060話 間話 貴族の勘違い
シバル王国貴族 トオイノナンデ家 執事 side
レイナ女王陛下の国民からの人気は高く、ダンジョンの収益は王家の財力を強化し、資金力そして強い権力を活用し更に国力の増強と貴族への圧力を強めている。
最後の砦であった貴族の領内から納める税もダンジョンが出来たことで王家の収入が増えることで、重要度が下がってしまうと予想される。
年々産出量は増えており直轄地の村の税も支払いが始まる。今でこそ少額だが規模の割にはかなり高くなりそうで、まだまだ成長の余地はあるだろう。
いくつかダンジョン産の装備品がオークションに出されたが高額で売れているし、真偽は不明だが王都で販売されている装備はスキル付与品が増えていると言われている。
そんな状況で伯爵家の1つ、トオイノナンデ家の当主ゴルフコースはレイナに気に入られる方法を日夜考えている。
領地を持つそれなりの貴族なのだが、政治は難しくて分からないから部下の役人に任せて、報告だけを聞いている。
ネイ貴族粛清の選別では無能だが仕事を部下に任せられるし、そこまで悪さをしてないため見逃されたのだ。やりすぎるとインテリ層の減りすぎによる国家運営不全に陥る可能性があるからだ。
もちろん賄賂は受け取ったがそれは王家への寄付なので粛清の選別には関係なかったという建前である。実際、賄賂で許された貴族などいないので貴族が自ら財務弱体化しただけである。ネイはそんなに甘くは無かったのだ。
そんなゴルフコース・トオイノナンデは人間関係が良ければ重用され、嫌われたら冷遇されると思っており、そして賄賂は効果があったと思っている。
本人がそうしているからなのだが、彼の評価に能力や倫理観は評価に入っていない。
人間は相手の行動を自らの考えでしか測れない。能力と成果、罪の重さで評価されるなど夢にも思わないのだ。
つまり彼の部下はイエスマンとゴマスリして賄賂を献上する者しかいなかったのだ。それでも部下に口出しをしないで、問題ない範囲で物事を進めていれば良かったのだ。
もちろんイエスマンとゴマスリの部下がアドバイスや忠告をすることはない。そして思い付いてしまったのである。
「レイナ女王は結婚しているが子供がまだいないよな?」
「陛下がご懐妊なされたとは聞いておりません。」
トオイノナンデ家の執事が答える。側に控えて身の回りのことをするし、護衛の意味もあるため常に近くにいるのだ。
「前女王は確かラスボスがヤバいダンジョンにいるのだったな?」
「間違いございません」
「レイナ女王に子供ができなくて、前女王に子供が出来れば王家が割れるし、もし冒険者と子供を作れば面倒なことになるよな?」
執事は、前女王に王位継承権を放棄しているため子に相続されない。法律上は女王の姉で領地のない法衣公爵である。ダンジョンマスターとの交渉役を任命されている。半ば国外追放である。
つまりは、王家が割れるなんて事は起こらないことを知っているが空気を読んで、適切に回答する。もしかしたら減った公爵家の代わりに公爵家となる可能性も高いと思ってたりする。
「ネイ前女王陛下に王位継承権がないので問題にならないはずですが、旦那がごねると問題となるかもしれません」
王位継承権のある王族が全て死ねば王になる可能性がある程度である。
もっとも、レイナの父の兄弟、姉妹にその子達を含めて骨肉の争いに突入する確率が高いと思われる状況になるだろう。それこそ国内の王族の血統が少しでもあればいいと貴族が動き出して、内乱なり政争なり酷い争いが起こるだろう。
彼らは貴族に嫁いでいたり、冒険者や騎士団員、執事や役人をやっているから流石に全て暗殺は無理だろう。
「問題を解決すれば俺はレイナに気に入られるし、辺境伯と入れ替れるな」
「そうでございます」
執事は上手くいないときに責任を押し付ける奴を考え始める。
主を止めるという選択肢は解任される可能性があるため、ありないのだ。すでに問題がないのだから何をしても無意味つまりは、大した害にもならないという予測もある。
