軍師玲子の包囲網

  

12月に入り玲子は頭を痛めていた、後半年ほどで佐竹連合が那須と小田を殲滅すべく襲ってくる事に中々良い案が浮かばなかった、前回の佐竹とは規模が違い過ぎ頭を痛めていた。



二人が住む羽生市で借りている戸建ては3部屋あるのが、二部屋は軍師玲子の部屋となっており、一部屋は大きいジオラマセット、烏山城を中心のジオラマと小田の土浦城中心のジオラマである、ジオラマは立体的に作成されており両方とも専用の作業台の上に置かれていた、作業台とジオラマの制作に洋一は下僕の様に働かされていた。



玲子は料理教室に通うも腕が中々上達しなかった、それは玲子の性格に問題があった、長年オタクをしていると他人の意見より自分の方が正しいという、自分ならここはこうする、この料理にはこっちの調味料がいいのではと、先生が示すレシピから違うレシピに発展し、教室では先生の指示通りに作り、家に帰って作る料理はオリジナルレシピとなりその犠牲者は洋一であった。



そんな地獄の日々をギリギリ耐えていた洋一に、玲子の父から洋食店の新作メニューが出来たから二人で試食に来いと呼ばれたのである、試食を大喜びで食べる洋一の姿を見て、母親が洋一の異変を感じたていた、玲子を料理教室に通わせているのに、料理は改善されているのに洋一さんの様子が・・・特別驚く程の新作メニューではない、普通のランチメニューだ、それなのにこの喜び様は・・・玲子は気が強い娘・・・



試食が終わり、母親が玲子にどう料理教室楽しい? と聞くも反応がイマイチであった、玲子曰く、先生の料理は美味しいけど、もう一工夫しても良いのにさせてくれない、教えた通りに覚える様にって言われて困っている、と説明する玲子。



「そうなのね、じゃー今夜私達が玲子の作った料理を晩御飯にするから帰る前に三人前作ってから帰って、お店にあるもの自由に使っていいから玲子の作る料理楽しみだわ、玲子の考えた料理でいいわよ」



「えっ、いいの? じゃー帰る前に作るね、私達も家で食べるから5人前作るね」



玲子は料理を楽しく作りそれぞれ分けて、自分達は帰宅したのだ。



洋食屋に玲子が作った晩御飯のおかずが皿に盛られラップがされている、興味津々の玲子の両親、玲子の弟に今日はお店で晩御飯だからと言って店の方に来させ、腹を空かせた弟が、お~親父、姉ちゃんが来てこれ作ったの? 美味そうじゃん、俺腹ペコペコだよ、と嬉しそうにラップで包まれた皿の前に座る弟。



ちょっとまってて今スープ温めているから、ご飯を息子に出す母、もう先に食べるよと言って食べ始める弟、いただきま~す・・・オッエ、オッエ・・ウッウッ…なにこれ、父と母にダメダメ食べちゃダメ・・・恐ろしく不味い、ダメだこれは。



他におかずなんか無い、お姉ちゃんの作ったおかずは食べれないと叫ぶ弟! えっ、どれどれ、二人で恐る恐る一口食べる・・・・直ぐにティシュに戻す両親・・・・



「やっぱりそうだと思った・・・玲子の奴教えてもらっている料理を台無しにしている、しょっぱ過ぎ、塩の量も全然ダメ、なぜ唐辛子が入っているのか、うっ、お酢も入っているぞ、砂糖も入っている、油はオリーブオイルだな・・・シナモン?・・も入っているぞ、あとこれはなんだ? この小さい粒・・うっ、たくあんだ、微塵切りで入っているぞ、カニカマも入ってる・・・・これは料理なのか? 」




弟が勝手に冷蔵庫からローストビーフをおかずに食べている横から。




「きっと姉ちゃん先生のいう事聞かないで勝手に味付けしているんだよ、今頃洋一さん死んでいると思うよ、可哀想に、料理教室で習っても勝手に味付けしちゃうんだよ、姉ちゃん、たくわん好きだからそれも入れたんだよ」



砂糖は甘党だからと適切な説明をする弟であった。



急ぎ玲子達のいる家に向かう両親、親が洋食屋を営んでいるのにその娘が作る料理で離婚になったら恥ずかしくて店を続けられない、洋一君に申し訳ない、痩せて来た洋一の理由が判ったと怒る両親であった。



家に到着し、急ぎ確認すると、テーブルの上にはまだ料理に手が付けられていなかった。



両親が怒りながら玲子を座らせ、料理について懇々と言い聞かせていた、このままだと洋一さんに愛想を尽かされる、料理教室では習った通りに作りなさい、一通り出来る様になってから工夫をするなら問題ない、ちゃんと覚えなさいと叱る両親であった。



納得出来ない玲子の横で、泣いている洋一(玲子が作る料理が怖くて、お弁当に残ったおかずが入っていると思うと蓋が開けられない蓋を開けると、きゅっと心臓が締まる洋一であった)



玲子の母が、洋一に玲子が相変わらず先生の言う事を聞かないで料理を作る様だったらうちに食べに来てと言う母親、渋々分かったと話す玲子、洋一にちゃんと味が変な時は言ってね!

