158話 閑話 噂の真実

 エレンティア side

 

 

 ダンジョンを保護しているのはシバル王国なのは間違いない。けれど力関係は逆転している。大賢者がいるからじゃなくてゲキヤバの魔物軍団が居るからだ。

 

 私もあの魔物牧場の中に放り込まれたらダンジョン崩壊覚悟、自分の魔法で自滅覚悟して新型大魔法で消し飛ばすしかない。それも一撃で全滅は難しいかもしれない。とにかく国より強力な戦力があるわけだ。

 

 それでも戦争に魔物は使えない。だから私が派遣された時の事を夢に見てるなという明晰夢だ。きっと今日は久しぶりにカイと寝たから睡眠をしっかりとれてるのだろう。

 

 いつもなら夢見る暇があれば魔法研究するけど、今はカイとの事を夢見て、カイの腕の中なのだからもう少しこうしてようと思う。

 

 あの時はカイと一緒に二人っきりで出かけられて嬉しかった。道案内がいたけど、カイ様最高って感じでちゃんと空気読めてたから問題はない。女の子だったしね。

 

 私とカイは夕方まで待って敵の陣地を見下ろせる山に来た。かなり遠くて敵兵も米粒程度しか見えない。

 

「ねぇねぇ、消し飛ばしてさ楽しもうよ」

 

 野外はまた違っていいものだ。カイにも知って貰わないともったいない。

 

「今日はダメだろ。敵陣に近すぎる」 

 

 カイは銃構えなが正論を言う。次の日の晩は楽しい夜だったな。

 

「それじゃ新型大魔法の初実戦いくよ」

 

「待て、確実に命令系統を破壊するぞ」

 

 夢で見ても恐怖・・・この後を知ってるだけにもう怖い。

 

「ん?いいけど、どうするの?普通の魔法は届かないよ」

 

「消音だけは頼むな」

 

 カイはアンチマテリアルライフルで狙撃体勢に入る。

 

「いくらなんでもあんな米粒みたいな、動いてる人には当たらないよ」

 

 そう言って確認のため望遠スキルと風魔法で防音を発動する。あぁ望遠スキルは辞めとけば良かったと後悔したよ。

 

「たったの2500メートルだろ?当たれば殺せる」


 ドパァン、ドパァン、ドパァン、カイはアンチマテリアルライフルをわりと連射する。

 

 サイレンサーは静かにするのではなく、射撃方向を音で分かりにくくするのが主な目的ため、音量はそこまで小さくならない。音量は魔法で半径10メートルくらいから外は遮断している。

 

「うげぇ、気持ち悪い」

 

 敵の指揮官や参謀、部隊長などの高官つまりは貴族達の頭がはじけ飛び周囲の人間が肉片を浴びる。そして首なし貴族の身体は一瞬なにもないかのように動くが首の付け根から血を吹き出し倒れる。

 

 兵士達は理解が及ばずパニック状態に陥る。そして制御しようとする隊長各や情報を集める高官を見つけて狙撃していくとパニック状態が加速する。

 

 それが敵軍全体で起こっている。

 

「これってさカイ一人で勝てるよね?」

 

「ん?指揮系統の確実な破壊は有利になるからな。ついでに大魔法で証拠隠滅と変な噂にすることで信憑性を大魔法も含めて下げるのさ」

 

「あー情報を隠すのね」

 

 生き残りは帰って報告するけど、貴族の頭がはじけ飛びました。その後大爆発して軍勢が消し飛びました。

 

 報告される方は意味分かんないね。現地を調べて吹き飛んでるから大魔法は信じても頭がはじけ飛ぶのは意味不明、頭がはじけ飛ぶのと大魔法を考えると真実が分からなくなる。良く考えてるなぁ。

 

「大魔法いけるか?」

 

「ごめん無理!吐く!気持ち悪いって!!軍の仕事もしたけどここまでグロいのは始めて、オロロロ」

 

「ならもう少し射撃してるか」

 

 ドパァン、ドパァン、カイは躊躇うことなく引き金を引く。そして地獄絵図が拡大していく。

 

「イヤ、やっぱり消し飛ばすよ」

 

 その方が私の精神衛生上も敵兵もマシだろう。どうせ死ぬならあっさり即死の方が楽だろうし。逃げて生き残ると絶対にトラウマになって生きにくいだろうし。遠くにいる私が半ばトラウマになってるし。いや、視えるスキル使ったからだけどさ。

 

 夢で、攻撃した側でこれくらいだし、きっと間近で見たら気持ち悪い。

 

 衝撃波対策に先ずは土魔法を利用して密閉空間を作る。除き窓は、あるけど大魔法が発動したら閉める。今は目測用に開けてあるだけだ。

 

 そして大魔法は一撃デカイのではなく同時に5発撃ち込むなぜなら衝撃波は距離が離れると急速に威力が下がるからこの方が消費が少なく威力が高い。その分制御が難しいけど馴れてるし余裕かな。

 

 5発の大魔法が発動する直前に小窓を塞ぐ。それに合わせてカイが氷を使いシェルターを強化する。一拍置いて凄まじい揺れが襲って来る。私はカイに抱き止められながら納まるのを待つ。数分して静かになり、念の為もう5分ほど待機してシェルターを解除する。

 

 そこには5つのクレーター状の更地と周囲には吹き飛ばされ破壊された敵軍の残骸、そして高温により発火した火災が発生している。

 

「ここまでキレイさっぱりすると再開発もやりやすそうだな」

 

「自分でやっといてなんだけどさ、そういう問題じゃないよね?街道も森も無くなってるしさ、あれだけの人間が死んだら幽霊が出そうだし」

 

「幽霊?いるのか?見たことないけど?」

 

 カイは本当に恐怖とか、トラウマとかそういうと無縁だよね。

 

「いるかより怖いかどうかなんだけど?」

 

「それは理解出来ないからな。ここは放置だし気にするな」

 

「そうする、後トラウマにならないようにカイと遊ぶからね!」

 

 このあと案内の女の子を放置して夜空の下で男女の営みを愉しみました。

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