031話 ヴィシリアの苦難

 お久しぶりな、優姫です。

 

 

 キアリーも2日目は慣れたのか、今日は笑顔がステキですね。異世界の美人補正なんでしょうか?エルフとか睡魔人とか綺麗な人しかいないのかな?

 

 そんなことより、ご飯が美味しいです♪海くんの料理と同じ食材とは思えないマジで素晴らしい味です。

 

 もう海くんの料理は禁止・・・尋問、拷問にはありですね。不味い物を食べるか喋るか、絶大な威力でしょう。私は耐えられる自信がありません。

 

 痛め付けられるよりも不味い食事は死を選びそうですが、腐ってもなければ臭いも悪くない。ひたすらに味のみが不味いのです。空腹なら食べてしまうのです。海くんの料理は見た目詐欺ですからね。

 

 海くんの料理の残りは尋問用かと考えていると助けたドワーフが帰って来ました。

 

 荷車を自身で引いていて、いろいろな物を持ってきたようです。荷物の量的に住むのかな?お出迎えに行くとか面倒くさいね。海くんが行ったし放置でいいや。

 

 モジャモジャテッペンハゲはギルティなのです。念のためダンジョン監視で様子は見ましょう。

 

『カイ、恩返しの品を持って来たぞ』

 

「そういえば頼んでたね。すっかり忘れてたよ」

 

 律儀にお返しなんてするとは思ってなくて忘れてたよ。案外この世界、捨てたものじゃないかな?

 

「どうかしたのですか?」

 

 キアリーさんが私の独り言に返事をくれます。

 

「船が嵐で流されて座礁してて、浜に打ち上げられて死にかけてたのを助けて、仲間の冒険パーティーのお墓を作ってあげたお礼の品を持って来たんだよ」

 

「ダンジョンがあるとはいえ、敵かもしれない船の乗組員を助けるとは、ユウキ様はお優しいのですね。」

 

「それじゃ受け取りに行こう!お菓子と調理道具に、服もたのんだかな?」

 

「それは楽しみですね。私も行ってよろしいですか?」

 

「いいよ!行こう!」

 

 ダッシュしてボス部屋に出て気が付きます。わざわざボス部屋の移動用に船を用意してあるけど、海くんがいないと重くてコアルームに置いてある船が出せないで荷物運べないし渡れないよね。

 

 そうそう、キアリーの元仲間の死体はスライムを5匹ほど召喚して食べて貰いましたよ。残飯とか有機物を食べて処理してくれて増えるという掃除屋です。

 

 装備は宝箱の中身候補で倉庫をコアルームに追加して保管してあります。

 

 私が船を運ぼうとしたらキアリーさんが軽々と船を運んでくれました。元冒険者は力強いんですね。

 

「ユウキちゃん元気にしておったのじゃ?」

 

 渡りきるとドワーフが声かけてくれます。

 

「てっぺんハゲチビで不潔な人は誰ですか?」

 

 キアリーさんにまでスルーされて普通にディスられてる、えーと名前なんだっけ???・・・少し考えて覚えてないので海くんに視線を送る。

 

「ヴィシリアだ」

 

 海くんの記憶力凄いね、全く興味が無かった気がするけどよく覚えてる。

 

「ワシ完全にユウキちゃんに忘れられとったのじゃ」

 

 落ち込むヴィ・・・ドワーフ。

 

「えっと、・・・ちゃんと覚えてたよ。お礼の品をみせて♪おおぉ~!調理道具に服もあるよ!」

 

「仲間の墓と命の恩があるのじゃから仕方ないとはいえあんまりな仕打ちなのじゃ」

 

 フライパンと包丁におたまと注文した品にザルも追加であるよ。

 

「これはクッキーですね」

 

 一緒に見ていたキアリーさんがクッキーを見つける。

 

「クッキー♪先ず1枚食べてみる!モグモグ♪甘いけどボサボサして口が渇くし固くて、微妙かな。砂糖と小麦粉をカラカラに焼いただけじゃん」

 

 私はカントリーな柔らかくて甘いしっとりしたあの国民的クッキーがお気に入りだったのでとてもがっかりです。

 

「美味しいお菓子を知っているのですか?」

 

「知ってるといえば知ってるよ」

 

 前世だけどね。あのクッキーはレベル高過ぎかな?でも5年もお菓子から遠ざかっていたので期待が高かったのです。

 

「クッキーがこの中で一番高かったのじゃよ」

 

 モジャモジャテッペンハゲが弁明しますが値段知らないよ。

 

「美味しいかどうかだよ」

 

「砂糖はかなりこの国では高いので、並の稼ぎではそうそう砂糖を使ったお菓子は食べられませんよ。」

 

 キアリーさんがフォローしてくれるけど、このお爺さんのフラグは木端微塵にしなければならない。

 

「ダンジョンマスターって稼ぎどうなのかな?」

 

「ダンジョンに潜る冒険者の稼ぎでは余裕ですね。ですがダンジョンマスターの稼ぎは知りません。」

 

 キアリーさんはなかなか博識でさりげなく教えてくれるから優しいですね。

 

「ワシ頑張ったのじゃ、出来れば旨いものが食べたいのじゃ、食料も残り僅かじゃし助けて欲しいのじゃ」

 

「海くんの保存食ならいっぱいただであげるよ」

 

「あの不味いやつは辛いのじゃ~!ワシ不味くて死んでしまうのじゃ」

 

「ヴィシリアはダンジョンの人じゃないし私は困らないよ」

 

「鬼なのじゃちょっとくらい優しくして欲しいのじゃよ」

 

「不潔なので近寄らないでください。」

 

 キアリーさん遠慮しないね。食事のために仲間にしたけど、とても忠誠心が高い気がするよ。

 

「食料を分けるのと水場くらいは教えてやる」

 

 海くんが優しいなんておかしなドワーフのこと気に入ってる?

 

「カイよありがとうなのじゃ」

 

 海くんはドンマイという感じでヴィシリアの肩をとんとんしてあげるのです。

 

「外で待ってな。俺の保存食はもう要らないらしいから気にするな」

 

「ノォーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 海くんがヴィシリアに止めを指すのでした。絶対海くんのS気がでて遊んでただけだよ。上げてから落とす、上手過ぎる手腕だね。

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