133話 閑話 劇薬からの評価

 キアリー side


 

 正直なところ男爵の元メイド見習いなのでシバル王国王の侍女副長つまり王家に仕えるメイドのナンバー2の方に指示なんて出せません。

 

 元より技量も気遣いも足元にも及びません。しかもダンジョン内ではメイド仕事の大半はカイ様とDPでユウキ様が解決していましたから、メイド仕事が少なかったというのもあります。

 

 なので私はダンジョン内では、メイドよりも料理人兼配膳係が正しいでしょう。そんな私に出発してからずっとイチイチ指示を仰がないで下さい。ユウキ様の必要とすることやタイミングが分からない言うのに準備してあって、私に確認してからなのに持っていくタイミングが完璧でした。

 

 つまり、完全にタイミングと必要な物を把握してます。私に聞くのは私のプライドを傷つけないためとと念の為の確認のはずです。

 

 他のメイド達もレベルが高く、私では足元に及びません。なら私のする事は1つしかありません。


 早いタイミングがベストだと思うので、最初の馬車が止まるタイミング、昼食休憩中にエルザ侍女副長のもとに向かいます。

 

「エルザ様、差出がましいお願いなのですが、私は他国の男爵家で数年見習いメイドをしたことしかありません。なので短い期間ですが私にメイドとしての技量を教えていただけませんか?」

 

「ユウキ様は、貴女の働きと技量に満足しているのでしょう?我々は主人の手伝いが仕事なのです。過剰な技量は主人のためになりません。何より主人が我々の仕事の基準なのです」

 

 思ったより深いお言葉をいただけました。確かにユウキ様はメイドとしてよりも、料理人としてや友人を求めています。

 

「確かにユウキ様の身の回りだけであれば今の私が適切だと思います。しかし、ユウキ様はダンジョンマスターとして国家と渡り合えます。その時のメイドとして技量不足なのです。今の私には国王陛下や大貴族のおもてなしは荷が重すぎます。私の技量不足でユウキ様の足を引っ張るわけにはいきません。どうかお願いいたします。」

 

「なるほど、メイドとしての最低限の心得があるのなら合格です。時間がないので厳しいですよ」

 

「もとより無理なお願いをしている身なのです。覚悟の上です。」

 

「キアリーさん!キアリーさん!あっいたいた!メイドさんとか騎士さんが近くにいっぱいいるけど、私はどうしたらいいの?」

 

 どうやらユウキ様は慣れない人数に囲まれて困っていたようです。

 

「護衛は近衛騎士団なのですぐには無理ですが、メイドは下げましょうか?」

 

 侍女副長のエルザ様が素早く答えます。

 

「えっと、エルザさん?エルザ様?エルザ様かな、そうじゃなくて、あの・・・私がどうすれば良いのかが分からなくて」

 

「エルザとお呼び下さい。私達はユウキ様のお手伝いをさせていただけています。なのでユウキ様は自由にして下さいませ」

 

「!?キアリーさんマジデスカ?私は平民?農民?村民?のしかもエルフの子供だよね・・・」

 

「ユウキ様はダンジョンマスターですので、望めば貴族にも成れると思います。今回は貴族としてバンパ王国に向かっていると思って問題無いと思います。」

 

「侯爵くらいなら、シバル王国でもバンパ王国でも今すぐ貰えます。結婚すれば公爵も簡単に手に入るお立場です」

 

 エルザ様が私のフォローをして下さります。

 

「貴族かぁ。贅沢もDPで十分だし、なんか政治とかやだしいらないや。ネイに丸投げが1番だね。やっぱり全部バンパ王国が悪いという事だよね?」

 

 ユウキ様は言葉足らずですが、おそらく、貴族の仕事が嫌なのでダンジョンマスターで十分と思っています。


 最低限の政治的な仕事はネイ様に全面的にお任せする。そして今貴族として仕事をしてるのはバンパ王国がユウキ様を呼び出したせいなので、この乗り気じゃない仕事をしてるのはバンパ王国が悪いということでしょう。

 

 長い付き合いなのでユウキ様の考えはある程度分かります。この場合、バンパ王国の評価を上げても私達に得はありませんね。しかし下げすぎると帰るとか、ぶっ壊してしまえとか言いそうです。

 

「バンパ王国が呼び出したので安全のためにも我慢して下さい。私は宮仕えの侍女副長に教えを請えるのでありがたいです。」

 

 侍女副長は素早くユウキ様の会話からフェードアウトします。立ち位置は変わっていませんが気配が自然と消えています。本当に敵いません。

 

「そっかぁ。キアリーさんにレイナ女王陛下とか偽物ぽい宰相に会うときのお手伝いは大変だったよね?ごめんね、全部バンパ王国が悪いという事にしておこうよ。エルザさん、私からもキアリーさんの事よろしくお願いします」

 

 あーバンパ王国の印象はすでに底どころか、もうマイナスでどんどん深掘してますね。

 

「主人として部下への素晴らしい気遣いです。私などまだまだ勉強中ですが、ユウキ様とキアリーのために微力ながら尽力いたします」

 

 ユウキ様を褒めて、出来ると確約しない当たりは私が不確定要素だからでしょう。エルザ様は上手いですね。

 

「ありがとうございます。キアリーさんは部下じゃなくて、家族で先生みたいな存在だと思ってます」

 

 ユウキ様は、家族は最優先の存在で大切にする。仲間や友達は2番目、知り合いは3番目、死んでも苦しんでも興味のない人、そして滅ぼすべき敵、と段階的に接し方を変えます。

 

 バンパ王国は興味無いから適当に追い返すくらいなんでしょう。今回は敵認定すると猛攻撃をカイ様に頼みそうですね。

 

「それは失礼しました。キアリー様の望みも最大限叶えられるように努力いたしましょう」

 

「なんだか無理言ったみたいでごめんなさい。えっと、これからも宜しくお願いします」

 

「はい、短い間ですが宜しくお願いいたします」

 

 ユウキ様??これ私がしごかれるのでは?明らかにエルザ様のやる気が増えてますよ。望んでますけど、頭にリンゴ乗せてカイ様の超長距離連続射撃でリ頭上のンゴを粉砕するくらい怖い目にあいませんか・・・?あれは二度としたくありません。

 

 まぁメイド仕事で死にはしないですし、期間限定で終わりのある地獄のシゴキなら頑張って耐えましょう。

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