089話 間話 エマーシュの仕事

 エマーシュ side

 

 

「エレンティアという女エルフの冒険者をネイ様とユウキ様、カイ様が会いたいそうなので話をつけてきなさい」

 

 ミュウニー様が裏社外の上司として命令してきます。

 

 マフィアからマフィアの顔をした、国家の犬にジョブチェンジした私には、この命令に逆らえない。

 

「断られたらどうするの?」

 

「必ず早く話をつけなさい。急ぎの命令です。失敗は許されません。ユウキ様が会えるようにする命令を受けている。連れてくるだけの簡単な仕事だから早く行け!」

 

 やべぇ虎の尾を踏む前に行かないと、折檻されるやつだ。

 

「分かりました。すぐさまネイ様とユウキ様、カイ様に会う約束を取り付けます。他に注意事項はありますか?」

 

「ネイ様達は最優先でお会いになりますから、なるべく早く会えるようにしなさい。場所はウレナイ商会の応接室分かりましたね?」

 

「はい!最速でウレナイ商会の応接室にエレンティアという女冒険者を連れて来ます」

 

「よろしい」

 

 内容の復唱が出来なくて何度、折檻されたことか、万が一の間違いを無くすためと話をしっかり聞いているかの確認らしいです。鋼鉄の掟、国家の犬らしい決まりですよ。折檻も私の防御力を突破してくる恐ろしさ、思い出しただけでもチビリそうな気がする。

 

 冒険者ギルドに行くと職員が慌てています。そして明かに所在なさげにしている、エルフの女の子を見つけます。

 

 真っ直ぐに向かい交渉といきましょう。

 

「こんにちは、あなたがエレンティアさんで合ってるかしら?」

 

「ええ、私がエレンティアよ、貴女は?」

 

「私はエマーシュ、ウレナイ商会のウレナイ会長からネイ元女王陛下と、ダンジョンマスターが貴女に会いたいそうだからすぐ呼んで来るように頼まれたのよ」

 

「えー、なんでこのタイミングなのよ。こんな目立ち方はしたくなかったのになぁ」

 

 なんで微妙に乗り気じゃないのよ。来ないと私が怒られるのよ。元女王陛下の命令なんだから従いなさいよ。

 

「今すぐ、貴女にお会いに成りたいそうです。来て下さい」

 

「ちょっと今すぐなの?ダンジョンマスターに手紙を届ける依頼を受けてるから会うのはいいけど、今は冒険者ギルドから、ここで待つように言われてるわ」

 

 めんどくさいわね。ウレナイ会長&ネイ元女王陛下とユウキ様の権力はこの村じゃ絶大なのよ。たぶんユウキ様が望むことに逆らえる人って居ないと思うわ。なにせカイ様もセットで敵になるはずなんだし。

 

「分かりました。冒険者ギルドと話をつけて来るから待っててよ」

 

「マジ?はぁ、それほどの権力者とか面倒ね」

 

 小さい頃から冒険者なら権力者くらい会ったことあるでしょ。冒険者ギルドの指示を簡単にひっくり返せる権力者は少ないでしょうけどね。私もネイ元女王陛下と豪商の会長とダンジョンマスターの揃い踏みは、緊張するから気持ちは分かるわ。

 

 冒険者ギルドの受付で、エレンティアを連れ去る許可を貰いにいきましょうか。

 

「こんにちは、ちょっといいかしら?」

 

「今はダンジョンに追い剥ぎが出て、しかもそいつが凶悪な背信者なので入れませんし、依頼処理も停止中ですよ」

 

「そうじゃないのよ。ウレナイ商会のウレナイ会長からお使い頼まれたのよ。エレンティアという冒険者にネイ元女王陛下とダンジョンマスターが今から会いたいから、今すぐ連れて来て欲しいって」

 

「分かりました!!ちょっとお待ち下さい。上司に相談してまいります!!」

 

 さすがにこの村のビッグネーム、豪商のトップに元女王陛下に、ダンジョン環境の支配者の前に冒険者ギルドの受付嬢じゃどうにもならないわね。実際にはラスボスのカイ様もいるけど、言わない方が上手く行くでしょ。

 

 この命令を無視できるのは、レイナ女王陛下くらいかしら?そんな事を考えつつ待ってると受付嬢がダッシュで戻って来る。

 

「お待たせしました。すみませんギルドマスターが同席してもよろしいでしょうか?」

 

 エレンティアしか言われてないわ。ギルドマスターが同席したら遅くなりそうだし、いらない人を連れて来たら怒られそうね。

 

「私では判断がつかないからネイ元女王陛下とウレナイ会長にギルドマスターが同席したいって伝えるわ。エレンティアは連れて行ってもいいかしら?」

 

 これくらいが妥当でしょ?これ以上は権力者の機嫌を損ねるわよ。ギルドマスターと村長はネイ様に会えるのだからいいじゃない。

 

 だいたいユウキ様って面倒くさい事になると、なにするか分からないわよ。あのタイプは後先考えないけど、即決力と行動力はあるのよ。

 

 そしてダンジョンマスターなんだから何してくるかなんて予想もつかないわ。触る神に祟りなし、呼ばれない限り近寄らないが正解だと思うわ。

 

 エマーシュは優姫ちゃんをしっかり観察している。

 

「分かりました。伝言をよろしいお願いします。エレンティアは村から出なければ問題ありません。ギルドマスターが同席出来るなら、呼びに来てもらえますか?」

 

「呼びに来るくらいやるわ。もういいわね?」

 

「お待たせして申し訳ございませんでした。もう大丈夫です」

 

 さぁエレンティアを拉致るわよ。

 

 待ってるエレンティアに声をかける。

 

「許可を貰って来たわ。村から出なければ問題ないって、さぁウレナイ商会に行くわよ」

 

「げぇ早いなぁ、仕方ない行くわ。用事が何か知ってる?」

 

 ユウキ様達の用事なんて知りたくも無いわよ。無茶苦茶な仕事振られたり、知りすぎて殺されたらどうするのよ。本当に何するか分からない人の相手なんて務まるわけ無いでしょうが!!

 

「さぁ?たまたま店にいて、お使いを冒険者として、頼まれただけだから知らないわ」

 

「まぁ行けばわかるか、ねぇエマーシュさんも一緒に居てよ」

 

「絶対に嫌よ。長生きしたいもの」

 

「はぁ、そんな権力者相手はやだなー」

 

「ほらしゃきしゃき歩きなさい。引き摺っていくわよ」

 

「分かった分かった、行きますよ」

 

 私はこうして無事に仕事をやりとげました。

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