第39話 めんどくさい
感情で生きる、それが女性です、理屈は通りません。
「洋一、はっきり言うけど、このままだと結婚出来る確率は50%以下だね、時間が経てば経つほど確率は下がると思うよ」
「やっぱり理解出来ない様だね、いい洋一、その玲子さんとは、どこかへ行って食事した? どこかに遊びに行った? 一緒に買い物した? 映画館とか行った? 記念日にプレゼントした? した? した? した?・・・・・・・」
「先輩の言う事は何もしていません・・・・」
「そうだよね、結婚出来なかった場合、洋一の責任だよ、女はねぇー、恋をしてから結婚をしたいんだよ、わかるか?」
・・・・全然解らない洋一である・・・・
「しょうがないねー、女性について、女について説明するよ、男と全く違うの、男は楽観的に物事を自分に都合よく考えるけど、女性は違うの、男と同じと思ってはダメなの」
「結婚までに至る、恋をして、顔を赤らめる恋愛をしたいの、それまでのストーリーが必要なの、結婚に至るまでの、自分を納得させる感情が必要なの」
「洋一が告白して、勢いで玲子さんが、受け入れたという単なる流れだよ今は」
「時間が経てば冷静になって、恋愛をしていないのに、どうして結婚しなければならないのか、冷静に考えれば、普通の女性なら、洋一に相当な魅力でもない限り、自然に離れていくよ」
(桜先輩の説明を聞けば聞くほど、女性とは、男に取って、解らない、不思議で、実にめんどくさい、という心の声が・・)
「洋一、まだ全然理解出来てない様だね、いいこれからいう事をやってごらん」
「はい」
「先ず、一緒に美味しいと評判のお店に玲子さんを誘う、割り勘なんかしたらダメ、即終わるよ、彼女へ何かプレゼントをする事、特に誕生日とか、クリスマスとかの記念日は大切だよ、彼女が行きたい所に行く事、もちろん家まで送迎をするんだよ、恋愛系の映画鑑賞もいいね、公園を一緒に行くだけでもいいよ」
「あ~あと、楽しい話を心がける事、一緒に笑いたいの、いろんな意味で女性は誘われたいの、自分を大切に思ってくれているという感情に支配されたいの、感情で心が動くのが女性なの」
「デートは最低月2回必要だよ、一時間しか会えなくても、会ったという事実が大切、洋一から何度も誘うんだよ、これが出来たらなんとか結婚まで行けるかな~、あとは洋一次第だな」
(うわー、とんでもねぇー試練が来た━━━、那須家の勝利より、難易度が高い、女と結婚するのって、めんどくせぇーって・・・・とは、決して言えない洋一)
「桜先輩、ご教授ありがとうございました」
弓道場を後に、帰宅し、玲子にメール送信した洋一、玲子さん、今度の日曜日に食事にでも行きませんか? さいたま市に美味しいスイーツ店を教えてもらったのでどうでしょうか? と送信した、桜先輩より、評判のスイーツ店を教えてもらっていたのだ。
あの野郎と思っても、告白された時の事を考えては、顔を赤くする玲子、情緒不安定の玲子、そんな時に洋一からの食事の誘い・・うむ、やっと私を食事に誘うと言う事に気づいたのか、洋一め、とニヤニヤする玲子、甘くて美味しいスイーツ、と言われてOKの一択しか無かった。
桜先輩の忠告を素直に聞くも、実にめんどくさい、という思いの洋一、ネットでいろいろ確認するも、やはり女性はめんどくさい、という事が沢山書かれていた。
彼女が今まで一度もいなかった洋一、玲子の存在は嬉しいが、先輩の忠告を聞き、世の男性はこれを克服して結婚に辿り着いたのかと思うと、結婚した男性は頑張っただな~と思った。
何気なく父に、お母さんと結婚して、幸せなのか聞いてみた、父からの話では、女は、男を尻に轢いて一人前、男は奥さんの尻に轢かれて一人前という、とんでもない説明を受けた、洋一、言っておくが、玲子さんに逆らうなという、と、恐ろしい話を述べた父である。
洋一の未体験ゾーンが目の前に、厄介なゾーンとなりそうな予感が走る洋一。
約束の日曜日、朝八時に川越の自宅を出て、群馬県明和町の玲子家にお迎えに急ぎさいたま市に向かう、圏央道~東北自動車道と片道65キロ、自宅から1時間20分、そこからさいたま市へ55キロ、1時間10分、車中では、なにやらテンションの高い玲子。
初めての食事の誘い、それもスイーツという、洋一も中々やるじゃんという評価もありテンションが高い玲子、会話は両親たちの愚痴と戦国の話を話す話す話し続ける玲子、首を上下に振りまくる洋一、うんうん、えー、うんうん、すごいね、うんうん、と、聞きながら、右から左へ聞き流す技を習得した洋一。
昼前に到着、スイーツ店は昼食もコラボでセットされており女性をターゲットにこれでもかという、ケーキ~フルーツサンドまで甘い香り漂う危険なお店が多いのである、正直洋一には全く関係ないお店である。
洋一は既にヘトヘト、玲子はテンションMax、玲子の目はこれ以上ない笑みと目がキラキラと輝いている、洋一はメニューを見ても甘い物に支配されたメニュー表に、疲労回復系のドリンクは無いものかと探したが、ある訳が無かった。
