再会


正太郎一行が12月中旬に常陸小田城に訪れた、城の広間にて。



「小田氏治様お久りぶりで御座います、お会い出来まして恐悦至極です、彦太郎殿にもお会いしたく楽しみにしておりました、こちらが父資胤より氏治様にお渡しする様渡されました文になります」



「よくおいで下さいました、正太郎殿、身体も一回り大きく成られましたな、健康そうで何よりです、資胤様もお元気で御座いますか?」




「はい、父も小田様にお会いしたく残念がっておりました、京での出来事を語る時は小田様の話を自慢して話しております、余程小田様の事が懐かしく嬉しかったので御座いましょう、お酒を飲むと何度も楽しそうに同じ話を致しまする」




「あははは、それはそれは、私も同じですよ、一緒に首を斬られる所で御座いましたので、あの時の事は生涯忘れませぬ、それに正太郎殿のあの文で、あの文にて心からスッキリ安堵致しました、しかし、まさか将軍が殺されてしまうとは、感慨深い物があります・・・・彦太郎も正太郎殿にお会いしたくうずうずしておりました、いろいろと話がある様でどうかお相手をお願い致します」




「ありがとうございます、小田家の皆様も騎馬での戦い方に慣れたと調練している者より素晴らしい騎馬隊が出来たと、一緒に調練出来た事に感謝しておりました、それと新しい矢と最近完成しました武器もお持ちしましたので後日試して頂ければと思います、数はまだありませぬがそのうち整います」




「なにかとお世話になり申し訳ありません、小田の騎馬隊も見違える様になりました、流石那須の教官ですこれにて戦い方も色々と思案出来ましょう、では今宵は皆様と再会の喜びと歓待の夕餉も用意しております、戦の話は明日に致しましょう」



その日の夕餉は流石海の領地が近くにある小田家である、那須では干物が中心であるが、取れたての海の幸に堪能した。



「これが海老なのですね、川にいる海老とは大きさが全然違います、まだ動いておりますぞ、お~お~」



「正太郎殿この海老はそのまま焼いても美味しく味噌汁にすればなんとも言えぬ汁になります、今は生の切ったばかりの海老なのでこのたまり醤油に付けて食べてみて下され、彦太郎も大好きな海老です」



「梅先に食べてみよ、食べた感想を言って見よ」



「ではご命令とあれば先に頂きます・・・・・うっ・・・・パクパク・・・ダメです一口では話せません、もう一口必要なので・・・うっ・・・パクパク・・・・」



「わかったもう聞かん、よし儂も食べてみる・・・お~プニプニしているぞ・・おっ…甘い・・・食べ応えがある海老です、これは絶品ですね、皆の者も折角用意して頂いたのだ遠慮せず食するのだ」



海の幸を堪能し、いつの間にか男衆は酒飲みとなり、正太郎と彦太郎達は彦太郎の母上と侍女達に別れ、正太郎がとっておきの大学芋を重箱から出した。



「この芋菓子を食されて下され、新しい芋の芋菓子です、菓子料理人が作りまして、那須では母上はじめ侍女達が取り合って食べまする、ささどうぞ召し上がって下され」



彦太郎の母上が最初に食べ・・又食べ・・又食べる・・それを見ていた彦太郎が、母上と呼びかけた。



「笑いながら、正太郎殿から頂いたこの芋菓子は、これは危険である、手が止まらなず話せなくなる、皆も食べてみよ、彦太郎も食して見よ」



「沢山芋を持って来ており、梅が作れますので明日にでもお教え致します、簡単に作れまする」



「彦太郎殿この新しい芋は簡単に増やせるので春になりましたら蔓分け致しますのでどなたか村長を寄こして下され、他にもモロコシという美味しい農作物もあります、来年は小田様の領内でも新しい田植えを行いますのでそうなれば佐竹から得た領地の領民も安心するでしょう」



「正太郎殿いつも御指南ご配慮ありがとうございます、私も父より村を幾つか頂き館を作り始めました、職人達を集めている所です、正太郎殿が自分の村を持ち政を行いそこに職人を集める事でそれぞれの技術も向上する利点に気づき行う事にしました」



「それは良い事です、今大津浜にて明船を模倣した帆船が出来たと伝が来ており小田様との話が終われば見に行く事になっております、宜しければ一緒に行きませぬか、小田様の所では那須より船について詳しいお方が沢山おります、宜しければお連れになって見て頂き助言を得られれば助かります」



「さすが正太郎殿です、明の帆船ですか、船足が速い船と聞いております、帆も和船とは違うかと、小田にはあそこで父上達と赤ら顔で酩酊している菅谷の家が水軍を率いております、菅谷なれば船の事に詳しいでしょう、明日にでも聞いてみます、今は酔っておりますので手が付けられません」



「本当です、那須の男衆も酒を飲み段々と羽目を外し、翌日はもう酒は飲まんと言いながらその夜に飲みます、大人になるとあ~なるのでしょうか? 時々父上がお前も少し飲めと言うので舐めますが、ちっとも良さが判りません、甘酒の方が余程美味しく頂けます」



