190話 間話 逆侵攻
ダンジョン討伐連合軍総司令部 side
ダンジョン討伐連合軍は一枚岩なわけではない。各国の軍や、闇陣営と光陣営など、滅多に協力することのない軍隊の寄せ集めなのだ。
個人的な出世欲や責任の押し付け合い、各国の利害などなどが絡みあい複雑怪奇な、政治の舞台が司令部となっている。
最高司令官、最高責任者、総司令、大将軍、総統、元帥、こんな役職がそれぞれ複数人はいて、副官や参謀なんて掃いて捨てるほどいる。
それでも前線の指揮官は、優秀な者を送り込んでいる。それは、相手が想定外に強く進めないからだ。
そんな指揮能力のない形だけの司令部に、緊急事態の報告がもたらされる。
「ダンジョン攻略の最前部隊が壊滅しました!!敵が今回は敵が多くゴブリンに蹂躙さたとのことです!!」
「なぜゴブリンごときに蹂躙されたのだ?」「ゴブリンの数はどのくらいだ?」「生存者の救助は可能か?」「進化した個体がいたのか?」「何がどうなっている?」
彼らとて貴族なので、教養はあるのだが命令系統や階級が何も整備されておらず、議長すら選べないから纏まりがない。ざわざわと会議にすらならない状態が続いていると、続報がやって来る。
「ゴブリンの軍団がダンジョンより出現し、我軍を強襲しております!!」
「何事だ!?」「蹴散らせ」「ここは安全なのか?」「敵の規模は?」「なぜ襲撃を許した」「早く逃げるぞ」「打って出るぞ」「ゴブリンなど恐れるに足らん」「元帥閣下どうしますか?」
司令部はそれぞれが個別に確認やら命令を下す。それはさらなる混乱を招くだけだった。
「ヒャホー、ミレーナだぞ!ここでぶっ殺しまくれば、ほめて貰える気がする!!キャハハハ」
物理的にもミレーナが司令部に乱入したことで、混乱し収拾がつかない。
ミレーナは好きに暴れろとしか優姫ちゃんに言われてないので、なんか派手な奴を殺しに来た、なんて理由だ。
「超総統殿下!!傷はあさいですぞ!」「統合司令本部司令長官様!退避しましょう」「超大元帥提督?首と胴が離れておりますが、大丈夫ですか?」「あわわわ、あいつを殺せぇ」
頭悪い小学生が考えたような役職名だが、それなりの国力がある王族が見栄や、他国へのマウントとして、被らない名称を捻り出した結果である。
そんな変な役職名の持ち主は当然服装でもマウント合戦をしており、ミレーナに優先的に狙われて殺されている。
「戦列が崩壊しました!!ご指示を!!」
いくら現場の指揮官が優秀でも、その上司が意思決定を行えず、また全体を統合していないためバラバラに攻める、守る、後退する、逃走する、とバラバラで軍隊という組織を維持した集団行動が出来ていない。
「キャハハハ!!お前なんかムカつくから死んじゃえ!!キャハハハ」
そして何とか現状を改善すべく送り込まれた伝令はミレーナに優先的に殺されている。
対する
歴戦の傭兵が指揮官だと、ここまで効率的に戦えるのだ。
「キャハハハ、ほらほらもっと遊ぼうぜ」
ミレーナを倒すには魔王を討伐する戦力が最低でも必要であり、烏合の衆とかしたダンジョン攻略軍には不可能である。
「金か?名誉?領地か?何でもやるぞ」「悪夢だそうに違いない」「太陽神オーよ我を救い給え」「なぜこんなことに」「神よ・・・」
彼らは大半が軍人では無く政治家だ。だからこの惨劇に上手く対処出来ない。
「キャハハハ、ミレーナは愛しの彼の愛が欲しいぞ!!そのためにはみんな死んでくれよな」
ミレーナの感性はだいぶズレてるので、交渉は現実的ではない。そもそも気分屋なので約束も守らない可能性が高い。
言うことを素直に受け入れて約束を守るのは海くんの為だけである。優姫ちゃんやサイオンの指示を破ると海くんに嫌われるからそして怒られるから受け入れるのである。
怒られたくて命令違反もしそうだが、直感的に従うべきかくらいは判断出来ている。
「キャハハハ、ミレーナから逃げても無駄無駄無駄!!」
空間を歪曲させるミレーナの前には距離など無いに等しく、司令部が殲滅するのは時間の問題だろう。
「エクス将軍が討死されました!!」「ナセル王国軍が撤退を勝手に開始しております!!」「ワルト傭兵団が物資を強奪し逃走しております!!」
次々と戦況を叫びながら司令部に来る伝令も、残虐な非道な現場に大急ぎで現場に戻り直属の上司に報告をしようとする。
「キャハハハ、五月蝿いぞ!せっかくの悲鳴が聞こえないじゃないか、キャハハハ、お前死ねよ」
ミレーナはノリノリで殺戮の限りを尽くし、ダンジョン攻略連合軍が奇襲うけたことによる混乱からの回復を、遅らせて致命的な打撃を与えたのであった。
「キャハハハハ、そろそろミレーナのMPが無くなるぞ、逃げるか?あっ!!お前やっとこキャハハハハご褒美ゲットだぜ」
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