171話 間話 神々の大会議

 神界?? side

 

 光陣営の女神の太陽神オーと、闇陣営の男神の月神ウーが会談の席を設けた。基本的には最高位の2柱の会談なのだが、お互いに見栄の張り合いで、全員集合している。

 

「最強の勇者が、人間の管理するダンジョンで討たれました。しっかりと管理下におけていますか?」

 

 太陽神オーとしては、唯一最高神を目指しているので責任を押し付けて、足を引っ張るつもりだ。

 

「ダンジョンは混沌のマゼマの管轄だろう?俺は知らん」

 

「それで混沌のマゼマはどこに?今回は全神会議ですよ?」


 厳密には違うが、二柱の会談とは全ての神の集合と同義だ。

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「なんで居ない?」「あいつブチッたのか?」「勇者かよ」「陣営に所属してないとはいえ、やるなぁ」

 

 異世界の神々が集まる中で、混沌神マゼマは来てないらしい。

 

「何もしないなら気にしてなかったが、邪魔するなら警告くらいはしなければな」

 

「警告?どうするつもりですか?混沌のマゼマは信者もいない下級神ですよ?」

 

「あいつの源はダンジョンなのだぞ?ぶっ壊せば嫌でも反応するだろう」

 

 混沌神マゼマに嫌がらせをするらしい。

 

「誰が攻撃するつもりですか?私は嫌ですよ」

 

 太陽神オーは勇者ナナトの召喚に莫大な魔力を消費しているし、格下とはいえ魔王などより遥かに強い神とは戦いたくない。

 

「警告なのだぞ?神自身ではなくダンジョンなら、人間に攻撃させても破壊できる」

 

「あぁ、攻撃の神託を下すのですか」

 

「マジかよ~、魔力の供給源断たれたら死ねるぞ」「一匹狼気取ってるからこんなことになるのよ」「人間とはいえ、総攻撃はされたら辛いな」「勇者が負けたのに、人間に攻略出来るのか?」

 

 下座の神々は基本的に傍観と追随に分かれている。そして雑談する神々が何柱かいる。

 

「そんな生優しいことはしない。ダンジョンに住む大魔法の使い手だが、ステータス魔法に介入している。そんな知識がある可能性がある範囲の人間を残すつもりはない。協力する人間を全ての抹殺し、歴史から抹消する神託だ」

 

「ステータス魔法に介入とは、危険分子にも程がありますね。発見と報告が遅いのではないですか?」

 

「混沌のマゼマが隠していたのだろう。ダンジョン内の探知は不可能だからな」

 

「なるほど、では混沌神マゼマは、協定違反までしていたのですね?」

 

「そうだ。警告はダンジョン破壊と、今後は混沌神マゼマは、我らに従う事も含んでいる」

 

 ここでどちらの陣営に混沌神マゼマを取り込むのかという問題になる。ダンジョンの恩恵は大きく、自陣営の勢力にうまく使えば魔王討伐の力になる。それは神の覇権争いに有利になる。

 

 しかし神の都合では罪人扱い、陣営に取り込んでダンジョンを作らせると、魔力供給も増えるし罰にならない。

 

 さらにはダンジョン神として信仰を集めてしまうと、褒美になるのだ。

 

「全く厄介な事を混沌のマゼマはしてくれますね」

 

「放置するにしても鎖はつけねばならん」

 

「あいつは人間への利益のデカさで、唯一中立派だったのにな」「ただの馬鹿だろ、太陽のオーと月のウーを敵にすれば終わりだな」「何を考えているのやら、年だし死にたくなったのかしら?」「まさかの勝算があるなんてことはないわよね?」

 

「それなら見張りでもつけるつもり?」

 

「お互いの陣営から一柱づつ、それが良かろう?そして共同管理しながら、利益提供と魔力の総量を抑えさせればよかろう?」

 

 月神ウーは落としどころまで、事前に用意していたらしい。そして見事に問題のすり替えに成功している。

 

「それでステータス魔法への介入を、今まで見逃していた件の責任逃れをするつもりかしら?あなたの信者なのですよ?」

 

 月神ウーの問題すり替え作戦はあっさり見抜かれて失敗する。

 

「チッ、勇者召喚で消費した魔力の1割ほど融通しよう」

 

「その程度で許されるとでもお思いで?」

 

 悪あがきで、かなり少ない量で妥協しようとする月神ウーだが太陽神オーに却下される。

 

「こちらの落ち度だけではない。3割だ。負けたのは勇者召喚し管理していた太陽のオーの責任だ」

 

 ここで逆ギレをする月神ウー、とにかく負けたくないらしい。

 

「魔王の討伐がこれほど早くできる天才を、そちら都合で失ったのですよ?管理責任は認めても良いとして、そちらにそれだけの戦力を用意できまして?」

 

 太陽神オーとしても、ここで賠償が少ないと不利になる。異世界転移の消費魔力は莫大であり、なおかつ才能のある勇者候補を見つけるにも、魔力と時間を消費している。

 

 時間に関しては不老不死なのであまり気にしてはいないが、今回の勇者召喚が大赤字なのは間違いない。

 

「なるほど、では探索に消費した魔力相当で3割五分だ」

 

「そこは4割。それならこちらも合わせて神託を出して勇者を殺したダンジョンの破壊に向かわせましょう」

 

「なるほどな、それなら良いだろう4割は魔力を負担しよう。あの大陸の人間全てを持ってしてダンジョンを滅ぼして、混沌のマゼマを引きずりだそう」

 

 月神ウーは自陣営の被害を抑えられるなら追加の五分を負担するらしい。

 

「それで良いかと、では神託は同時に出しましょう。そうすれば人間達も、急ぎの案件と理解するでしょう」

 

 こうしてラスボスがヤバいダンジョンに、大陸中からかき集められた大軍が攻めてくることになったのだった。

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