206話 想定外なんだけど

 すっかり上のヴィーザ大森林をタランクトの住処にした優姫だよ。

 

 

 DPを使わないで海くんがゴブリンを使ってお外に拠点を作っるとは聞いたけど、海くんなら心配無用と全部任せてたよ。

 

 そしてなんか半年ほどで築かれたのが、複雑にグネグネした空堀?が複雑に何重にもなってる。あとは土嚢を使った壁と、30ミリガトリング砲とかの武器も配備されてるね。こんなの見たことないよ??

 

「海くん、これはなに?」

 

 砦とか要塞じゃないし、軍事基地でもないしなんだろう??そもそも建物ないし謎だね。素直に教えてもらいます。

 

「塹壕だな。ゴブリンにも、これくらいなら作れた。建築物も作れないことはないが、ゴブリンの知能が低すぎてやり難いな。それでも防衛は小数の兵力でも可能になったな」

 

 それにしては、複雑でしっかりと作られてるよ。平行に蛇行した塹壕が並んでなくて、たくさんのウネウネなのはなんでかな?

 

「んー?塹壕?どこかで塹壕戦って聞いたことあるよな?海くん、何だけっけ?それとあんなウネウネでいいの?」

 

「塹壕は砲や銃が進歩して射程と威力が高まると、攻撃側が防衛設備(要塞、軍事基地、砦など)に近寄れなくなった。対策として、作られた装甲の変わりみたいなものだ。装甲よりも深い塹壕の方が防御力は高いけどな。そして何重にも塹壕を掘りお互いに塹壕を建造した結果、双方共に突破出来なくなったのが、第一次世界大戦の塹壕戦だ。複数並べてるのは、最前線が突破されても後方から予備部隊の応援や支援をするためと、弾幕射撃対策だな」

 

 んー、なんかお互いに攻めれなくなるとかアホっぽい??そうなる前にどうにかならなかったのかな?弾幕射撃??

 

「なんで突破出来ないの?数で1点突破的にゴリ押せばいいんじゃない?あとは弾幕射撃対策になんでなるの??」

 

「野戦砲と、機関銃と小銃のクロスファイアに生身で耐えて進めればな。当時は戦車もない時代だぞ?死ねる。弾幕射撃は、横一列に大砲を並べて味方歩兵の前に着弾して、敵を壊滅させて歩兵を前進させるための緻密な砲撃だ。この縦深防御はノウハウなしに突破は無理だろう」

 

「あー、チート勇者でも消し飛ばしてしまうのに、そんなが何層もあったら進めないね。そりゃ進む方法がないなら膠着するしかないね。しかも塹壕に平行に並べなくて弾幕射撃しにくくしてるのかぁ。海くんは凄いなぁ。あっ弾を撃ちまくるのはなんて言うの?」

 

 前に焦土作戦って言ったら、報告が違うって怒られたからね。

 

「制圧射撃だな」

 

 ヘェーヘェーヘェー!!

 

「ん?あれ?敵の塹壕はないということは?」

 

 お互い塹壕があってマシンガンとか大砲があっても膠着した。なら味方にしかないとどうなるの??

 

「的は狙いやすい横列陣形なんだが、コブリンじゃ銃火器は細かく、それこそ指先の動きまで命令しないと使えないな」

 

「あれ?まだまだシバル王国もバンパ王国も銃使える人ほとんどいないよね?」

 

「射撃訓練以前の座学中だな」

 

 技術レベルが違いすぎて、今までの戦術運用では上手くいかないので、そこから勉強してるんだよね。

 

「でも敵はめっちゃ大軍だよね?ヤバくない?」

 

「最低でも兵力5万は超えてるな。しかも最低Bランクの冒険者以上のステータスらしい」

 

「ネイが魔物の領域から全防衛戦力を引き上げてるとか言ってたけど、その軍隊だよね?」

 

「行軍するにも食料や水の運搬させないように街道は破壊したし、この世界の軍の基本である現地調達もさせないように、農地も焼き尽くしたのに、どうやったのかが気になるな」

 

 近代的軍隊以前は、食料品は運ばなかったらしいよ。嵩張るし重いし腐るし馬車を使うと馬の食料が更に増えるし水もとなると重すぎるで、戦う人より運搬する人の方が多くなるらしい。だったら現地で買うか略奪するらしい。

 

 その両方を対策したのに、こんなに早く大軍を送り込んで来たのが、海くんは不思議みたいだよ。

 

「ネイが奴隷を使い潰しかないとか言ってたよ」

 

「それにしたって、数日はなんとかなっても後が続かないはずなんだがな」

 

「補給は軍隊の急所なんだよね?」

 

「数日間以上も食べてない兵隊とか、弾薬の無い銃とか、燃料切れの車両とか、整備不良の装備とか、足手まといか邪魔者と同じだろ?」

 

 弾薬は矢だし、車両は馬で、剣とか槍の手入れする道具がない敵ってことかな?

 

「そりゃ準備も必要だと思うし弱そうだけどそんなにかな?」

 

「見た目地味な事が本質的な実力だろうさ。前提となる物資、食料不足に追い込んだはずだ。行動不能、餓死して当然だな」

 

「じゃあとにかく時間稼ぎ出来れば勝手に自滅する??」

 

「おそらくな。ただ進軍出来たなら何かしらの方法で食料確保可能と見るべきだろう。ゴブリン二千もあれば五万くらい時間をかければ壊滅できるさ」

 

「海くん本当に大丈夫なの?さすがに足りなくない?」

 

 20分の1だよ?海くんが言うなら勝てると思うけど、どんなに頑張っても敵は強いし無理な気がするよ。


「まだミレーナもエレンティアも俺も温存してるけどな」


「そういえば、海くんもだけどチートな人達が待ち構えてたね。ミレーナだけで勝ちそうな気がするよ」


 私は勝利を確信して敵に合掌したのでした。

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