102話 閑話 分からないが分かった

 エレンティア side

 

 

 カイと魔法の技術交換をする事を頼み込んで成功させて、私が先ずは教える側になった。

 

「根本的に魔法とは魔力で物事に干渉する方法です。魔力そのものでは干渉出来ませんから魔法式を使い、物事に干渉出来る力に変換する事で魔法は完成します」

 

「ふむ、それだけは分かるがなぜそうなるのか?はさっぱりだな」

 

「詳しい原理はまだ研究中ですが、魔力と魂は大きさ以外にも質がそれぞれ異なります。魂の形魔力の源である感情の違いからくると思われますが、これは解析が足りていません。その部分と魔法の発動は異なり、私の魔法は神の魔法式により個人差を整えられて、同じ質の魔力に変換されたのちに発動用の魔法式で魔法を発動しています。また魂が魔力のタンクと魔法式の記録媒体として機能しています」

 

「あー、なるほどハードウェアとOSとアプリケーションの関係だな」

 

「???何ですかそれ?」

 

「異世界のコンピューターの話さ、似た仕組みの物があったんだ。俺がいくら真似しても、同じ魔法は使えないわけだな」

 

「なるほど伝わったならいいです」

 

 つまりスマホやパソコンで例えるなら、ハードウェアは機種ごとに異なる。

 ハードウェアが異なれば本来アプリケーションはハードウェアごとに開発しなければならない。

 アップ○の新型が発売されるたら、ゲームなどのアプリはハードに合わせて作り直しになってしまうのだ。

 

 そうならないようにしているのがOSである。アップ○ならI○Sで仕組みの異なる本体とアプリを仲介しているわけだ。その結果本体の個体差や構造の違いが整えられてアプリがどの機種でも同じように動くわけだ。

 

 ただしOSの上でしかアプリは使えない。パソコンならマイクロ○フトのウィンド○ズ10というOSが多いのでOSが異なればアプリは作り直しである。少なくともOSと合うように大規模な調整は必要だろう。

 

 魔法も同じで魂と魔力がハードウェアになる。


 スキルとステータスがアプリである。


 隠されているが仲介をしている魔法式がOSということになる。

 

 極論、OSもアプリもプログラムつまりソフトウェアである。

 

 仲介している魔法式もスキル、ステータスも魔法であることは同じである。

 

 つまり神から仲介魔法式を与えられないとスキルとステータスを真似ても、ハードが違うから発動しないのだ。


 単純にOSのないコンピュータにアプリをインストール出来ない動かないと悩んでいたのだ。ステータス魔法を真似られるわけがない。

 

「さてそうなると俺がいくら魔法式を真似ても無意味だし俺から使い方を教えるな」

 

「はい、お願いします」


 カイの魔法は独特であるけど、性能は素晴らしいので是非知りたい。

 

「ぶっちゃけ、誰にも教わってないし、よく分からない感覚的なものなんだ。俺なりに調べた結果は、魂への影響と水への影響は簡単に出来る」

 

「なるほど」

 

「たぶん内臓に魂を魔力に変換している器官があって、それを無理やり逆回転させているかな」

 

「は?ん?えー?????」

 

「完全な逆回転は無理だから他の生き物から魂を奪って魂を魔力に変換してるな」

 

「なんですかそれ???えーとつまり他人の魂を奪って自分の魔力にしてる。それと同時に産み出された魔力を自分の魂にしてるということ?」

 

「そうそう、なんかほっとくと自分の魂が削られて死ぬという気がしてしてるな」

 

「なるほど、なるほど、全くどう成ってるのか分かりません。とりあえず少し魔力を解析してもいいですか?」

 

「好きにしろよ」

 

「では少しそのまま居てください」

 

 魔法式の基本は魔力の変質、変換にある。魂に影響する魔力や火に影響する魔力などに変換している。

 

 確かにカイの魔力は元々、水魔法の魔力と似かよっている。しかしこれでは魂への影響や感知は出来ないはずだ。

 

 更に詳しく調べていると、カイ以外の魂を拘束してる魔力を見つける。これは大半のカイの魔力とは別物だ。


 量が圧倒的に少なく、拘束された魂は削られて確かにカイの水魔法の魔力に似た魔力になっているようだ。


 その水魔法の魔力はカイの魂となり大きくしている。

 

「とてつもなく希なケースですね。仮説ですが、カイの産まれ持った魔力はたまたま魂への影響がしやすい質の魔力だったのでしょう。そしてたまたまか種族的な物かは分かりませんが魂を水に影響しやすい魔力に魂を変換しているようです」

 

「なんかたまたま上手く出来たとそれだけか?」

 

「それだけです。どうすればカイと同じ魔力を得られる魔法式になるのかとか、カイが私の魔法を使う方法とか私がカイと同じことをする方法なんて、さっぱり分かりません」

 

「なんにも分からないということだな?」

 

「答えだけは分かってますから、そうなる魔法式を探すことは出来ます」

 

「転生魔法を良く完成させたな」

 

「根性と総当たりでそれっぽい成果が出たらいろいろ変えて条件を見付けるのです。元々のそれに近しい結果の魔法式はありましたから、やりようはありました。そして目的の魔力を得られたら、細かいコントロールでどうにかします」

 

「そうか・・・頑張れよ」

 

「答えがあるので楽ですよ。0からなんてそれこそ不可能です」

 

 海くんのような魔力が得られる確率はスマホの部品を適当に箱に入れてガシャガシャ振ったらスマホが組上がってるくらい奇跡である。

 

 つまり不可能とは言えないが限りなく0と等しい確率なのだ。

 

 そんな魔力を発見するのも0からならほぼ不可能だが答えがあれば遥かに難易度は下がるという事である。


 それ以上に全く糸口のない魔力と魂の変換があり、エレンティアには途方も無い深淵が魔法にはあるという事が分かったにすぎないのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る