199話 いつかのバトル再び? 2

 立ってるだけなのに、めちゃカッコいい海くんのに惚れ直してる優姫だよ。

 

 

「これでファーレンは大幅に戦力低下と損害を受けました。スキルによっては肉壁くらいしか出来なくなりました。」

 

「おおー海くん強い!!でもなんで大剣があんなに粉々になったのかな?」

 

「それは分かりません。」

 

「カイは狙ってやったみたいだけど、さっぱり分からないよ」

 

 ※低温脆性・・・低温になると硬くなる(硬度が上がる)が、靭性が損なわれて、脆くなる現象。海くんの氷により冷却されたために、金属特有の靭性を失い衝撃で砕けた。

 

 ※靭性・・・素材の粘り強さ。砕けにくさ。そんな感じである。

 

「分からないけど海くんは凄いね」

 

 ファーレンの大きな両刃の剣に纏わり付いていた氷は水に戻ると海くんの右斜め前の定位置で静止する。

 

『デバフ魔法を受けてこれかよ?魔法だけでこの厄介さに高い身体能力とあの女の子が使った攻撃もあるんだろ?しかも手加減されてるしな』

 

『ファーレン相手に赤子の手をひねるようにあしらうとは想定外じゃな』

 

 海くんは特に気にしないで、答えることもなく佇んでいる。

 

『スピードで勝るにもあの反応速度を超えるのは難しいだろう。なら正面から力押しだが、不定形な水をどうするか、だな』

 

 Aランクパーティーが海くん攻略を話し合うけど、それまだ魔法だよ?その後に回避と銃撃の猛攻を受けると思うよ?

 

『飽和攻撃しかないだろ?いくらなんでも、同時に全員は対処出来ないだろうさ』

 

 海くんはミレーナの連続転移攻撃も避けて反撃するし、ガトリング砲も普通に避けるよ?

 

『そうじゃな。全力で援護するのじゃ。シャドウランス!!』

 

 海くんの影が実体化して、槍になり何本も海くんに襲いかかる。

 

 海くんの真後ろの水球が素早く反応して、螺旋回転する龍のような水の合間を縫って入り込む。そして縦横無尽に動き回り、影の槍を海くんに当たるところだけを、氷に変化させて防御する。

 

『暗黒連続弾!!シャドウランス!!ウィンドカッター!!これはどうじゃ?』

 

「影魔法は足元から高速で連続攻撃出来るし、威力も高いから強い魔法なんだよ。MP消費も多いけどコストパーフォーマンスは凄くいいよ。問題はデバフしかない闇魔法からの派生なことかな。回復魔法目指して光魔法を覚える人が多いから闇魔法は無効化されやすいから滅多に使い手はいないよ。ヴィシリアの切り札だろうね」

 

 エレンティアが解説してくれる。風魔法も見えないしヴィシリア以外に狡い戦闘スタイルだね。

 

 海くんは、そんな連続攻撃にも後ろの水球で余裕らしく、暗黒弾には氷の珠をぶつけて止めるし、シャドウランスには一部凍らせて受け止める。ウィンドカッターには氷の盾を作り受け流す。

 

 ヴィシリアの猛攻にも海くんは、焦ることもなく平然と対応する。

 

 ヴィシリアの魔法に対処してるところに、深淵の光と海くんに近いファーレンが、予備の短剣を装備して突撃する。

 

 ファーレンにまたしても、海くんの水球が襲いかかる。そして踏み込んだ足元、それも必要最小限のみツルツルの氷が出来る。

 

 2メートル50センチの巨体はツルツルの氷により、見事にすっ転び、顔面を地面に強打する。そして何事も無かったかのように無くなる氷である。

 

「痛ってぇ〜、どんなトラップだよ?」

 

 立ち上がろうと手を地面につくと、そこだけやっぱりツルツル氷が出来て手は滑り、何故か顔面を地面に強打する。まるで独りでコケてるよ?的に融けて氷は無くなる。

 

「完全に遊んでやがる。一発殴らないと気が済まん!!」

 

 今度はスクワットの要領で立ち上がるために勢いよく、身体を丸めようとして、当然ながらツルツル氷が準備されて、派手に回転して顔面着地を決める。

 

 さすがに耐えきれず転げ回るファーレンは半泣きになってる。

 

『痛ってぇ〜(¯―¯٥)鼻が、鼻がぁ、見ろまるで俺がピエロのようだ』

 

「コミカルですが、これ狙って出来るものなのでしょうか?」

 

 キアリーさん海くんの何を見てきたのさ?

 

「絶対に狙ってるよ!!海くん遊びには全力だからね」

 

 ファーレンは半ば諦めて仰向けに寝転がる。すると海くんの操る水球が、その程度?雑魚なの?早くかかってこいよ。とボディランゲージ??スライム式会話?をファーレンにする。

 

『クソッタレ!!ここまでナメられて終われるかぁ!!』

 

 海くんの挑発に立ち上がろうと・・・やめとけばいいのにしてしまう。あれ?立ち上がれる?と思った瞬間に氷に絶妙な膝カックンを受けると、後方に半回転して顔面それも鼻からきっちり地面に叩きつけられる。

 

 受け身を取られないように、今度は手足を拘束してる念の入れようで、顔面逆立ちで静止する。

 

「海くん、酷いよ。もうファーレンは立ち上がったらダメだって、アハハハ」

 

「なんというか、プライドの高い冒険には死ぬよりも辛いかもしれません。くふふふ。」

 

 あーあキアリーさんも、堪えきれないみたいだよ。

 

 ファーレンが動き出すと氷の枷は外れて開放される。

 

『テメェー!!許さんぞ!!』

 

 しかしながら海くんは悠然と螺旋回転する水の中に立っており、ヴィシリアや深淵の光の猛攻を防いでいる。なのに再び水球が、ほらぁ来いよ。とファーレンを煽る。

 

 またしても立ち上がろうとして、少し悩むファーレン。どうやら立ち上がれるビジョンがないらしい。

 

 そろりと立ち上がろうとしたら、何どもなく立ち上がれる。水球は、トロいなぁ。待ちくたびれたと反応する。

 

『うがーー!!これでもくらえや!!』

 

 予備の短剣を水球に向けて振り下ろすファーレンに対して、水球は何事もなく切り裂かる。でも液体なのでノーダメージで、なんかした?とさらにファーレンを煽る。

 

『今すぐブッ殺すぞ!』

 

 今度は切り上げをしようとして、足元がツルツル氷になり、おもっいきり踏み込んでいたので、すっ飛ぶように転けて顔面逆立ちで滑るファーレン。

 

 静止して力なく崩れ落ちる。



『ちょっと待て!?ファーレン!!何やってんの!?(笑)』


『もうヤダ』


『諦めんなよ!!』

 

 ファーレンのプライドと心は、海くんにバッキバキに折られたようだ。公衆の面前でこれは耐えきれないらしかった。

 

「えっとドンマイかな」

 

「カイ様は悪魔ですか?」

 

「すっごい魔法のコントロール!!教えてもらわないとだよ」

 

 感想は、それぞれ違うけど海くんの敵ではなかったらしい。

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