166話 約束された勝利のケーキ 下
本気の海くんの笑顔に見惚れてる優姫だよ。
『キャハハハこれは接近戦だな!行くぜ!!
ミレーナは砲撃を反らしながら海くんへ走り出す。その間もナイフを振ることで海くんに攻撃を続ける。
海くんは軽やかにナイフを躱す事に専念する。常に攻撃的で攻撃こそ最大の防御、つまり攻撃させないという海くんの基本スタンスからは真反対のスタンスだ。
『
海くんは目の前にやってきたミレーナに言葉は返さない。代わりにアサルトライフルをフルオートモードで、ミレーナの眉間へ射撃する。
『うぇい!?
ミレーナは歪曲空間と反射神経の総力を上げて、なんとか躱す。反撃にナイフを振ると海くんの、アサルトライフルがナイフの迎撃をするため射撃する。
ミスリルナイフと鉛の弾が衝突し弾が破壊される。
これはミスリルが強いのではなく、鉛が弱いのだ。柔らかく加工しやすいだけでなく、比重が重いため同じ体積なら空気抵抗などを受けにくく、遠距離になればエネルギー量をより保持できる。
更に柔らかさから貫通せずに弾頭が潰れる。これにより運動エネルギーをより多くターゲットに伝えて、殺傷力が上がる。
人体により効率的にダメージを安価に与える金属が、鉛なのだ。
装甲などの貫通を求めるならもちろんより、硬い素材が向いている。何事も用途に合わせて使い分けろということだ。
ミレーナをもってしても、至近距離アサルトライフルの弾にミスリルナイフを押し戻される。
しかしそんなことを一切何も気にせず、ミレーナは顔を全力で傾ける。
フルオートで発射された弾の一発だけはナイフに当たらずミレーナの手元から顔へ向かったからだ。
一方通行ではないのだから、ミスリルナイフが海くんに当たるなら反対に海くんから攻撃も出来たのだ。
『キャハハハ、
ミレーナの回避行動はアサルトライフルから、弾が撃ち出される前に始まっていた。海くんは計算で当てるし回避するなら、ミレーナは直感で躱している。
こんなところまで似ているようで全く違う二人だった。
海くんが今度は、発射を続ける76ミリ速射砲の砲身を鉄棒の様に利用して大きく移動する。
離脱してから1秒もおかずに、ミレーナのミスリルナイフがありとあらゆる方向から転移を繰り返しながら、海くんのいた場所に、斬りかかる。
もしその場に居ればミキサーによってズタズタにされたかのような姿に、海くんがなっていただろう。
『今のも避けるのか!!いいね!もっと!もっとだぞ』
海くんとて、回避行動しながらアサルトライフルの弾丸をミレーナの空間転移を利用して攻撃するが、僅かなかすり傷しか付けられない。
『いってぇ!
「血塗れで愉しそうとか軽くホラーなんだけど」
「私はカイ様があれだけ、当てられない事に驚きです。」
海くんがアンチマテリアルライフルをフルオートで解き放つ。ミレーナは予想外の攻撃にわずかに、回避が遅れ片腕を肩口から吹き飛ばされる。
それでもミレーナは片腕で、海くんの喉元にナイフを突き付けて勝利宣言をする。
『これでミレーナの勝ちな!キャハハハ文句ないだろ?』
『ケーキが無事ならな』
『あの攻撃でも空間遮断はこえられないぜ、キャハハハ!』
当然ながらアイスケーキは溶けてドロドロ、お皿からも溢れてます。
『キャハハ!!なんでだよ!!』
『あれだけ狭い空間で爆発させまくって気温が上がらないわけ無いだろ?気付かないやつが悪い』
「ごめんね。こっそり室温設定も海くんの指示であげてるの」
「カイ様も大概卑怯ですね。」
『うがー納得いかねーぞ』
海くんが右手を上げて軽く振り下ろす。私はその合図に合せて最大威力の頭悪いレールガンをブッパする。
凄まじい加速にレールと弾体が摩擦で大量の火薬を使ったみたいに火を吹く。もちろん炸裂音を鳴らし音速をぶっ千切った10トンの弾体が飛んでいく。早すぎてダンジョンでも計測不能なんだからやばすぎる。
大質量が高速移動するために歪曲空間も対処出来ず貫きケーキをお皿どころかダンジョンの構造つまり床と壁を消失させ、大穴を穿つ。
『あれ受けたいのか?』
固まるミレーナ。
『・・・何あれ?』
『攻撃だな?もう一度見るか?それとも受けるか?』
『あれは反則だって・・・』
ミレーナを常識的なテンションにする一撃、切り札に相応しい威力だね。
『でどうする?』
容赦なく海くんはミレーナを追い込んでいく。
『キャハハハ!今日からミレーナの御主人様な!!そして歪曲魔族は戦争奴隷になるぜ』
『ならいい。全員武装解除して集めろ。最低限の生活が保障された居住場所に案内する。ミレーナだけ家畜小屋な』
『キャハハハ!うぇい、ハァハァ御主人様のハードプレイたまらん』
なに、ガチの変態かよ。ミレーナは海くんに丸投げしようと思います。
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