「私はこれに決めたわ、洋一さんはどうする?」
「ごめん、こういうお店来た事なくて、玲子さんに決めてもらってもいい?」
「しょうがないわねぇー、じゃー洋一さんはこれね」
「洋一さん、突然の誘いだったから嬉しいけど驚いたよ~、今日はどうしたの~」
「いや~玲子さんと、ちゃんとしたお店にも行った事ないから、それに突然両親達の勘違いとは言え、玲子さんに申し訳ないな~と思って」
(事前に桜先輩より話す会話レクチャーを受けていた洋一)
「そうなのね、そうだったのか~と一人納得する玲子」
そこへ洋一が良かったら食事の後に玲子さんの行きたい所に行こうと言う洋一。
「えっ、いいの?」
「前々から行って見たかった所があるのよ、是非そこへ連れて行って」
うん分った、そこへテーブルに運ばれるスイーツの山盛りランチ、地獄のランチが始まった。
運ばれたプレート上には、生ハムのサラダ、フルーツ、チョコレートケーキ、モンブランケーキ、プチシュー、ローストビーフのサンド的な物、クリームたっぷりのフルーツサンド、小さいケーキ2個、ポタ―シュ、ドリンクフリー・・・これは・・・死ぬかもと思う洋一。
玲子のプレートはもう一回り大きい、恐ろしい何かであった、写メを撮り歓声を上げる玲子。
「さあー食べましょう、頂きます~」
最初にモンブランにパクついた玲子、食べながら。
「玲子が残してもテイクアウト大丈夫って書いてあるから、安心だね」
ちっとも安心出来ない洋一、昼食に生クリームに満たされた、クリーム地獄、食べても減らないプレート、玲子は恐ろしい勢いでクリームを口の中に収納して行く。
(ちょっ、ちょっ、玲子さんって大食い女子だったのか? 横のテーブルで食べている女性達もパクパクしてる、ここは大食い専門店か(笑))
洋一は生ハムのサラダ、ローストビーフのサンド的な物、ポタージュ、チョコレートケーキ1つで、クリームの山を見るだけで、限界なのだ、甘い匂いだけでお腹いっぱいであった。
玲子を見れば、恐ろしい勢いで、プレートのクリームの山盛りが、みるみる減って行く。
「玲子さんこちらもよろしければどうぞ!」
「えっいいの、洋一さんあまり食べてないけど大丈夫? じゃー遠慮なく頂きますと一言」
「私の職場って、町民と接する部門なので、感情を出さない様に、頭を下げて応接するのでストレスが溜まるのよ、ストレスを発散するのに甘い物が一番なの、今日は最高だわ」
「玲子さんに喜んで頂ければ来て良かったです」
「本当、嬉しい、これからはスイーツ店巡りってのもありだね!」
(いやいや無理無理と訴える泣きそうな洋一の目)
やっとの事で食事を終えて、玲子の行きたい場所に行くのだが・・・
「玲子さん、行きたい場所って、どこですか?」
「えーと、ナビに はなやしき って検索すると出るから、台東区にあるから」
「はい、じゃー入力して向かいますね」
(花やしきか~、花の屋敷だから、花を観賞できる施設かな?)
花屋敷とは、日本最古の遊園地である、1853年に開園、開園当初は花を観賞できる施設としてオープン、それが動物や見世物などが増えていき、現在では遊園地として、都内の住宅街にある、ここは遊園地としてオタクの聖地となっている『浅草花やしき』として有名な施設。
遊園地としては敷地面積がとても小さく、その中にアトラクションがこれでもかって位に満載な遊園地、子どもが迷子になっても5分歩いていれば迷子の子供に会えるという、実に安心出来るレジャー施設。
隣のアパートに飛び込む勢いでジェットコースターが飛び回り、お化け屋敷、びっくりハウス、メリーゴーランド等々満載の施設です、是非一見の価値ありです。
ナビの指示に従い到着した洋一、そこには、唸りを上げて勢いよく大きな乗り物が、乗っている人達は悲鳴をあげて笑っている・・・なんでここにジェットコースターが・・・・横では玲子も笑っていた、乗り放題のフリーパス券2枚を買って、玲子の後について行く。
「ここはね、アトラクションからアトラクションまで数十秒で行けるのよ、全部乗ろうね」
笑顔の玲子。
(死ぬかも知れないと悟る洋一)
「やっぱり最初はこれだね」
ジェットコースターである、隣のアパート目掛けて走り出す、手を伸ばせば届くかもという位に近い、絶叫をあげながら、一方は楽しい絶叫、もう一方は悲鳴と絶叫の洋一である。
「次はこれね」
リトルスターというくるくる回る恐ろしい乗り物。
「次はこれこれ」
スカイシップ空飛ぶ海賊船。
「次はこれね」
お化け屋敷・・・おえおえ。
「ちょっとごめん、もう無理休ませてと懇願・・・」
「じゃーレストランで休憩ね」
(レストランって、さっきあれだけ食べて、勘弁してくれ~、洋一の泣きそうな顔をみて)
「さっきの甘い物は別腹だから・・・・! 」
笑って言ってのける玲子、そうです、女性は別腹をもっているのだ。
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