132話 間話 劇薬の旅立ち
ミュウニー side
馬車をネイ様仕様からダンジョンマスター仕様にグレードアップして、隊列にはダミー馬車に荷馬車、護衛用馬車など準備しました。
レイナ女王陛下の馬車よりもお金かかってるので、本当に国賓待遇ですよ。
最終確認をしながら、ユウキ様を待ちます。
護衛はまさかの近衛騎士団の副団長とその部下がやります。
たぶん副団長は私よりも強いですね。他の騎士なら条件次第で勝ち目はありそうです。シバル王国の本気度が現れてます。
真っ向勝負ならカイ様に騎士達は勝てないと思うので、私も居れば防諜と護衛の意味は薄いのですが、使節団として体裁があるので仕方ないですね。
貴族はいません。もしダンジョンマスターの逆鱗に触れたら御家諸共消し飛ばされますからね。付いてくる勇気が無いのでしょう。
いえ、水没の方が正しいですね。それでもダンジョンマスターに媚を売るチャンスなので贈り物はたくさん届いてます。
中には荷馬車を贈って来る気が利いた者までいました。内装にしれっと家紋があるあたりやりますね。
他にも食料、燃料、キャンプ用品、宝飾品など実用的な物が多かったですね。
武具がないのはダンジョンマスターの作ったチートソードには勝負にならないからでしょう。あれがあれば誰でもAランク、それなり以上のMPがあればSランクになれます。しかも攻撃よりも防御重視なので半ば防具とも言えます。
そんな物を作れるダンジョンマスターにどんな武具を贈っても役に立たないのを理解しているのでしょう。
私の仕事はカイ様とユウキ様のハニートラップへの防御と防諜、キアリーさんとシバル王国から派遣されたメイド達と一緒にメイド仕事もしながら、使節団全体の調整です。
護衛や行者、メイド何よりユウキ様達の要望が上手く噛み合うことなんてないと予想されるので、調整役は重要な仕事です。
あれ?私忙しすぎません?肉盾兼雑用係でエマーシュがいますが、見習いですからそこまで役に立たないでしょうしね。
そんな考え事をしながら、待っているとユウキ様がカイ様、キアリーさん、サイオンさん、お見送りのネイ公爵閣下とやって来ました。
「お待ちしておりました。今回のバンパ王国への移動中の仕切り役を担当します。ウレナイ商会の支部長ミュウニーです。よろしくお願い致します」
「道中の護衛隊の隊長を致します近衛騎士副団長アンドレです。よろしくお願いします」
「身の回りのお世話を担当させていただきます、シバル王国侍女副長のエルザです。よろしくお願い致します。」
「ん!?なんだか馬車多くない?というかみんな偉過ぎじゃない?人も多いよね!?」
ユウキ様がテンパってます。
「シバル王国の運命が掛かった使節団ですからこのくらいは当然です。本来なら貴族もついて行くのでもっと大掛かりですよ」
ネイ元女王陛下がフォローして下さります。
「ソウナンダネ。え~と、ダンジョンマスターの優姫です。こちらこそよろしくお願いします。彼がダンジョンのラスボスで海くん、護衛のサイオンとメイドのキアリーさんです」
わざわざユウキ様が紹介してくれました。
「ユウキ様くれぐれも変な条件で妥協しないで下さいね。接待されても優しくされても騙されないで下さい」
ネイ元女王陛下が念押しをしています。
「バンパ王国は嫌いだし妥協なんてしないよ。こう見えても交渉はやったことあるんだよ」
ユウキ様はドヤ顔してますがかえって不安になります。
「言質はまだなんとかなりますがサインはどうにもならないですから、とにかく頼みますよ。お酒飲んだら書いちゃダメですよ」
お酒はユウキ様弱い・・・いえ、一口でカイ様に絡んで返り討ちで遊ばれて、カイ様以外の人が話しかければ、ウルサイ、ドイテ、ダマレ、しか言わないし、近寄れば暴れてカイ様に抱き付くし、サインなんて貰えないでしょう。ある意味最強にお酒に強いですね。
勝手に呑んだ時の事を思い出すと、ユウキ様にお酒を呑ませるのは悪手でしょう。
逆にユウキ様がどんどん注ぐお酒飲んでも、全く酔う様子のないカイ様はお酒に強すぎです。
「はーい、気を付けます。サインはシラフでします」
「相手は百戦錬磨の商人や貴族と年から年中、交渉や政争をやってるプロですから、まともに話しても勝てないですからね」
「変な約束はしないから大丈夫だよ。困ったら海くんに助けて貰うよ」
それは余計にヤバいのでは?カイ様って基本武力で解決しますよね?
「カイ様は最後の奥の手です!!簡単に使わないで下さいよ」
そういう問題なんですか?決死で守ってもバンパ王国から逃げて帰ってくる自信は有りませんよ。
「大丈夫、大丈夫、サインさえしなければ負けないよね?」
「言質も不味いのですよ。分かってますか?」
「なんとかするよ。最悪逃げて帰って来るよ」
マジで!?逃げるって無理ですよね?カイ様が協力してもバンパ王国の王都からシバル王国は遠い、遠すぎるですよ。
「無理しないで逃げてくれば反撃できますから意地にならないで下さいよ」
覚悟を決めて捨て石になるしかないかなぁ。表向きは民間人で、ウレナイ商会の所属なんだけど関係ないだろなぁ。
「ダンジョンマスターって本当にチートだよね。サブコアを持ち出せばダンジョン内と同じことができるんだから、いざとなれば魔物を盾にするよ」
「分かりました。本当にシバル王国の未来を頼みますよ」
「任せて!解決してくるよ」
あーバンパ王国ご愁傷さま、複数のAランクの魔物を相手にしてボロボロになるやつだ。カイ様よりもユウキ様の方が怖いかもです。
こうして私の覚悟は一瞬で無駄になり、馬車に乗り込むとバンパ王国に向けて出発するのでした。
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