205話 間話 それぞれの準備?
ダンジョン攻略連合軍 side
ダンジョン攻略の失敗どころか、周辺地域まで完膚なきまでに破壊され尽くした。事実上の敗北である。
それでも全ての神々から同じ内容の神託を受け取り、敗北したでは済ませられない。
魔物との最前線に必要な戦力も投入して、総攻撃をするか否か、ダークエルフや人族の最高神官による会議が行われていた。
「ダンジョン攻略は特級戦力を全力投入しなければ危険だ。すでにSランクパーティーが殺されている。逐次投入は各個撃破されるだけだ」
「しかしながら対魔物戦線が崩壊するぞ?」
「現状は魔物の襲撃も、総数も激減しているとの報告がある。これこそ神の意志では?」
大陸最強の魔王が倒れたことで、ドラゴンの支配領域が急速に縮小しており、また他にもここ数年で何体も魔王が倒されたことで、魔物のパワーバランスが崩壊していたのも原因である。
追加でタランクトに、人族領域に近いところは狩られている。オークの魔王こそ勇者の手柄だが、ほぼほぼラスボスがヤバいダンジョン関係者の成果である。
「魔物に甚大な被害を受けては、共倒れになるのでは?」
「だからこそ、出し惜しみなしで大陸中からSランクとAランクの冒険者と、それられに匹敵する実力者を全て結集すれば、5千人ほど集まるはずです。そして今までの戦績から、数が多くても弱ては意味がない。Bランクの冒険者程度の強さの1万人以上集めて露払いをさせるのです」
「招集にどれだけ時間がかかると、思っている?ラスボスがヤバいダンジョンを攻略出来ても、我々が魔物に滅ぼされてしまうぞ!!」
「ダンジョンも都市や農地を攻撃、破壊をしてきている。やつらが手を止めなければ同じことでは?」
「少なとも、現状でもスタンピードが起これば兵力不足なのだ。これ以上のリスクを許容出来ないのではないか?今は力を蓄えるチャンスでもあろう?」
「実力者が増える数年〜数十年後まで、魔物もダンジョンも待ってくれると?だからこそ最速でダンジョンを滅ぼすのです。神託にも応じらるでしょう」
「最低限の防備は残すべきだが、そうするかないか」
その後は、戦力を根こそぎかき集めたい過激派と保身派で微調整が行われたが、最強の軍隊が送り込まれる事に変わりはないのだった。
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その頃、神と認定させて現人神と崇められる海くんは、これ以上の攻撃は浪費が増えるだけと判断して、防衛にシフトしていた。
人族との戦争の主力はゴブリンであるが、流石に何割かは戦力を喪失しており、敵が数で押せばすり減り敗北するだろう。
そこで土木工事をゴブリンに指示している。総数の差は事前に時間をかける事で埋める作戦である。
それに拠点があれば、ダンジョンから戦力を送り出すよりも効率が良い。魔物とはいえ食料が必要であり、集積拠点にも使えるわけだ。
それでも戦力の質も増強はしたい。その対策も試している。
陣地の作成やテントなどの設置するにも、数千人が毎日泊まれる場所があるとは限らない。ならば作るしかない。
城攻めでも、ただの力押しではなく、城壁の破壊や、土竜攻めなどなど基本は土木工事である。
素早く土木工事が、出来ることは進軍にも防衛にも攻撃にも必要な技能なのだ。
その能力の確認も含めて最初の工事が行われていた。
現代の地球では専門技能であるが、軍事訓練として土木工事は行われる側面がある。
重労働であり筋トレにもなるし、実戦でも使われる技術であり、そもそも機械ではなく人力なのだから連携も必要だ。工事の進捗を把握し、調整もしなければならない。個々の工事が間違ってないかのチェックも必要だ。
これらを達成するには指揮系統の確立と、優れた指導者が必要となる。
作業が土木工事か、戦争かの違いであって多くの共通点がある。何より土木工事は防衛設備だけではない。
川の氾濫を防ぐ堤防の建設や、川の流路を変える事で農地の拡大や水くみなどの労働の削減などの治水工事もある。
道路や港湾による交通網の整備は移動を楽にし早くする。物流が活発になれば経済は活性化し生活の質が良くなる。
がけ崩れの防止や建物の基礎なども土木工事であり、しっかりとすれば長く安心して住める街となる。
社会インフラなので軍事訓練として行えなるならこんなに良いことはないだろう。
でも世の中そう上手くいくものではない。
ゴブリンに土木工事なんて知能はない。知性もない。ダンジョンの力で命令を実行させているだけだ。
土木工事するには細かく命令を下す必要があった。指揮系統とか連携とかそもそも洗脳しているのだから完璧である。
筋トレくらいにはなってるかもしれないが、軍事訓練としては最初の命令を下したところまでで、無意味となっていた。
海くん自身ちょっと失敗したなとか思っているみたい。あれだけ地上を破壊して攻められなくしたのでこの設備が使われることはないと思っているからだ。
防御を放置して攻撃しても損害ばかりで、戦果がないので、土木工事を辞める理由もないのではある。
なのでとりあえず、優姫ちゃんには侵攻準備してると言い訳するための時間稼ぎだと割り切り、防衛設備の建造はのんびり進んだのであった。
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