「殿方達はどれも同じです、殿様であれ足軽であれ、夜になれば、今日も無事で過ごせたと安堵するのです、農民も同じです、きっと大昔からそうなのでしょう、この様に楽しい酒なれば自由にさせておくのが良いのです、悲しい時に飲む酒なれば、側にいて見守れば良いのです、ただ酒を飲み危険な者もおります、普段は大人しく穏やかな者が酒を飲むと目が座り暴力的になる者がいます、この手の酒飲みだけは注意が必要です」



「ありがとうございます母上、いずれ大人になれば正太郎殿も私もきっと酒を飲むのでしょう、いつまでも楽しい酒でありたいと思います、ほれ真壁が調子に乗って鬼の真似を始めました、世間から鬼の真壁と言われており、本人もその気になっているので、最近は酔うと鬼の真似を始めるのです、ほらほら今度は赤松が鬼退治をするという流れで二人でじゃれあい、最後は馬鹿みたいに酒の飲み比べを行いますので見ていると面白いですよ」



「それは楽しい御仁ですな、某の者達にもその様になる者達がいるのか知りません、酒を飲み始めると某はいつも母上の所に避難致しますので、今度最後まで付き合って見ます、面白い物が見えるかも知れませぬ、あっははは」



夜遅くまで小田城で歓待を受けた正太郎達、翌日昼餉の後に小田家重臣と正太郎達による軍議が開かれた。



「では小田様、重臣の皆様これよりご説明致します、この半兵衛よりお話致します、この半兵衛は美濃国の主城稲葉山城を僅か10名程で乗っ取った者です、今孔明と呼ばれております、軍略の才この者の右に出る者おらず、又この者の軍略の先を行く者あらずの者になります、では半兵衛説明せよ」



「はっ、竹中半兵衛と申しますよろしくお願い申します、今若様が言われた事は間違いとなります、私の右に出る者は若様であり、私より先に軍略を描かれる方は若様になります、ではご説明致します」



「こちらの図を見て下さい、此度は予想通り佐竹と結城が連合して小田様を攻めて来ます、それと同時に那須にも結城白河、宇都宮、小山が連合して攻めて来ます、よって小田、那須にて別々に対処しなければ成りませぬ、そこで先ず小田様へ佐竹、結城の両者が此度、小田様の領地隣の結城と合流して攻めて来ます、その合流地点はここになります、ここに両家の軍が集結します、よって戦う戦場は先ずここでの戦いとなります」




「某真壁よりお聞きしたい、敵の佐竹と結城の兵は如何程と見ておりましょうか?」



「佐竹と結城の兵数は8000~8500と見ております、佐竹は投入出来る兵全てを出して来るでしょう、先の戦いで取られた領地は勿論、小田様の領地全てを取る気でおります、小田様の御家が籠城戦を得意とされておりますが、敵兵の数と城の大きさを考えれば、事前に敵兵を削り士気を挫いてから籠城の方が良いかと思います」



「そこで先程の佐竹と結城が合流地点に布陣を敷き合戦の場とします、被害を与えながら徐々に城に戻り籠城致します、撤退の為の籠城では無く敵を集め攻撃する為の籠城となります、佐竹側にしてみたら、撤退する様にしか見えませんので無理攻めを行って来ると思われます」



「佐竹と結城が調子に乗って城門に兵が集まり押寄せます、敵兵が城門に集まりましたら、これを使いまする、この使い方はこの後お見せ致します、それとこの戦いでは騎馬隊半数の皆様には籠城戦になってからご活躍して頂きます、半数は最初から参戦して頂き、野戦で敵兵を削って頂ければと思います、残りの半数は城に待機ではなく別の場所にて籠城戦が始まるまで見つからない様にお願いします」



具体的な戦い方を説明する半兵衛の話で合戦の模様を頭で描きながら理解していく小田の重臣達であった、最後話を聞き終え、此度の戦いで小田様は勝ち、佐竹側の残り約13万石と結城の10万石を得て頂く事になりますと話を結んだ。



「この菅谷、戦の模様は描く事が出来ましたが、最後の23万石を小田で得ると言われ頭の中が空っぽになりました、昨年一年半前に佐竹から10万石を取りましたのに今また、今度は23万石とは恐れ入りました」



「この赤松も同じです、そんなに得て良いのでしょうか?」



「皆さま遠慮をなさっては行けませぬ、我らから攻めているのではありませぬ、領地を取って下さいと言って攻めて来るのです、こちらは仕方がないから頂くだけです、我ら那須も色々と頂く予定になっております、これはもう共に頂くしかないのです」



「敵は領地を取って下さいと言って攻めて来るのですね、それでは取らねば武士としての面目が立ちませぬ、面目を保つ為にこの際取るしかありませぬな~御屋形様」



「そうよなあ~領地を領地を取って上げねば、敵に申し訳ない、仕方ないゆえ、取るしか無いのう」




 大笑いする一同で会った。





敵は領地を取って下さいと言って攻めて来る、逆手に取った論法ですね、どうぞどうぞって攻めて来るのか、やはり取るしかないのか(笑)。

次章「海軍士官学校」になります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る