128話 閑話 皺寄せ

 レイナ side

 

 

 近衛騎士団長キーナンが負けましたが有意義なダンジョンマスターとの会談でした。

 

 凄まじい性能の剣をあっさり作り、簡単にくれた事を考えると世間知らずなのと、もっと強力な武器つまりラスボスのカイが使っていたクロスボウ?的な射出武器にされていた付与の組み合わせと威力に自信があると予測します。

 

 音が大きいので魔法系は風か炎、何かしらのスキル組み合わせと発動タイミングの調整であの威力を確保しているのでしょう。

 

 形がオリジナルで、かなり教義のギリギリなのでさすがに王国では制式装備として採用は出来ないでしょう。

 

 冒険者や狩人がやるオリジナルのスキルの組み合わせは工夫の範囲です。

 

 さすがに新たな武器やスキル外の物を作るのは完全にアウトですがネイの様子からそれはないでしょう。形状的にはアウトな気がするので、教会や熱心な信者には見せられないでしょうけども。

 

 シバル王国は特に王家や高位貴族の信仰が弱い珍しい国ではありますが、民心や教会からの圧力を考えると無理はしにくいので大差ないのです。

 

 そんな事は些細で、あの後の会談で決まった計画を押し通すという無理難題に悩んでいます。

 

 エルフの領域が完成次第、新王都の建造にダンジョンマスターは行うそうで、第一弾は港の建造らしく旅客港、貨物港、軍港をそれぞれ独立して作るらしいです。

 

 そして次の段階は港の地下に城下町?の商業区としての2階層目を作成する。

 

 3階層目は職人街で工房を集める。

 

 4階層目は広大な農作地で最低限王都で生活する民の消費する食糧を全て生産するというバカげた計画です。

 

 5階層目は王都の民向けの住宅街で6階層目は貴族の館と役所などの機能を集約した政治の階層になります。

 

 7階層目は巨大な王城のみで構成された権力の象徴になるらしいです。

 

 基本的にはスペースのみを確保してそれぞれの用途に合わせて区割りや道路、階層の移動手段を建設までダンジョンマスターが行い建物はシバル王国の担当です。

 

 王城はなぜかサービスしてくれるらしく城の建設までしてくれるらしいです。

 

 暗殺も盗聴も何もかもダンジョンマスターがやれるという恐ろしい状況です。

 

 まぁ貴族も民もほぼ反対なのでゆっくり説得のはずが、計画前倒しで時間が無くなって困ってます。

 

 実際目の前の会議では、ひたすら反対派、反対のための反対派、メリットよりデメリットが勝る反対派とほぼ孤立無援です。

 

 意外にも近衛騎士団はほぼ賛成なんですけど、政治的には発言権がありません。あのかわいい見た目に惚れてないか、若干心配してますがロリコンに護られてるなんて事はないと信じてます。

 

 ダンジョンマスターの人物像が分からない不安と教義に反すると感じての拒否感で、どうにもならなさそうですね。いくら信仰が弱くても真っ向から反する勇気は誰もありませんし、万が一にでも反したくもないのでしょう。

 

 村やらエルフやらなら住みたい者だけ行けば良いが住み、慣れた街を捨ててダンジョンに住むのはハードルが高過ぎるという結論ですね。

 

 さてガス抜きもすんだし、決めますか。私が言うことは簡単、結論を上回るデメリットを提示するのみです。

 

「遷都をやめて、ダンジョンマスターが敵になればAランクの魔物を差し向けられて勝てると?他の国にダンジョンのもたらす利益を奪われてもかまわないと?バンパ王国の宰相すら詐欺師扱いするダンジョンマスターが敵対しても何も我々にしないと思うのですか?悪感情をもたれても平気だと?」

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

「ですが教義に反する可能性があり、教団を敵に回せばダンジョンマスターといえど滅ぼされるでしょう?」

 

 伯爵なのでこの会議では一番地位が低いですが、信仰を気にしてる派ですか。

 

「王家の宝剣を破壊できるダンジョンマスターですよ?Aランクの魔物とダンジョンという守り安い地形を考えれば、莫大な戦力が必要でしょう。そんな戦力をダンジョン攻略に集めれば、魔王に人類が滅ぼされるのでは?」

 

「つまりどの道滅びるなら、レイナ陛下はダンジョンマスターにかけるというおつもりですか?」

 

「魔王が今後、増えたときに最も生き残れるのはダンジョンマスターの味方する事しかないでしょう?確認こそされてませんが、オークから産まれたあらたな魔王にヴィーザ大森林の領土を奪われたと私は思ってるのですから」

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

「魔王を滅ぼせない教団は確かに求心力を失いつつありますが、まだまだ力は圧倒的でしょう?それこそ国境封鎖されては我が国は持ちません」

 

 反対のための反対派が一番面倒ですね。こいつらはとにかく反対、メリットデメリットより反対ですからね。

 

「食料も土地もダンジョンマスターが準備出来るのにですか?難攻不落のダンジョンと資源を敵にして他国と手を取り合い魔王に滅ぼされるつもりで?」

 

「その前に我が国が滅びると言っているのです。ダンジョンマスター頼りなら、機嫌しだいで我々の命を握られてしまう以上いつ殺されてもおかしくないはずです」

 

「それこそ現状出すら教団の機嫌しだいで国境封鎖されれば同じ事でしょう?ダンジョン内に限れば教団より力があると言っており、シバル王国を滅ぼせる戦力を既に有している。シバル王国の選択肢はもう、ダンジョンマスターの機嫌を取るしかない。ダンジョンマスターはダンジョン内で我々が暮らすことが最もメリットだと明言しています。実際に敵対しいる攻略しようとした者すら、ダンジョン内ではなるべく殺さないのですよ?」

 

「つまり機嫌を損ねたら現状でもう、死ねとおっしゃるのですか?教団より信用出来るはずがない!」

 

「緩やかな滅亡しか教団の先にはないでしょう?無理に新王都に住めとは言いませんが、今後は政治中枢からは外します」

 

 いかに王の権力が強かろうと全て独断で実行は行政が動かなくて無理でも、強引な方法は他国よりとれます。


 王国最強の近衛騎士団が賛成なので、私の発言力は増してますから簡単でしょうね。最悪のパターンで反乱が起きたらダンジョンの戦力を貸してもらえる契約はネイ姉様としてありますが黙っておきますか。

 

 ダンジョンマスターと蜜月をアピールしても彼らは安心しないでしょうし、蜜月過ぎて私の暗殺をして計画を止められると思われても面倒です。ある程度は貴族側に近くないと離反が増えすぎますからバランスは必要でしょう。

 

 人間はあまりにも共感出来ないと排除しますからね。近い立場や仲間意識は共感を得るには大切です。

 

「さて、反対者はこの場から出なさい。残った者で移設計画の策定をします。もちろんこの後反対したなら摘まみ出される覚悟をしなさい」

 

 こうして無理やり計画を進めますが、反対派の妨害は最後までありとあらゆる方法で行われるでしょう。今から頭が痛い問題です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る