「今出来ることは前女王を、殺すことだろ?そうすればトラブルは絶対に起こらないからな」
執事はそれは非常にまずい、さすがに思い止めなくてはと考える。
なぜならネイ元女王は人気が高く、ダンジョンに単身で交渉して王国に貢献した立役者なのだ。しかも継承権はなくとも公爵、法律上も当たり前に王家の親族である。王家への反逆者と見なされればなれば執事も無事では済まない。
しかもレイナ女王と仲の良いと噂の姉である。手を出してから他の貴族達に、伯爵家としてでも執事個人でも、どちらにせよ助けを求めたとして王家に差し出して反逆者を捕まえた功績になる判断されるだろう。これを実行するのは非常にまずい。
王家に消される運命しか思い浮かばない。
「さすがに女王の姉殺しは他の貴族を敵に回しませんか?」
「そうだな、他の貴族から見れば主の姉殺しは蹴落とすネタになるな、そうだこっそり暗殺してレイナ女王にだけ伝えれば問題なく我が次期王になれるだろ?」
相手が格下の商人や領民なら問題ない手法つまりは、お前のライバル消したしお前も消せるぞ、今なら利益があるだろ?味方に付け。と脅すわけだ。
格上、武力でも負けてる相手に使えば良くてパシリ、悪くて皆殺し王家なら格上も格上、法的にも確実に皆殺しである。
他国にバレても王家暗殺した王など信用されない。そんな人間が王になるなんてあり得ない。
しかし止めるよりも空気を読んで忖度した。とりあえず職を失えば生活に困るし、暗殺者をこの主に向けられても困る。
「絶対にばれないなら大丈夫かと思います」
バレたら死あるのみだがバレなければ良いのだ。理想は暗殺失敗し知らぬ存ぜぬで押し通してしまうことだ。公爵自身の護衛が伯爵の手勢しかもバレない範囲で突破出来ないだろう。そんな判断だ。
「そうだろ?よしエマーシュを呼べ」
「かしこまりました」
トオイノナンデ家の裏方担当エマーシュを呼ぶようにメイドに指示をだす。しばらくしてメイドがエマーシュを連れて伯爵の元に戻りノックする。
「エマーシュを連れて来ました」
「早く入れ」
「失礼します」
エマーシュはウサギ獣人で容姿端麗な美人タイプで、ハニートラップや暗殺を稼業にする。裏の人間で、容姿に騙されあの世に行った男は多い、恐ろしい奴である。
胸のサイズはキアリーを超えた経験豊富なエロいウサミミだ。
執事はドアのそばに控え、伯爵の指示を聞くことにする。場合によってはエマーシュを処分も必要なため逃さない位置取りだ。伯爵の命より自分の生活と命が大切なのだ。
「エマーシュ、秘密裏にオバカ陛下を見殺しにしたネイを殺してこい。くれぐれも他の貴族にはバレ無いようにしろ。定期報告を必ず行え、細かい指示は追って出すから、ネイの居るダンジョンを調べろ」
「報酬は相当額をいただきますよ」
「いつもどおりでよいだろ?」
顔には出さないがいいわけないと心中でツッコミを入れる。格下の貴族やら商人などから情報や命を奪うのと同じ値段のはずがない。
「王族殺しはこの国にいられなくなるので最低10倍はないと受けません」
以外に良心的な値段だなと執事は思いつつ断れよと願う。それは、それで無事に解決するからだ。
「10倍は出せん2倍で十分だろ?」
格下相手の後ろ暗い奴を殺すなりする時の倍額で王族を敵に回しませんよと、やはり心の中でツッコミをする。
「20倍の聞き間違いですか?前金で全額支払わないならこの話は受けませんよ」
受けるつもり無さそうだ、これで安心だと執事を胸を撫で下ろす。
「そうかなら、いつもの30倍前金で全額出してやる、成功報酬で更に20倍だ。それでやれ」
ぎょとして顔にでるが、気がつかれてないのでポーカーフェイスに戻る。
「それなら最後の仕事でやりましょう」
長年先代の当主から勤めた伯爵家だが、みかぎる時かもと執事は悩むのであった。封建社会のため他の貴族に仕えるなんて出来ないし、他に執事スキルが役に立つ仕事など領都には無いだろう。
もっとも転職が出来て読み書き計算で、商人の下働きくらいだろう。
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