134話 閑話 劇薬の輸送

 サイオン side


 

 街がボロボロだ。アシ宰相を追い返すためにユウキがやったことだけど、ヘヴィアーマーアークタランクトに破壊された街は復興がまだ終わってない。

 

 街を守る城壁は大きく崩されて修繕工事をするにも、瓦礫の除去、歪んだ壁の除去、そして材料の手配、組み直しと手間だろう。もとの強度にするのは簡単では無いから手つかずになってる。

 

 たぶん作り直す方が楽じゃないかな?そして街中も破壊の爪痕が残っている。オマケに帰りの転送間際にヘヴィアーマーアークタランクトの奴が公爵邸に城壁?家?の瓦礫を投げつけてて破壊されてる。これが短時間でしかも1匹の魔物で引き起こされたのだから恐ろしい。

 

 魔法なら無効化出来るから負けないけど、ヘヴィアーマーアークタランクトは僕には相性が悪すぎる。

 

 遅いといってもAランクならかなり、という話で一般人が簡単に逃げられるほどは遅くはない。

 

 そして今日はこの街に宿泊するんだけど、ヤバくない?だってユウキが元凶だよ?ビビられるならいいけど復讐とかいって暗殺されない?

 

 本来なら時間調整してお昼ごはん時から夕食までに着くのにまだ早い時間すぎる。もちろん接待予定があるとか仲が良い貴族なら早く来て長く滞在したりするよ。

 

 スルーするのかな?でも公爵の領都だから通過は出来ないよね?通過するために公爵と話し合いとかするのだろうけど長くなりそう。そのためにこの時間に到着だろうしね。

 

「軽めのワインとチーズお願い」

 

「かしこまりました。御二人分でよろしいですか?」

 

 ユウキより僕の方が旅にもメイドが仕える事に慣れてるし、そんな護衛の僕にメイド達も初日こそ戸惑ってたけど、今ではメイドをしてくれてる。吸血種の皇族だからいいよね?

 

「いいよ、カイ良かったよね?」

 

「いいけど、すぐに街に入るのだろ?」

 

「早くてもお昼ご飯までは待機だよ、もしかしら拠らないで先を急ぐかもだしね」

 

「なるほど、行程が遅れすぎてるらしいしありえるな」

 

「だから待ち時間で呑もうよ」

 

「そうだな。優姫は寝てるし、キアリーはしごかれて御臨終だしな」

 

「確かにキアリーは頑張ってるね。立派なメイドに成れるよ。僕はここで寝れるユウキにビックリだよ」

 

「昨日、池で水遊びして疲れたんだろ?」

 

「僕とカイは泳いだけど、ユウキはカナヅチより酷かったじゃん。キラーフィッシュがいない水辺なんて珍しいから泳いだことないのは分かるけどさ。カイは上手過ぎじゃない?」

 

「装備したまま池で泳ぐよりは簡単だろ?」

 

「お待たせしました。ワインとチーズです」

 

 メイドは銀のコップにワインを注いでくれ、チーズが綺麗に盛り付けられた銀のお皿を馬車に備え付けられたテーブルに置く。

 

 銀なのは毒で色が変わるから、でもカイは全ての毒で色なんて変わらないだろ?って言ってたから変わらないのもあるつまり意味ない。僕の記憶にも暗殺に毒使われるってあるし、銀食器で分からない毒もあるよね。

 

「ありがとう、装備したままって・・・普通に沈むよね?それにしても自分で破壊した街のそばでお昼寝はすごいよね」

 

「よほど荷物が重くなければ大丈夫だぞ。浮く装備なら逆に楽になるしな。まっ優姫なんだし当たり前だろ?むしろ何か面白い事を起こしてくれれば良いんだけどな」

 

「私達は面白いけど、メイドと近衛騎士達はやつれてるよ。人生楽しめないなんてもったいないよ」

 

 少し思い出すと、通りのすがりのシバル王国の町で雑貨店に入り浸り何も買わなかったり、道中で魔物を見かけて『女は突貫』とか叫んで突撃して転けたり、メイドの手伝いをしようとして、ひっくり返して仕事増やしたり、かと思えば、寝てて貴族が来ても起きなかったり、泳ごうとして『女は突貫』と言って池に走って着く前に転び、水に沈み、死にかけたのにまた池に入り沈む。意地でチャレンジしまくるも全く泳げないどころか沈む。

 

 まだまだあるけど、ユウキは自由過ぎて本当に見てて飽きない。

 

「1番面白かったのは何も持ってないのに沈むやつだな。何も持ってないのにバタつて即沈むっておかしいだろ」

 

「確かにユウキはちゃんと水着だったしね。チャンポン!バタバタ!!ブクブク!シーン・・・だったもんね、周りのメイドと騎士が焦ってて余計に面白かったよ。すぐに助けたカイはカッコ良かったよ」

 

 人目があるからべったりしてはいけないし、いつも通りでいないとね。正妻はユウキだし、僕がやり過ぎるとトラブルになるよ。

 

 メイド達はユウキが寝てる方が安心だろうけどね。

 

「泳げないのは分かってたからな。まさか即沈むとは予想外だったけどな」

 

「溺れるのは知ってても、越えてくるユウキには敵わないや」

 

「優姫自身も泳げないのは分かってるはずなんだけどな」

 

「溺れると知っててあの入水は出来ないなぁ。僕はどうだった?」

 

「綺麗に泳いでて上手かったな」

 

「えへへ~、ありがと」

 

 綺麗だって!やったね。

 

「失礼します。街の復興と公爵邸の破損でおもてなしは難しいとのことなので出発します。ワインはお下げしましょうか?」

 

 一番偉いメイドがやって来たけど思ったより早かったね。

 

「そうだね、昼食が食べられなくなりそうだし下げてよ」

 

「かしこまりました」

 

 まだまだ旅は続くのでした。

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