(玲子が作る時は毎回変なので言う意味が無いと悟っていた洋一)



私も反省するからと玲子が話し、洋一が、はい、と答え、眉をピクピクさせる玲子。



この日より料理はかなり改善され、洋一にも元気が戻った様に見えたがその逆に玲子はオリジナル創作料理が出来ない事に鬱憤を溜めていた、この料理事件により、玲子は、父親、母親、弟、そして洋一と知らない内に玲子に包囲網が敷かれたのである。




これぞ『軍師玲子の包囲網』の完成である。




夕食後に、佐竹連合軍の包囲網が完成する前に、私が包囲されている事に腹を立て、ジオラマ制作で洋一が犠牲となり、下僕の如く指示通りに作らされ、日々模型作りに追われていた、その横でクッキーを食べながら戦略を練る玲子。



やはり小田は籠城だと危険だ、史実でも9回も落城している、戦国最弱大名という名は伊達じゃない、城の周りは堀で廻らされているけど平城という攻めやすい城だ、籠城は出来るだけ回避し、単独で佐竹と結城に戦ってなんとか時間を稼がないと、那須の援軍が最後は必要だけど最低一週間は単独で耐えてもらわないと、援軍が到着する前に落城すると今度は、那須だけで、全ての敵と戦う事になってしまう。



小田家の場合はこの場所で佐竹結城連合軍を迎え撃つ事にして、数日間かけて城に後退で敵兵の力を削るしかないわね、その間に那須の別動隊が小田城に駆けつけ、援軍到着で挟撃が最善かな?



那須は白河結城家に芦野伊王野隊でなんとかしている内に秘密兵器の正太郎騎馬隊で止めを刺して、小田の援軍に向かう。



宇都宮小山軍には那須本軍が野戦で対処するしかない、迎え撃つ場所は高根沢かな、烏山までの道程も平坦で山間の隘路も無いから、この場所で野戦一本だね。



後は戦うだけでは意味が無いから両家に取ってここをこうすれば大きくなれるね、敵が連合でもその分大きい見返りがあるから、チャンスだね、小田が味方だから楽に戦えるねぇー、北条も両家が大きくなる分得するし、万々歳だね、後はもう少し色付けすれば絵図が描けるかな、取りあえず大きい流れを洋一さんから伝えてもらって、ジオラマのミニチュア兵士を沢山作らせよう、本当は戦車の1台でもあればそれで終わりなんだけど、将来はこのジオラマはどこかの博物館に軍師玲子の戦略資料として寄付とか・・・100年後には私の資料館が出来る予定かな! 妄想を広げる玲子、オタクとは妄想が得意である。




その夜に洋一から正太郎に概略が伝わった、正太郎からも『てつはう』について、新しい武器が完成したと伝えられた。




── 正太郎 ──




烏山城で当主資胤、大関、芦野、と正太郎、忠義、義隆、福原、一豊、十兵衛、半兵衛による密かな軍議が開かれていた。



正太郎からの説明が一通り終わり大関が。



「予想通り連合で戦となりますか、佐竹がこのまま動かない訳がありせぬ、そんな気がしておりました、しかし、馬鹿ですな、結城白河家は折角銭を払って棚倉を取り戻したのに、その恩義を忘れ佐竹に付いて那須を攻めて来るとは、我らの力を知らぬから馬鹿な事をするのですな」



「私忠義も此度は父の領地である芦野の隣、結城白河を、懲らしめねばなりませぬ、恩を仇で返すなど、許せませぬ、某は父上と共に一隊を率いて参ります」



「では父上、この話を小田様に伝えねばなりませぬので、此度は私が行って参ります、帰りに大津に寄り船が完成したと伝がありましたので大津浜に寄って帰ります」



「わかった、まだ戦は半年後である、充分に期間があるゆえ、しっかり弓矢を揃えて於こう、正式な評定は年明けに致す故しっかり頼む」



軍議を終え館に戻り、正太郎は忠義に実家に一旦帰り芦野の父上と詳細に打ち合わせする様に、その際に忠義が率いる部隊は騎馬隊120名である事、最初から芦野伊王野軍に入って参戦する様にと伝えた。



「小田家には、一豊騎馬隊と福原、半兵衛、小太郎と申、乾の三名と梅と梅付きの侍女見習い2名も随行せよ、確か松と鶴であったな、椎茸など、そうだ新しい芋とモロコシの種じゃ、あれも持って行こう、ふむふむ、楽しくなって来た、十兵衛と義隆は留守番じゃ、折角じゃ和田殿も暇そうだし連れて行こう、よし氏治様に文を書くので先触を出してくれ」




こうして12月中頃に土浦に向けて出発した正太郎一行、小田彦太郎に久しぶりに会える事に楽しみな正太郎であった。






軍師玲子さんが包囲されてしまうとは、洋一は下僕・・・なのか。

次章「再会」になります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る