胤より預かりし文となります、又、些か僅かばかりですが、こちらの品をお納め下さい」



当主からの文と目録を渡した正太郎、那須資胤からの文を氏康、幻庵に渡し確認する三人、氏政より、此度の大事なる件をお聞きしたく正太郎殿よりご説明をお願いしたい、と告げられた。



「では私よりお話を致します、少し長き話になりますので、足を崩して話させて下さい、皆様もその様にして下さい、ゆっくりとお話しまする」



「我が配下の鞍馬天狗より、風魔小太郎殿を介して、北条家の先の未来についてお聞きしているかと思われます、これより25年後に北条家は滅亡するとお聞きしているかと、これより先の話を聞く場合は我ら那須と共に歩む覚悟が出来ましたらと氏政様へお伝えしているかと思います、ここまでは間違いないでしょうか?」



「我らも覚悟が決まった故、父上と幻庵様にも同席頂いています、ご安心下さい」



「判りました、ありがとうございます、ではこれより話す事途方もない人知の及ばぬ話となります、今より約4年程前から私の身に何者かが、私の頭の中へ、私に話しかける者が、某に時々話かける者が現れたのです、まだ4才を過ぎた童の時です、子供ゆえ、どの様な話なのか最初は判りませんでした、しかし、同じ話を何度も何度も聞こえている内に5才になった時に意味が解ったのです」



「その者が私に伝えていた事は那須の家がこの後数十年で滅亡する、今の内にそれを防ぐべく対応を行う様にと、最初に起こる事は、昨年の5月に常陸佐竹が大軍で那須を攻めて来る、那須だけでは防げぬ、常陸の小田家と同盟を結び佐竹を撃退せよとの事でした」



「5才の時に父上資胤に相談し佐竹に備えておりました、昨年その者が言う通り本当に佐竹が那須に侵攻して来ましたが備えていた為に見事我ら那須と小田家は佐竹に勝ち領地まで得ました、その戦を終え、又その者から新しい話が伝わったのです」



「ここからが北条様のお家に取って大事なる話になります、新しい話とは今より25年後に北条家が滅亡する、それに伴い那須家小田家も運命を共にすると、ゆえに三家にて今から手を取りその歴史を変える様と」



すると幻庵より、那須の嫡子殿その者はどの様な者なのであろうか? わかればそのあたりも教えて頂きたい、との申し出が。



「これは失礼致しました、少し話を早く進めてしまいました、その者は今から460年先未来の者になります、名を洋一と申し、その者には女子おなごでありますが軍師玲子という方が付いております、その者から話が伝わります」



顔色を変える北条家一同・・・氏康がそれは途方ない話でありますな、私は今どうして良いのか頭が止まりました、寒気がしております、いやはや困りました・・・・



「はい、この話を最初に聞く者は全ての方が氏康様と同じく頭が止まります、折角止まったので口直しにお茶を頂きたいのですがよろしいでしょうか?」



「これは申し訳ない、直ぐに用意致します、少しお待ちを小太郎よ用意せよ!」



少ししてお茶が運ばれ正太郎が、ここに那須にて流行っている麦菓子を用意しております、お茶受けにあいますので是非お食べ下さい、忠義皆様に渡す様に指示をした。



「この菓子は菓子職人に作らせ戦時の兵糧丸に使いました、母上をはじめ皆競って食べまする」



「これは美味です、これなら皆が欲しがります、父上いかがですか?」



「儂と幻庵様が頷いて食べてる所をみれば判るであろう、お茶受けにこれは良い」



「実はその菓子も460年後の洋一から教えて頂いた菓子になります」



「だがこの話、どこまでその者の話が本当なのか簡単には理解が出来ぬ」



「その者からその様に聞かれた場合に、この様に答えろと言われました、氏康様のお体が些か病み始めている、あと5年程でこの病になるとの事です」



病名が書かれた文を渡し、そこに書かれた名の病になります、と教えられました、紙を見て天井を見つめる氏康であった。



「どうしたのじゃ氏康、その紙を見せてみろ」



幻庵が紙を取り上げ文を見ると、お主もこれより儂と同じ様に出家せよ、精進料理で生き延びよと、笑うのであった。



「忝い正太郎殿、しかし中風とは、父上は戦での怪我であれば我慢出来ようが流石に病ではつらいであろう、悪化しない今の内であればなんとかなるであろう」



「こちらに中風を予防する注意書きを用意しました、塩分を取らず薄味とする、大根炊きを日頃から食する、大根炊きは医者いらずと言う程体に良い食べ物である、酒も控えめにする事、豆類を食する事、水分を多く取る事」



「こちらの紙を、台所の賄いされるお方にお渡し下さい」



「父上この正太郎殿の話は本当の話であると判断します、父上、幻庵様はいかが感じますか?」



「この世には人知の及ばない出来事が多くあるのだ、それを理解しようとする事は大切なれど、大事な事は受け入れる事が先なのじゃ、受け入れてこそ、より理解が進むのじゃ、此度の話は正に受け入れねば先に行けぬ、理解は後から付いて来る今は正太郎殿の話をじっくり聞く事じゃぞ、氏康も中風などで死んではならん」



「正太郎殿話の続きを聞きたいがまだまだ続くであろうから、この続きは明日の昼餉後にゆっくりしようかと思うがいかがであろうか?」



「はいその様にお願いします、ここにいる者達は初めて船に乗り船酔いしまして、この二日間何も食べておりません、そろそろ限界かと思います、明日、ゆっくりとお願い致します」



「それは大変でありましたね、一緒に夕餉を頂きながら佐竹をうち破りしました話など教えて下され、では支度致しますので、少しお休み下さい」





幻庵がいましたね、怪僧と呼ばれたり、今川の雪斎みたいな存在かと。

次章「小田原北条家3になります。」


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