204話 強者の余裕

 まさかヴィシリアをずっと前の方法でまたぶちのめすとは、ビックリした優姫だよ。

 

 

 海くんに呼ばれた女の子は、特等席に居たのですぐに海くんの所に辿り着くよ。

 

『ノォーーーーーーーー!!』

 

 ヴィシリアは激痛のためか、動けないからか、煩い。そんな中で海くんは鳥人族のホームレスみたいな女の子に、話しかける。

 

『命を賭けた戦いだが、相手が弱すぎて勝負にもならなかったから、とどめを刺す気がしない。けどな一応殺し合いだったし、これの生き死には任せる』

 

 ヴィシリアをこれ扱いして、言うと女の子に海くんは、アンチマテリアルライフルを渡す。

 

 でも女の子にはアンチマテリアルライフルは重すぎて振り回されてる。

 

 海くんはアンチマテリアルライフルを返して貰うと、サイオンを手招きして、アサルトライフルを持って来てもらう。

 

『サイオン、悪いな。助かった』

 

『えへへ、カイのためならお安い御用だよ』

 

 サイオンは幸せそうだけど、パシリだよね?ヤンデレさんだし気にしないでおこう。

 

 海くんは、サイオンから受け取ったアサルトライフルを女の子に手渡す。

 

『アサルトライフルでも、これは動かないし殺れるだろうさ』

 

 女の子はアサルトライフルをマジマジと見つめてる。

 

 海くんは言うだけ言うと離れて見守るつもりらしい。そこでサイオンが構えや扱いを説明してる。

 

 たどたどしく、なんとか弾丸の入ったマガジンをセットして、安全装置を解除する。

 

 そしておっかなびっくり、アサルトライフルをヴィシリアに向かって構える。そして引き鉄を引く。

 

 一発の放たれた鉛玉は海くんの氷に阻まれてヴィシリアには到達しない。たぶん連射が必要なのだろう。

 

 女の子はアサルトライフルの反動にビックリして体勢を、崩してしまう。

 

 それでも女の子は自信を深めたのかさっきよりもしっかりと構えて、今度はセミオートにして、それなりに様になった構えをとる。

 

「あの子マジでヤル気なんだね。凄いなぁ」

 

「勇者を砲撃したり、バンパ王国の貴族街を更地にした人が何を言ってるの?」

 

 エレンティアが言うけど、その場で射撃するのと、画面越しに操作するのは別物だよね?

 

「えー、私は直接やってないよ?」

 

「間違いなくユウキ様がやってます。決断も実行もユウキ様です。カイ様は意外と自発的に大きな決断はなさりません。」

 

「海くんは確かに、政治とか目標は決めないね。お願いされたり、守るものを狙われたら容赦しないけどね。あれ?私もそうじゃないかな?」

 

「ユウキは、放置してるようで何でも好きに決めてるよ。だってすぐにカイにお願いして叶えるか、ダンジョンマスターの力でやっちゃうでしょ?」

 

「そうかなぁ?でもアサルトライフルで直接殺す勇気はないよ」

 

「そういうことね。確かにダンジョンメニュー越しだと血の匂いとか、反撃の恐怖とか無いし殺りやすいか」

 

 エレンティアとキアリーさんが納得した頃には、女の子は何度かセミオートでヴィシリアに発砲しており、氷をある程度砕いている。

 

 そしてサイオンはフルオート射撃に切り替えを指示する。弾薬はDPによる無限補充なので弾切れの心配はないよ。

 

 連射された弾丸は海くんの氷をついに突き破りヴィシリアに到達する。こうして年老いたドワーフのヴィシリアは遅れながらもパーティーのもとへ旅立ったのだった。

 

 しかしながら、魔物が跋扈し、教義により技術が向上しないこの世界では死は身近である。

 

 ヴィシリアがかなりの実力者であることは観客にも分かる。そしてアンチマテリアルライフルに振り回されてる女の子が絶対殺せないステータス値があるはずだった。

 

 なのにあっさり殺した事に驚き、才能が無いものほど心を動かされていた。

 

 諦めた夢を叶えるチャンスだと思ったからこそ、海くんに祈るものも早くも現れている。

 

「なんか、簡単に新興宗教の開祖に海くんなっちゃたね」

 

「越えられない才能の壁を越える方法を提示したのです。そして目に見える形でこれだけで示せば、信じる人もいるかと思います。」

 

「そんなもんなのかなぁ?才能の壁とか言われても、人間ってさ運と努力でだいたい決まるよね?」

 

 努力できる人で、チャンスが巡ってきて掴めたら成功者だよ?ぐーたら遊んでたらチャンスを逃しやすいとは思う。私の前世だって正社員なら違ったと思うし、今世だってダンジョンマスターに運良く成れたからだしね。

 

「ユウキ様はステータスがありませんから実感がないと思いますが、才能が無ければステータス値もスキルレベルも上がらず低いまま止まります。そうなれば生きることすら難しいのです」

 

「そうだよ。生産系スキルとかも上がらないとお金稼ぐのも大変だからね」

 

「それだけで熱狂してるの??アイディアしだいで、ステータスとスキルとか、どうにかなりそうだけどね」

 

「下手すると教会から、抹消されるけどね」

 

「そういえばお外はそんな理不尽な世界だったけ?新興宗教の方がまともって、やだなぁ」

 

 海くんがなんか崇められてるけど、海くんは神様やるのは楽しそうじゃないから私は海くんの仕事が、増えたのかなと思うよ。

 

 ネイとかうみとサイオンとかに海くんが押し付けて、頑張らされるのじゃないかな??

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