094話 海くんの全力

 キャー海くんカッコいい!!やっぱり私のために戦う姿はドキドキする優姫です。



 ガトリングガンの猛攻を掻い潜り、ダンジョンの壁や天井がボロボロにされても、海くんは持ち前の身体能力で壁と天井まで利用してゲーヘルに肉薄します。


『クソッここまで避けきるのかよ』


 海くんは、ゲーヘル悪態は無視して、ゲーヘルとのすれ違いざまに、肘鉄をゲーヘルの顎へ真横から打ち込む。そのままゲーヘルの背中の荷物を壁の足場のようにして床スレスレの水平に飛ぶよな勢いで海くんはゲーヘルの後方へ離脱する。


 ゲーヘルは荷物の重さと海くんの攻撃でバランスを崩して前のめりに倒れる。


 海くんはゲーヘルを確認するそぶりもなく、ゲーヘルに捕らわれていた女の子へダッシュして、全く速度を緩めることなく小脇に抱えるとそのままの勢いで角までダッシュする。


 ゲーヘルは起き上がり、顎を打たれたことによる軽い脳震盪から回復した時には海くんは逃げきっていた。


『あの野郎やりやがったな!!やっとの見つけた人間型の女は俺のものだぞ!!』


「やっばい、あれのキモさと海くんのカッコ良さの差が激しすぎる」


「同じ男ですが、ここまで差が出るものなのですね。」


 他の仲間達はあえて?それとも無意識かは別として海くんに見とれてる。


 海くんは半裸の女の子に器用に抱えたまま上着を着せてあげて、ダンジョンのゴブリン集団を見つけて向かって行く。


『ちょうど良い所に居るじゃないか、この子を村の入口まで運んでやれ』


 するとスライム、あれは海くんのペットのうみかな?がゴブリンに身振りで指示を出しながら海くんにポーションを渡す。


『ん?うみか?そういえば前に冒険者に襲われたらこれを落として逃げろって高価な回復ポーション持たせたな。ありがたく受け取っておく。早く逃げろ』


 海くんは受け取り反転してゲーヘルに向かいながらポーションをベルトに付ける。私も高価なポーションはあげてるからね。


「ちょっと!!僕よりうみの方が活躍してる!?」


 サイオンがなんかショック受けてる。


「スライムと思えない知能ですねー♪」


「・・・あのスライム研究したいなぁ」


 ネイはいいとして、エレンティアはマッドな空気出てるよ。


『女をどこにやりやがった?』


『教えるわけないだろ?馬鹿と雑魚ほど吠えるのは本当だな』


『あぁん!?その減らず口ごとぶっ殺してダンジョンマスターとさっきの女のエサにしてやる!!死ね!!』


 ぞわぞわ!「ヤバいキモい頭おかしいでしょ。海くん早く殺して!」「最低です。」「本当に近寄るだけで汚される」「人としてありえないー♪」「大魔法で消し飛ばすべきだったか?」


 海くんの煽りにのってるから海くん的には成功なんだろうけど、どうしてこんな奴が生まれたのか分からないくらい言動が酷いから、早く黙らせて欲しいよ。


 ゲーヘルは村に撃ち込んだ兵器、ドリル式パイルバンカーを2対床にセットして海くんに向けている。そして自身は支柱で支えたガトリングガンを両手で操作している。


『これで終わりだー!!』


 一斉にパイルバンカーのドリルとガトリングガンの弾幕が海くんに襲いかかる。


「パイルバンカーってヤバいでしょ!!」


 私のオタク知識がパイルバンカーは近接最強兵器の一角と訴えている。


『わざわざ使い捨ての弾に手間かけて威力下げるとか無駄だし馬鹿だなぁ』


 なんて呟き、煽りながら海くんはかすり傷こそ受けるものの、パイルバンカーのドリルをやり過ごし、ガトリングガンの弾幕を避けている。


「カイこのままだとじり貧で負けない?無理しないでよ」


 サイオンが心配しています。


「はぁビックリしたー。海くんは大丈夫だよ。ゲーヘルの弾だって無限じゃないはずだよ。金属の弾を飛ばしてるはずだからそのうちただの重い筒になるよ」


 あいつは荷物から弾を補充している。だからゲームとかアニメのように無限に弾があったりはしないはずなのだ。


「弓みたいな武器なんだ!!カイ!そのまま煽って撃ち尽くさせてしまえ」


 またサイオンは海くんに熱中してしまってます。


「どうぞ、ハーブティです。」


「キアリーさんありがと」


 ハーブティで私の無意識な緊張が少し緩んだ気がする。キアリーさんの配慮って凄いね。


 海くんはサバイバルナイフをベルトから抜く。どうやらさっきまでは女の子救出作戦だったみたい。ここからが海くんの本気だね。


 サバイバルナイフは驚くほど高かったけど、DPで新しいのを海くんは買って持ってます。


 かなり強固なイメージで実物を構造まで知っているか、現物があれば再現できるダンジョンは凄いね。


 海くんも二対のガトリングガンの弾幕の完全回避は出来ないけどかすり傷程度でゲーヘルに再び接近することに成功し、喉元へ軍隊仕様のサバイバルナイフが吸い込まれるようにゲーヘルの喉に突き刺さろうとしている。


 ゲーヘルは海くんに反応して。ガトリングガンを既に放棄しており、大口径ハンドガンを海くんに向けて発砲する。ハンドガンの反動による衝撃と海くんがハンドガンの射線から回避したために、サバイバルナイフは喉を外してゲーヘルの肩口に切り傷を軽く付けるにとどまる。


 海くんはそのまま一気に勝負を決めるべくナイフを振り、ゲーヘルはギリギリだが、オリジナルの銃による近接格闘術で持ちこたえている。ガン・カタのような変則的な戦闘スタイルだ。


 サバイバルナイフと銃がぶつかりガキン、ガキンとダンジョンと響かせ、ゲーヘルも負けじと射撃するために、両者がかすり傷を増やしている。


 遠距離から一方的に撃たれる状況から体力か精神力、どちらかが先に切れた方が負ける、そんな戦いに海くんは全力で持ち込むことに成功したと思う。これは海くんが勝ったね。


 海くんにかすり傷とはいえ、攻撃を宛てたのは凄いけど、軍人さんに銃で挑んでも勝てないってことだね。

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