038話 間話 公爵四家の暗躍
シバル王国の民は心配している、なぜならオバカ新国王陛下の体調が崩れたらしいからだ。
風邪や小さな怪我も最悪死に至ることもあるのだが、王家や貴族となれば栄養も睡眠もしっかりとれており、小さな子供と老齢でなければ死ぬことは滅多にないのである。医師もいるのだし魔法もあるのだ。死は力のない者にはそばにあり、力を持てるもには縁遠いことなのだ。
しかしオバカ陛下は日に日に体調が悪化し魔法でも治療出来ないでいた。
次期の王位継承者し女王となる可能性が高いネイ殿下にはオバカ陛下体調は詳しく伝わっていた。
そして数日後、治療の延命もついに出来ず、オバカ陛下が崩御されネイ殿下がシバル王国の女王となった。
「オバカ陛下の死について確認せねばならないことがあります」
式典が終わり他国の使者も帰り、内政に注力するべく行われている最高幹部会議である。
女王と内政の宰相、騎士団の将軍、税と金の財務大臣、外交の外務大臣、そして女王の護衛として近衛騎士団長の6人しかいない。
「ネイ陛下の側近がネイ陛下からオバカ陛下に差し入れをした2日後からオバカ陛下の体調が悪化し崩御されました、つまりネイ陛下の毒殺ではないかということです」
「毒入りの証拠はあるのだろうな?」
近衛騎士団長が殺気を放ちながら宰相に質問する。近衛騎士団は国王の身辺警護と直轄武力としての役割があり、忠誠心が強く実力派が集まっている。
その長となれば国家最強クラスで冒険者なら最低Aランクで魔物基準ではあるが大群を相手に出来る人型戦術兵器のような存在で貴族の将軍や宰相など瞬殺だろう。
「もちろんありません、差し入れの酒を飲んだ直後から体調を崩されたのなら証拠でしょうが2日後ですから」
「では何が問題なのだ?」
近衛騎士団長、新女王にも忠誠心はしっかりあるようだ。
「差し入れの酒を持って行った側近から私に万が一毒の運び役をしていたら、と相談を受けまして、念のためネイ陛下に確認したいわけです。それ以外は毒見役が陛下の口にするものは問題がなかった事を証明しております」
宰相は遠回しだが、ネイが毒を盛ったと言っている。
「なぜネイ陛下の差し入れのみ毒見がされていないのだ?」
「後宮でしたからお付きの女性が飲んでいますが次の日には暴漢に襲われた姿で殺されていた。ほかの酒や食べ物は残されていましたが、差しれの酒だけなかった。犯人は探しているが見当もつかない。足跡すらないのだ」
騎士団を率いる将軍が言う。騎士団が警察の役割を担当するのが常識である。
「つまり毒を否定することも出来ない、それどころか怪しいということか?」
近衛騎士団長も事態を理解したようだ。
『ハメて来ましたかー♪さて最適解は無罪の証明ですが難しいでしょうねー♪証拠など公爵達が隠滅済みでしょうからー♪後手ですし外部に漏れなくして時間稼ぎしかないですかー♪狙いは私の傀儡化でしょうかねー♪まずは傀儡のふりをして油断させましょー♪』
ネイ女王は心中で状況を素早く理解する。兄と違い優秀であった。ちょっと心の声は完全に頭悪そうなテンションであるが内容とポーカーフェイスは完璧である。
「例え、他国の暗殺であれ、私の暗殺であれ、毒のことは国家の存亡に関わる問題です。証拠なく公表は禁じます」
「陛下!!それはお認めになられるのですか!?」
近衛騎士団長がネイ陛下に詰め寄る。
「私は毒など知りませんよ。ですが少なくとも漏れれば私が犯人にしか見えないのだから、箝口令を発令します。事件の捜査も禁じます」
「それは先王が病でなく、毒殺だったときには敵討ちはしないということですか!!」
「オバカ陛下は病で亡くなったのです。他国や臣民達には絶対秘密しなければ成りません。今の国力では戦争に耐えられないのです。敵国はつくれません」
『オバカのせいで王家の財政はボロボロですからねー♪時間稼ぎをしないと敵討ちどころか返り討ちにあいますよー♪さて切り札の近衛騎士団長の忠誠も揺らぎ使いにくくなったと見せかけましたー♪油断させられたでしょうー♪なにも武力だけが敵討ちの方法ではないのですー♪』
「承知しました」
近衛騎士団長は明らかに納得していないが表面上剥ぎ取りネイの言葉に従う
「ですが私を御しやすいと行動する他国が怪しいので気を付けなければなりません。最悪また暗殺もありえます」
『これで近衛騎士団長は他国も疑うので反乱などの行動はしにくくなりましたー♪なにも教えないので不満でしょうけど耐えてくださいなー♪公爵たちは容疑者としては疑われてないと確信し油断するでしょうー♪』
「承知しました」
嫌そうに近衛騎士団長は指示を受け取った。
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その日の夜、外務大臣が周辺国の情報報告にネイ女王の執務室にきていた。
「陛下、報告がございます。人払いをお願いします」
「分かりました。下がりなさい」
メイドが退出し二人のみとなると、外務大臣は最後の仕上げを始める。
「オバカ陛下の暗殺についてですが、あなたの部下が運んだ入れ物はあり毒がみつかりましたぞ。関係ないですが彼女は妹の病が宰相のおかげで治療されて非常に感謝しておるそうだ」
直訳すれば酒入れ物あったんだぞ。それで毒は確定だ、運んだ君の部下はこっちの味方だぞ。
「それは犯人の特定を将軍に命令しなければなりません。それで不満がありますか?」
こちらも分かりやすくすると、犯人探しはしないよ(君たちに喧嘩は売らない)それでいいでしょ?
「不満などありません。将軍は優秀ですからな。今後も我々に全てお任せ下さい。我々が今度こそネイ陛下をお守りします」
外務大臣なかなかに押している。
つまり、当たり前でしょ。将軍が暗殺を揉み消す。我々に権力寄越しな。さもないと俺達が毒殺する。大人しく傀儡になれば殺さない。
「分かりました。信用しましょう。まだ報告がありますか?」
ネイは全面降伏だ。
「報告はこれだけです。それでは女性の身ですから、執務室に長いしてご無理をなさらないで下さい」
そう言って外務大臣は立ち去っり暫くして、ネイが呟く。
「サインだけで十分ですかー♪さて犯人とバックの親玉は確定ですねー♪知ってましたけどー♪では反撃開始としましょうー♪しかしバカな連中ですねー♪楽勝ですよー♪」
この女王は見事にポーカーフェイスで乗り切ったのだった。
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