157話 間話 理解不能
歪曲魔族 side
魔族と呼ばれるのは外見は人族と同じである。違いは特殊な能力をもち、子供に遺伝する場合に魔族と呼ぶのだ。
有名なのは傭兵の歪曲魔族、夢に干渉する睡魔族とかで魔族自体があまり多くはない。ほとんど獣人族だったり、エルフとかドワーフみたいに微妙に身体特徴もある事が多いからだ。
歪曲魔族は身体近くの空間を僅かであれど歪曲させる。これによりありえない軌道の飛び道具や斬撃を繰り出せるし、もちろん回避も有利になる。ちょっと変わった空間歪曲という特技を活用して戦闘で稼ぐのが歪曲魔族だ。
そんな歪曲魔族は6年前に歪曲魔族は族長が変わった。傭兵稼業なのだから族長には血統より強さが求められる。そして新族長のミレーナの強さは突出してる。たかが500人の歪曲魔族にとっては血統も何も遡ればみな親族だ。
ミレーナは空間転移を可能としている。これによりミレーナの斬撃は空間を超えるための遠距離攻撃となる。防御面に至ってはそもそも命中すらさせない。当たらなければ平気だ。その能力は歪曲魔族を超越している。
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「ねぇ、ねぇ、ひまだね〜」
「暇なのはミレーナ姫様だけですよ」
ミレーナは黒髪に紅い目で、ロリ体型だが24歳になる。そして答えたのは世話係で初老のナイスガイなゼーストだ。傭兵稼業とはいえ四六時中戦う事は無い。そんな事すれば見も心も保たない。今は思い思い街で散財している事だろう。
「えー、殺し合いしようぜ」
ゼーストは眉間に手をやりつつ大げさに答える。
「ミレーナ姫様が戦闘狂なのは良くないですが、仕方ないとして、強すぎるんですよ」
「えー、つまんないー」
発言は子供っぽいがその雰囲気は凶悪な肉食獣が襲いかかる直前よりも、恐ろしい殺気を感じさせる。
仲間の歪曲魔族さえ恐れさせ、族長や傭兵団の団長と呼ばれてきた先代までと違い姫様と呼ばれる。
「魔王と激戦を繰り広げたばかりではないですか?まだ怪我も癒えてないでしょう?」
「まぁね、でもSランクの冒険者にはがっかりだぜ!弱すぎーキャハハハ、おかげでオーガの魔王と遊べたけどな」
「タイマン勝負で魔王相手に引き分けとか、どんな人外ですか?」
ゼーストは慣れたものだがミレーナの感性は独特だ。人としては狂っているだろう。殺し合いは遊び、強い相手も楽しいが一方的に蹂躪するのも遊びだ。
「こんな人外だってば!それにしてもあの痛みは痺れたぜ!たまらん!キャハハハッ、ってイテテ!おーゾクゾクする〜」
「戦闘狂なSかと思えば、今度はMですか?拷問でも受けます?」
「えー殺せるのに我慢するのはヤーだー!そうだ!!ゼーストめっちゃ強い奴に拷問してもらおうぜ!!あーワクワクするな♪ゼーストも一緒な」
「老体に何させるつもりですか?ミレーナ姫様と違ってノーマルですから拷問はいりません」
「ちぇー、ひとりで楽しもうっと、あのSランクじゃあ殺しちまうな。もっと強いやついないの?」
「魔王と単騎で引き分けるのは勇者か伝説の大賢者くらいなのではないですか?」
「どっちも死んでるな!仕方ない魔王に拷問されるかぁ?」
「苗床にされるのですか?」
「なんだって~!?生娘を魔王は犯すのか、くぅ~初めてはやっぱり人族に限るな!!」
「なんでそこに拘るのですか?もう理解不能ですよ」
「だって未通だぜ、ほら強いオスに無理やり捧げさせられるとかたまらんだろ?それがブッサイクな魔物とかないわー。殺しちゃいそうだぜ」
ゼーストはまたしても眉間をほぐす。理解不能な感性と分かってても意味不明過ぎる。なにこの会話してるけど通じない感じ、内心はそうなっているのだろう。だいたい魔王を、そんな理由であっさり殺すなよという話である。簡単に殺せたら世界が、救われるのだ。
「ならあの時にオーガの魔王を殺してて下さいよ」
「たぶん殺れたな!でもオーガ強すぎてみんな殺されかけてたからなぁ〜。お互いに生きてたらまた遊べるし、この結果はありだつたろ?」
ミレーナは頭はおかしいが仲間思いだ。オーガの魔王の首より歪曲魔族の命を確かに選んだ。
「遊べるのは我々がですか?それとも魔王とですか?」
「へっ?決まってるだろ!魔王とだよ。みんな弱っちいからつまんないだろ?」
どうやら魔王を生かせば再戦できるから殺さなかったらしい。戦闘狂の考えることは意味不明だ。本当に仲間思いなのだろうか?
「楽しそうに稽古つけてません?」
「何言ってんの?分かってないなー、稽古はミレーナは強いから楽しいぜ!みんなは弱いからつまんないだろ?」
どうやら戦闘狂的には弱いと戦いは面白くないらしい。でも弱い者いじめは楽しい。本当に理解がおよばない存在だ。
「なんなんですか、あぁ、今日言うの忘れてましたけど次の仕事はダンジョンの攻略と破壊ですよ」
「はぁ〜!なんでだよ。くぅ~オーガの魔王殺しとくんだったぜ。それは惜しいことしたな、キャハハハ、でどこのダンジョンぶっ壊すのさ?」
「シバル王国のラスボスがヤバいダンジョンです」
「ホォー!ラスボスがヤバいのか!やる気がムラムラ湧くぜ。な、早く遊びに行こうぜ」
「昨日も言いましたよ。やる気があるなら忘れないで下さいよ」
「ヒャッハー!ラスボスは触手か?それともドラゴン?やっぱり触手に無理やりとか、たまらん」
「さっき、魔物では嫌とか言ってませんでした?」
「触手はオスじゃないからノーカンな!」
「生娘じゃなくなるでしょ?」
「ミレーナがノーカンにしたから大丈夫、大丈夫」
「もう好きにして下さいよ」
「当たり前だー!好きに生きる女それがミレーナだからな」
「はいはい、遠いですからまだ暫くは休暇ですよ」
「また街道で狩りでもして商人から巻き上げないとな」
「なんで素直に盗賊退治の人助けって言えないんですか?」
「そんな事してないからだぜ、キャハハハ」
「シバル王国の特急戦力は大地もろとも軍隊を消し飛ばすらしいですから、シバル王国内では大人しくしてくださいよ」
「マジかよ~。仕事が終わったら手合せしないとだな。大人しくするぜ」
ゼーストも明日も大人しくしろと言うことになるだろなときっと思いつつ適当に話しを合わせるのだった。
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