100話 間話 エルフの男爵
ジャス・パー side
バンパ王国のエルフからバンパ王家とシバル王家それぞれから独立しようと声をかけられていた。
そして私はラスボスがヤバいダンジョンのダンジョンマスターが同族なのを利用してシバル王国から利権を奪おうと考えていた。ダンジョンの財源を使いエルフの再興をするのだ。
しかし送り込んだ同族の冒険者とネイ様の話を聞いて、間違いに気が付いた。
ダンジョンマスターの少女が無理をして、王家からの立場を悪くしてまで、もしくは無理難題を聞き入れてまで、我々を魔物から守ろうとしてくれている。
ネイ元女王陛下を動かし、レイナ女王陛下を納得させることなど我々には武力がないし出来ない。その上に、生き別れた両親とも会えないと言うではないか。
会えないのもシバル王家から我々に肩入れさせないための条件だろう。
私も娘がいる身だ。独立し娘を王妃にする予定だったが、それほどの覚悟を決めた少女を裏切り、我が娘を優先など出来ない。何より独立したエルフ王国の王妃よりも、魔物からの安全性はダンジョン内が上だろう。
私の残りの人生をかけてダンジョンマスターと両親を再会させてあげようと思っている。
もちろんバンパ王国のエルフには断りを入れて連絡を絶つと言ってやった。
※ジャス・パー男爵の見解です。優姫ちゃんは複雑怪奇な政治に参加させられるのが嫌です。何よりエルフとしては、家族としても同族としても、意識が低いのでそこまで興味がありません。ネイの交渉術により誘導されています。
ネイ元女王陛下の会談から10日ほどで受け入れの土地が用意出来たと連絡を受けダンジョンのトンネルから新天地へと資材を運搬しながら向かっている。
「わぁお父様!おっきくて立派です」
我が娘ながらエロく聞こえる危うい発言だ。
「ああ、門を作り守りを固めてくれるとは聞いていたが、これほどとはな」
装飾こそされていないが、大型の馬車が余裕ですれ違える、トンネルを完全に塞ぐ銀色に輝く金属製の門がある。
これは優姫ちゃんがダンジョンメニューから金属を探してミスリルは高いので、ゲーヘルが作り出してたステンレス鋼板で作り、開閉をタイマー式にして放置した門である。今はカッコつけて閉めている。
門が我々の目の前でゆっくりと開く。かなりの厚さがあり並みの攻撃なら突破出来ないだろう。
「皆の者!!我々の同胞が見守ってくれているぞ!恥じない姿を幼き同胞に見せて安心させようではないか!」
「「「「エルフに栄光あれ!」」」」
リモー帝国の時代より続くエルフの返答を受け新天地に足を踏み入れる。
辺り一面のブルーベリーの苗木が植わっている。
「これなら3年もあれば今の収入を十分超えられる」
「はいお父様の言うとおり素晴らしい光景です。ダンジョンマスターには、頭が上がりませんね」
カサカサっと音がする。
「男爵!!黒光りカサカサ悪魔とガーデンバードが大量にいます!!他の魔物がいるかもしれませんお気を付けください!!」
部下が報告をしてくれるが思い当たるふしがある。エレンティアという冒険者がこっそり食糧を準備していると言っていた。
「ガーデンバードは食糧だろう。そして黒光りカサカサ悪魔がガーデンバードのエサじゃないか?」
「お父様、そうかもしれませんがなぜ魔物を放してあるのでしょう?」
「5年の免税期間をダンジョンマスターが勝ち取ってくれていた。直接食糧を提供すればエルフに肩入れしすぎとシバル王家からストップがかけられるか免税を得られないかもしれん。しかしこの方法なら、魔物を放っただけ、ガーデンバードを上手く使えば食糧になり黒光りカサカサ悪魔がガーデンバードのエサになる。そしてシバル王家には、食糧提供をしていないと言い張れるだろう」
「なるほど、幼いのに私より頭が良いかもしれませんね」
「なに、ゆっくり勉強すれば大丈夫だ」
これは完全な間違いである。ブルーベリーも木も食べる黒光りカサカサ悪魔は害虫というよりは災害といえるほど食いつくすのだが、優姫ちゃんはダンジョン内の食物連鎖の最底辺なので数が増えるがすぐ死ぬ殺せる程度の認識である。
そしてネイがいろいろと考えて交渉した結果の優姫ちゃんの好感度を上げる作戦の成果である。
「これだけのブルーベリーを守って育てるには全く人手が足りないと思います。お父様はどうするつもりですか?」
「少々無理をしてテント暮らしを長くしてでも移住を早めるしかなかろう。幸い仕事と食糧は困らないからな」
「そうですね。早く私達の生活を安定させなければダンジョンマスターと会うための交渉が出来ないと、第一陣を早めてお父様と私も来ましたから、もっとたくさんのエルフを呼びましょう」
こうしてエルフの入植は急ピッチで進められることになった。
ダンジョン側は受け入れノウハウとDPを得て、シバル王家は入植のトラブルなどの予測、対策などの遷都に向けた実験と優姫ちゃんへの手土産に使われているのが、エルフ族など思い付きもしないのだった。
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