第12話 平家と鞍馬・・・4


 鞍馬の長より話を聞き終えた正太郎は。



「よくぞ話してくれた、きっとわが父上も鞍馬が話してくれた事に感謝するであろう、父上に代わり那須家当主 那須資胤 に代わり心より感謝いたす」



「勿体なきお言葉、こちらこそお伝えする事無く今日まで及んだ事をお詫び申し上げ致します」



「それにしても祖の与一様は誠の武人であり、人とは、武人とはこうであらねばならぬと人としての矜持をこの場で学ばさせて頂いた、里に来て、心より来て良かったと思うぞ」



「だが鞍馬殿よ、今ここにその方達鞍馬の子孫がこの里にいるという事は、今の帝には鞍馬はいないのか、どうなっておるのだ」



「はっ、我らの先祖はここに残りましたが、安徳天皇様をお守りしていた鞍馬達が、生き残った者達がその後の帝様をお守りしております、ですので鞍馬という志能便は二つに分かれておりまする」



「当初は行き来があったと聞いておりますが、ここにいる我らには帝をお守りする役目が無くなり今は行き会う事も全くありませぬ」



「成程、ここにいる鞍馬の者達とは里を守る者という理解で良いのだな」



「はっ、その通りになります」




「では先ずは出来る事から私に力を貸してほしい、まだ幼い故に、父からは村を1つ頂きそこから上がる私の石高は所詮150俵程であり、その程度の糧では数人しか臣下として雇えぬ、身分は侍として保証する、先ずは数人で良いので私に臣従できる鞍馬の者をお願いしたい、一人は若い女子をお願いしたい、此度一緒に来ている侍女の百合と同じく侍女として私の側に置きたいのじゃ」



「どうであろうか?」



「はっ、今後は正太郎様と連絡を密にする為にもその様に致します」



「あと、この里とは違う場所に鞍馬の後継の者達を育てる村というか里みたいな所があるかと思うがいかかであるか」



「御明察の通りでございます、ここより更に山奥にございます、ここはあくまで平家の民達の暮らす里であり、我ら鞍馬の者は別の所になります」



「では、その隠れた鞍馬の里で育てて欲しい物があるのじゃ、那須家を強くするには武具は勿論の事、金銭的に窮屈では結局口だけになってしまう、そこでこの紙に書いてある物を試しに育てて欲しいのじゃ、つたない字で書いているので、判る様にこんな感じで作れるという事を絵で書いてある」



 懐から1枚の紙を広げ三人で見つめる中、忠義が。



「これはなんですか、クヌギ、ナラの木を大人の脚の太さ位の木を長さ半間の木を沢山作ると書いてあるようですが、それとこれは穴をあけるとか書かれております。」



「ふふふふ・・・じつはな、なんでもこの通り作るとなんと、椎茸という物が出来るそうなのじゃ、なんでもキノコの仲間の様なのじゃ」



 すると急にびっくりする女将が。



「えっー山の木に生えている大変珍しいあの椎茸ですか」



「そうみたいなのじゃ、わしは椎茸なるものはまだ見た事がないのじゃが」



 鞍馬も驚き。



「若様これをどうやって御知りになったのですか」



「それよそれ、先程私が話した460年先の時代に生きている洋一という若者が、こうやれば椎茸が出来るという事を教えてくれたのである」



 そうです、洋一が正太郎に平家の里で、次の一手である軍資金を得るために椎茸を栽培させる事を正太郎に判る様に、洋一が絵を書いて、ひらがなで説明文を書き、頭の中でその絵を正太郎に伝えたのである。



 忠義が椎茸とは?



「某、その様なキノコの仲間を食べた事も無いのでわかりませぬが、お金になるものなのですか?」



 と声を上げると、横から鞍馬が。



「大変貴重な物で帝ですら滅多に食することの出来ない大変高価なものであると、もしこれが本当なれば、とんでもない事になります」



「栽培に成功すれば、量にもよりますが、数千石に匹敵するほどの金になるかと思います」



 えっー、一体なんの話をしているのか、数千石という単位で正太郎まで、驚き。



「そんな訳ないだろう」



 と言うが。



「若様はまだお若いので世間の物の値段はよく判らぬと思いますが、食する物の中で椎茸が一番高価な物であり、それが数百個も集まれば、莫大な金銭となり実に恐ろしい事を我らに行えと言っております所です」



「えっ、そうなの、椎茸ってそんなに凄い物なの、洋一から伝わった風景では自宅で栽培しており、家族の者がよく食べている様だったぞ」



「それは恐ろしき方ですね、帝ですら中々食されない椎茸を家族で食べているとは、その460年後という時代は我らとは別の世界なのですね」




「先ずは鞍馬よ、この作り方は秘事中の秘事であるので、その方の里でキノコに詳しい者に作らせてみてくれ、その紙には難しい事は書いておらぬ、最初だけ椎茸を山の中でなんとか探して、それを用いるように書いてあるのでそのようにやってほしい」



「はっ、わかりました」



「それなりの量が取れた時に皆で食べ様ではないか、なんでも囲炉裏で炙って塩を少しまぶしてそのまま食べると美味しくてたまらないそうだ、わしはまだ椎茸なる物を見た事も無いので想像出来ないのだが、とんでもなく美味だそうだ、あと、なんでも年に二回収穫が出来るような事もそんな感じが伝わっていた」



 えー、っと更に驚く一同で会った。



「それと、そこにある蒙古が使用していた弓なのじゃが、どう思うか、蒙古襲来時の弓じゃ」



「お武家様が使用している弓に比べれば相当小さい長さの弓で御座いますね、大きさは我らが狩りで使用する弓の大きさに近いですが、形が全然違います、この弓が若様に必要になるとの話なのですね」



「そうなのじゃ、わしが五才のお祝いに頂いた弓と同じような大きさなのじゃが、頂いたのは童用の遊びの弓じゃ、そんな弓が戦で役立つ訳もなく、しかし蒙古の兵はその弓を使って日ノ本へ攻め入ったのじゃ、一体その弓がどう役立つか、それにその、弓弦は百年以上手入れをしていないから張る事も出来ず、父上も、この弓は役に立たぬだろうとおっしゃっていたのだが、念の為持ってきたのじゃ、鞍馬の者で弓に詳しい物がおれば使える様に再現し、本当の事を知りたいのじゃ」



「鞍馬には色々な技を持った者達がおります、もちろん弓を作る弓師がおり、鍛冶師、薬師等一通りおります、若様のおっしゃる通り配下の者に諮って実際の所どうなのか試してみまする」



「では又明日にでも続きの話をしを詰めよう、わしは五才の幼児故長時間これ以上むずかしい話はもう無理じゃ、少し眠りたい、すまないが床を用意してくれ、くたくたなのだ」

(忠義他女将も鞍馬も同じ様に途方もない話にくたくたであったのだ) 


 終わってくれて助かったという事であった。



 感想、プレビューよろしくお願いします。

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