153話 閑話 大賢者の変化
エレンティア side
カイと離れて自覚したけれど、前世は記憶でしかない。
魔法と知識の記憶は最高の財産で、男としての記憶は彼を悦ばさせられるのに役立つ程度の価値でしかない。
前世は女の事を考えてなかったな。と思うし、カイは気が利く上に優しいけど、追いかけないといけない自由人だから女を夢中にさせるとも思う。
それは心地よいし、魔法の研究とメリハリが付いて素晴らしいバランスだと思う。
すぐそこに居るなら魔法の研究をずっとしていても平気だけど居ないとなると寂しかった。会えるのに会わないのと会えなくて会わないのは全く違った。
褒めて貰おうと新型の大魔法を使ったら、予想を上回る威力にびびったし危ないと怒られると思ったけど、褒められて改善案も考えてくれた。
デカいのを一撃よりも、同時に複数発動させた方が少ない魔力で効果的に破壊できる。これは大発見だ。注意事項は密閉空間の外側から内側へ攻撃力が低いこと、逆に密閉空間内で使用すると自爆することかな。
新型の大魔法は熱よりも圧力?で攻撃するらしく、サーモバリック爆弾というカイの知ってる兵器に近いらしい。
水が瞬間的に蒸発すると急激に膨張するので空気の動ける速度を超えて押しのける。すると圧力が跳ね上がり衝撃波となり襲いかかる。衝撃波は眼や鼓膜、皮膚にダメージが入りやすく、高圧なら内臓すら破壊する。
防ぐには離れて圧力が下がる殺傷範囲から抜け出すか、密閉空間に逃げ込むしかない。密閉空間内も強度が低いと圧力で潰されるか、爆心地に近すぎると、水蒸気の熱で蒸し焼きになるかもだけどね。
衝撃波は音速??音の速さを超えているらしく、当然ながらSランクの冒険者でも走って逃げられいよね。
カイの使ってた普通の爆弾(手榴弾)は金属片を爆風で飛ばして殺傷範囲を広げてるから、ただの壁で防げる可能性が高いらしい。
あの新型大魔法の殺傷範囲は私達もギリギリ入っていたらしく、海水とか空気中の水分とか氷とかを利用してあの手この手で上空に圧力を逃したり、距離を増して防御したらしい。
今の課題は防御魔法の開発だ。自分の大魔法に耐える防御魔法と、その突破方法を考える。単純だけど新しい手法で弱点を知り対策を考える。
カイとユウキのいた世界ではこうした、戦争の為の研究開発で、とんでもない武器や探知技術を生み出したと言っていた。
少なくとも新型の大魔法よりも強い武器や見えない場所も攻撃する方法、音より速く飛んで移動しながら戦う乗り物に、海の深くに潜み奇襲攻撃する船、どこにいても場所を正確に把握して、会話する方法もあるらしい。どんな戦争してる修羅の世界なんだろ。
荷物や兵士は馬車より速く沢山乗せられる乗り物で移動する。兵糧は長持ちさせるように加工し大量に準備する。
これらはより強くなり、相手に勝つための技術だ。兵糧攻め対策も焦土作戦対策もされている。
空から監視と攻撃で先制攻撃をして破壊し反撃をさせない。軍隊は組織化され、命令系統は明確化され、統率されている。
個人の戦闘は剣や槍は銃に駆逐された。銃は連射することで一発2必要なコストを下げつつ大火力にする。軍は分散し隠れ一発の超大火力攻撃に巻き込まれにくくする。
分厚い装甲を乗り物につけて身を守る。
弾幕を張り相手に攻撃をさせない。奇襲攻撃で一気に殲滅する。
カイはそんな戦闘スタイルが得意と言っていた。
そりゃ勝てないはすだ。戦争となれば集まり集団で移動して食べ物は現地調達、武器は剣と槍、弓に魔法だ。
銃だけ装備した子供と老人だけでもこの世界の軍隊に勝てるだろう。
強い武器は、少ない訓練で誰でも使え大量に安く作れる物だ。
この設計思想は正しいと思う。私の目指すところはそういう装備と魔法を生み出すこと。その研究をすれば技術が進歩して魔法の深淵に近づける。
殺し合いが腕を磨くのに一番なように、技術もまた殺し合いが一番進歩させる。急がば回れ不老不死も目前だし、強くて損はない。
大魔法とて、近接戦闘それもスピード特化されれば、放つ前に、やられる。
とにかく課題は多くてやりたい事がどんどん増えている。時間はいくらあってもきっと不老不死でも足りない。
とにかく知りたい、調べたい、試したい。まるで飢えた獣の様だ。飲めば飲むほど喉が渇く海水を飲んでいるという方が近いかな?
褒められたくて、知的欲求を満たしたくて、寝る間も食べる間も惜しんで私は魔法と向き合う。集中力が無くなったらカイを探しに行く。本当に充実した毎日だよ。
困るのはカイは気まぐれだから遊んでくれなかったり、そもそも他の女の子に占領されてる事が多いことだ。
こんな時に前世の記憶は役に立つ。そして大賢者として、自由に振る舞い好き放題してたけど、女の子達は、影で話し合いとか調整とか、蹴落とし合いとかしてたんだろうな。
まぁ私は、研究がメインだしちょっとお邪魔してるから末席でも気にしない。怒られなくて、ムダなトラブルさえ無ければ、それでいい。だって序列争いとかトラブルとか研究時間が減るだけでしょ?
さて今日はカイはどこにいるのかな??こうして3徹夜して私は癒やしを求めてさまようのです。
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