167話 間話 脱走してもいいんだよ
ぜースト side
「私は、ネイ説明と交渉を担当します。貴方達は捕虜、我がダンジョンの戦争奴隷となりました。死にたくなかったら命令に従いなさい」
ネイと名乗ったが間違いなくこのシバル王国の元女王にして公爵閣下だ。そして護衛兼見張りも明らかに、高級感を重視した防具のサイオンと名乗った吸血種の女性、これは間違いなくバンパ王国の貴族だろう。
そしてミレーナ姫様に勝った人族の男と、護衛と思われるエルフの女性の合計4人がいる。
彼らの様子から男が最上位な権力者であると同時に最高戦力として、居ると予想する。エルフが戦闘要員、サイオンは身分的に隊長格で間違いないだろう。
歪曲魔族はミレーナ姫様の敗北で、非戦闘員も含めてダンジョンの村に近いが魔物がいない場所に集まっている。ミレーナ姫様の強さは知っている。そのミレーナ姫様が負けたのだから全員従順だ。逆らって勝てるわけがない。
「騒いで襲われても知りませんよ。転移に同意しなさい」
全員が口々に同意を表明する。暫くしてグニャリと空間の繋がりが歪み一瞬白く光ると、そこはタランクト種と明らかにゴブリンがワラワラ居る洞窟?だった。
「マジかよ、これはSランクパーティーでも無理だろ」
誰かが呟くが、ある程度進化した個体がいれば強化されるという生態のゴブリンと特異個体タランクトが大量に整列している。これを差し向けられたら国が滅ぶというかバンパ王国の王都など、赤子の手をひねるより簡単だろう。
これは更地になるわけだ。
「バンパ王国が存続しているのは、ダンジョンマスターの慈悲なのか」
「キャハハハ、これはミレーナも本気出しても殺し尽くす自信はないぜ」
ミレーナ姫様がいくら強くても、MPは無限ではない。空間歪曲は特にMP消費が激しいため、これほどの大群なら逃げの一手しかないだろう。
「見ての通りダンジョンの魔物は支配下にあります。逆らえば分かりますね?」
「「「「「・・・」」」」」
無言で頷くしかない。こんな凶悪な魔物を相手にしたいとは思わないし、その主に逆らう気など起きない。
「ここでは暮らせないでしょうから、ついて来なさい。そうそう。勝手な行動して喰われても責任は取りませんよ。今はダンジョンマスターの支配下に魔物が、ある事を忘れないように」
「特異個体タランクトのキングに、ゴブリンエンペラーが沢山これはどの国より強いだろ」
「国どころか、魔王とて無事では済まないだろうな」
恐怖を紛らわすために、喋っている奴も多いが、これだけSランクがいれば魔王を2〜3体は滅ぼせるだろう。ミレーナ姫様が居なければ、Sランクの魔物1体でも我々歪曲魔族は全滅する。
そんな魔物の隊列中を進んで行くと螺旋階段があり、下へのみ続いている。螺旋階段を下って行くとまた魔物が整列している。螺旋階段は少し離れた位置にまた下りがある。
各階層の中を短距離とはいえ移動しなければならない。魔物の群れを突っ切る、となると死者を覚悟というか、一部ネットタランクトが螺旋階段に巣を作って通れなくなってしまい、直近に最低限人が通れる範囲だけ、撤去された形跡がある。
特異個体が多数いるため、巣がトラップタランクトやイリュージョンタランクトで、復旧されると突破不能な可能性もありそうだ。
そうして下りること4階層、そこには簡素なテントと川、草原そして栗の木が大量に植わっている。
「ここが歪曲魔族のフロアです。出口はこの螺旋階段のみで脱走は止めません。でも魔物の餌になっても助けませんよ。もちろん魔物は、全てダンジョンマスターの支配下にありますから、私には助けられませんよ。ここで何をしようと自由です。仕事があればその時に連絡します」
「このフロア無いなら何をどうしても問題ないのだな?」
族長のミレーナ姫様は交渉事は不可能なので、私が代表して確認と交渉に当たる。
「ええ、農業をしようが、殺し合いをしようが、脱走をしようが、かまいません。連絡役兼管理者も決めなさい」
「キャハハ!ミレーナはダーリンに着いていくぞ!」
「進まないから黙れ」
「はぅ!この扱い濡れちまうぜ、それはケーキ!?」
「黙れよ」
「イエッサー」
ミレーナ姫様が素直に言うことを聞く事に驚きながらも、歪曲魔族全体から無言の推薦を受け取る。交渉役は昔から私だから問題はなかろう。
「私がやりましょう。管理とは何をするので?」
「あなた達のDP収入で空間の維持、光熱費を支払い残りは好きに使える権限を与えます。それで生活を良くするなり、家畜を増やすなり、武具を揃えるなり好きにして良いとダンジョンマスター様の御慈悲です」
詳しく聞くと権限はかなり狭められており、凄まじい性能の武具は作れないし、使える素材もここにあるものだけらしい。
家畜系の魔物はDPで買えるらしい、後は温度や照明は自由に出来る。またダンジョンマスターの気分次第で剥奪できるし、ダンジョンマスターは勝手に気候などの設定も変えられる。
ミレーナ姫様はここで住むことになったというか、命令されて喜んでいる。最後に要望をダンジョンマスターに伝えるとこは許されており、出来るらしい。
そして生活を安定させてダンジョンの戦力として働きを期待されているらしい。魔物を外に放つのがやばいという常識はなんとダンジョンマスターにもあるようだ。
全ての交渉というか説明を聞いて、戦争奴隷としては破格の待遇に歪曲魔族の皆安心したようだ。
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