144話 間話 劇薬の消火活動開始
Aランク冒険者パーティー 無双の咆哮 side
バンパ王国を最近活動していてたまたま、王都に滞在していた。実力はAランクの魔物1匹なら4人パーティーで戦えば確実に勝てるほどだ。
王城の異変に気がついたときにはパワードアークタランクト、ヘヴィアークタランクト、シールドアークタランクトと3体も変異個体、しかもどれもAランクのアークタランクトが城と貴族街で暴れている。複数のデスハイタランクトがシールドアークタランクトの攻撃力を補っており手が付けられなくなっている。
「何だよあれ?逃げるか?」
リーダーは魔法使いで後方から俯瞰して全体を見ている。
「どこから現れたかによっては街の外の方が危険だぞ」
剣士だが重装歩兵といった全身鎧の男でパーティーの盾だ。
「冒険者ギルドは何かしら情報があるかもよ?」
ヒーラー兼斥候で万能な中衛の女性だ。
「噂のダンジョンマスターでしょうか?」
スピードファイターの女性剣士で手数で勝負するタイプだ。
猫獣人のパーティーで同年代で同郷の貴族の子女で結成されたパーティーだ。
「そうだな、逃げるしても情報は必要だな。冒険者ギルドに行こう」
冒険者ギルドはてんやわんやしていたがAランクパーティーということですぐに奥に通される。
「まさかギルドマスターの所に直行とは驚きだ」
狼獣人のギルドマスターが指示を出しているデスクに直行で案内された。
年こそ重ねて衰えているだろうが、下位の冒険者などより強いだろう。少なくとも分厚い筋肉は戦いで鍛え上げられたものだ。
「Aランクの無双の咆哮には正確な情報が必要だろうかな。冒険者ギルドで把握している情報で正確なのは、バンパ王家が呼びつけたダンジョンマスターが今日到着しているということだけだ」
「そしてヘヴィアークタランクトの転移は可能ということか」
「そのとおりだ。何があったのかは分からないが貴族共がシバル王国のダンジョン情報を急に問い合わせしだしてこれだ」
「つまり、俺たちにダンジョンマスターを倒せと言う事か?」
「いや、恐らく不可能だろう。ダンジョンマスターが魔物を転移出来て自身を転移できないとは思えない」
「ならどうする?」
「ダンジョンマスターの管理するラスボスがヤバいダンジョンは冒険者をなるべく殺していない。さらにはシバル王国には友好的だ。なら冒険者なら話ができるかもしれん。バンパ王侯貴族は自業自得としても、少なくとも街への攻撃だけは止めなければならない」
「おいおい、まさかその話をしてこいと?」
「いや、ギルドマスターである俺がやる。そのための護衛を頼みたい。腕に覚えはあるがAランクの魔物の群を抜けるのは無理だからな。もちろん報酬は多めに出す。俺のポケットマネーとギルドからの特別依頼料だ。殆どはは名誉だがな」
「特異個体のアークタランクトとは戦ったことはない。身の危険を感じれば撤退するぞ。金も名誉も死んでは意味がないからな」
本音を言えば逃げ出したい。しかしバンパ王国が崩壊して魔王との最前線への支援が無くなれば故郷が危険にさらされる。支援はバンパ王国だけではないが嫌われており、大国なバンパ王国だけに莫大な支援という実利で外交をしている。
そして冒険者は貴族や特権階級の子弟なのだから当然ながらその辺りは詳しい。
「すまねぇ。無駄足になるかもしれないが俺の足りない頭じゃこれしか、罪の無い民を守る方法が思い付かなくてな」
「この状況なら英断だろう。ダンジョンマスターがまともな奴なのを願うだけな」
冒険者はプライドが高く選民意識もある。貴族や裕福な家の出身者が多いから当然だろう。だからこそ民を守る側の人間であるという意識もある。
何より戦わず逃げたら恥だ。しかし必要なら逃げて再戦するまでに強くなるのが優れた冒険者だ。
立ち向かったが勝てないから一時撤退は良いが恐怖で逃げたらダメなのだ。その線引は難しいがこの場合は護衛したが現場が無理だったから撤退したと言えばプライドが保たれる。プライドが一番の理由で受けたのだった。故郷は2番目だ。
「何かあるか?」
一応パーティーメンバーに確認を取る。致命的な抜けがあったらまずい案件なのだから当然だ。
「いや、仕方ないし異議はない。魔物が強すぎて隠密行動して戦闘を避けるしかないだろうな」
「もしもの時の護衛だ。正面から突破出来るなら討伐を依頼している」
ギルドマスターも戦闘は回避の方針なら護衛もしやすいだろう。
冒険者ギルドの職員は引退した冒険者や戦闘を選ばなかった貴族の子女が多い。だが冒険者は戦争でも戦力として参加するだけに一国に肩入れして複数国から敵視されれば存続の危機となる。幹部は特に人事異動などで癒着は防いでいる。
「見たところ吸血種でもない。そこまで命を懸ける理由が分からないな」
冒険者ギルドは内政になるべく干渉せず、金で戦力と素材を売るいわば豪商なのだ。冒険者は仕入れ先の小さな商会ともいえる。ギルドマスターは我関せずかせいぜい避難誘導すれば上出来だろう。
「俺は商人の長男だが、魔物から人を助けたくて冒険者になったが長年の間にそんなものは擦り切れていたさ。魔物相手に個人で救える範囲なんて僅かなもんだ。だが人災なら止められるかも知れねぇ。らしくねぇオヤジちょっと若い頃の夢を一瞬見ているだけだ」
本当かは別にして打算よりは協力したい理由だ。
「ならいいさ。後で冒険者ギルドのゴタゴタに巻き込まれるのはゴメンだ」
「止めたら英雄、出来なければスケープゴートにされるのはギルドマスターの俺だ。気にするな」
こうして5人は破壊と殺戮の吹き荒れるバンパ王城に突入するのだった。
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