082話 間話 狂気の復讐者誕生
また少し時間軸が変わります。作風も違いますが数話ほどお付き合い下さい。
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魔王とは人間の国と同等の広さ土地を自身の力によって、支配が出来るほどに、進化した魔物の呼び方である。
その圧倒的な力で同じ種族の魔物を支配し、他の魔物を排除する。
まさに魔物の王国を作り上げる。同じ種族以外で生きられるのは家畜のみである。
そして魔王は増えているが既存の魔王から進化したての魔王が土地を奪うことは難しい。魔王級の強さとはいえ、更に進化を重ねた個体も存在する。なにより簡単に奪える土地を狙うのは自然の摂理だ。
結果として弱い存在の住まう場所、魔王を持たない魔物が跋扈する土地か、人間の土地を奪うことになる。
そして魔王としては最弱候補で、新参者であるコボルトの魔王が誕生した。
当然、弱い相手として人里へ侵攻を行った。人々は国家こそ維持出来たが多くの土地と人命、村々を失いなんとか城砦都市で地の利を活用して、コボルトと拮抗するのが限界だった。
そんな中で滅ぼされた村から一人の人間の少年が生き残った。少年の名はゲーヘル。そしてコボルトと魔物に復讐心を燃やしている。
そんなことはありふれたことのはずだった。
しかしゲーヘルは才能がないためにステータス値も低く、スキルも増やせない。
強く成れず復讐は不可能だった。実際にほとんどの者は冒険者ランクで言うなら、Cランクの強さの壁を越えられない。せいぜい集団戦闘で並ぶ兵士である。しかし国家は専守防衛の予定であり、コボルトの魔王へ復讐も村の奪還も、一兵卒には不可能だ。
望みを叶えるには普通の努力では手に入らないレベルのステータスとスキルがどうしても必要なのだ。この世界のステータスは残酷であり、どれほどあがいても才能の限界は超えられない。
それでも家族と育った村を目の前で破壊され尽くし奪われたゲーヘルは諦められない。ゲーヘルには諦めないという才能があった。
ゲーヘルは道を踏み外す決断を下した。なぜなら神々の与えるステータスでは復讐など不可能だからだ。ステータスを諦めたゲーヘルが実行に移したのは新たな武器の開発であった。地球ならば普通だろうがこの世界では禁忌とされる新技術の発明である。
家族や故郷などに迷惑をかけられないと多くは思いとどまるだろう。しかし全てを失ったゲーヘルは助けなかった神を、もう信じていないし迷惑をかける故郷も家族も友人、知人も全て失っていた。
最初は激しく燃える粉を使い火で攻撃しようと調合を繰り返した。そして調合バランスで爆発を起こした。
ゲーヘルは爆発に復讐の成功を見いだした。
爆弾を作ったが自らの安全が確保出来なくて使い勝手が悪かった。投げるにしてもステータスが低く遠くに投げられない。そして近づかれるとステータスが低く負けるのだ。
ゲーヘルは爆発で石が空を飛ぶ様子を様子を見ていて、コントロールして吹き飛ばし、ぶつけて攻撃することを思い付いた。
それは錬金術士として、生計を立てていたゲーヘルには精度の高い金属加工を可能とした。
試行錯誤の末に、銃と似た武器となり威力を求めて大口径化し、魔法と融合させてゲーヘルにステータスを大きく超えた力をもたらした。
その頃になると光陣営の教会もゲーヘルが禁忌を犯していることに気がついた。説得などしない。神への反逆者として武器もゲーヘルも抹殺しようと兵を差し向けた。
しかし遅かった。完成された銃の前に兵は皆殺しにされた。ゲーヘルにとってはもはや同族の人間は復讐を邪魔する敵だった。
しかしこれにより光陣営の人間社会はゲーヘルを異端として排除した。
復讐に燃えるゲーヘルは孤独になった。それは更なる狂気をもたらした。
この頃ゲーヘルはステータスとスキルを失った。神への信仰心を完全に持っていないからだ。
しかし予見していたゲーヘルは武器と対策を大量に完成させていた。
ゲーヘルは一人でコボルトをステータスを失っていながら殺し続けた。ついにはコボルトの魔王を殺した。残ったコボルトも殺して殺して、殺し尽くした。
それでもゲーヘルは終われなかった。人の本能が死を恐れたのか、村人だった精神が耐えられず変容したのかは分からない。
次にゲーヘルの攻撃は邪魔をし、ゲーヘルを排除した人々に向けられた。
最弱とはいえ魔王は魔王である。冒険者の最強Sランクでさえ単独で倒すのは難しく、万全の状態ででパーティーが必要なのだ。コボルトをほぼ絶滅させたゲーヘルはまさにワンマンアーミーと化していた
ゲーヘルの強さは武器込みなら、Sランクを超え勇者に匹敵していた。その力で人々と戦争となった。コボルトに国力を奪われていた祖国をゲーヘルは滅ぼした。
そして太陽神オー教会がゲーヘルを危険視し、光陣営が全力で襲い掛かった。
教会の聖騎士は対魔物用にスキル構成をしている。そのために多くの国に要請し、軍で勝負を挑んだ。国家の騎士は対人用のスキルを構成しており、闇陣営との戦争経験もある。
さすがに全力の物量にゲーヘルは敗北した。
普通ならばここで殺されて、技術も存在も破壊され歴史からも完全に消し去れるだろう。
プライドなどないゲーヘルは敗北を悟ると逃走したのだ。逃げに徹して彼は更なる武力を求めた。
そしてゲーヘルは人の形をした魔王と変わらない存在となってしまった。
もしコボルトの魔王から、逃げ延びた時にゲーヘルに優しくした者がいれば、家族が共に生きていれば、ゲーヘルはここまで狂わなかっただろう。
ステータスが伸びるという才能があればまっとうに闘っただろう。
武器を作る才能がなければ、諦めない才能がなければこんな結果はなかった。しかしゲーヘルは発明家として、才能があってしまった。
狂気に捕らわれ敗北という挫折はゲーヘルの心と精神を更に蝕んでいった。
他人を思いやる心を破壊してしまった。復讐はいつしか全てを力で奪うという欲望に変わってしまった。
ありふれた村人だった少年は狂気に捕らわれた復讐者として生きとし生きる物の敵となった。
欲望を満たすために、生きるために村を襲い全てを奪い殺しすなりすき放題する。その後は軍が派遣される前に逃げる。という生き方をしていた。それは最悪の盗賊と同じである。
ゲーヘルはそれに気付かず今日も破壊と殺戮を人間にも魔物にもばら撒く事を繰り返している。
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