154話 閑話 忙しいだけが大変ではない
レイナ side
負け戦の危機は去ったけども、ダンジョンマスターのユウキがやらかした後片付けは、誰かがしなければならない。
オマケに轟音と共に現れたキノコ雲は火山の爆発的噴火が起こったかと錯覚させるほどで、これまたダンジョンの戦力の魔法使いの仕業で、いつでも貸し出すと通知された。
後片付けはダンジョンマスターのユウキに任せたいけど、任せたら絶対に戦争になる。勝つだろうけど魔物と魔法で破壊しつくして消し飛ばした土地に旨みはなく、魔王の領域と接触する場所が増えれば、防衛負担も増える。今は良くても将来的に制圧した民が反乱予備軍となるのだから、経済的に得はない。
あのダンジョンマスターがそんな事を考えて、交渉する姿が思い浮かばない。きっとバンパ王国と同じ事を繰り返すだろう。下手すれば全て蹂躪しかねない。最悪無人にして奪い取り、領土には違いないとか言いそうだ。
「これほどの力があるのですから彼女の意見を尊重し、我々はダンジョンマスターのサポートに徹するべきではないですか!」
「政治は苦手な様子、しかも我々に任せると言っているのだ。再び包囲網が形成されないよう、手を打つ手伝いをしてもらうだけだ」
「安寧を望んでいるのに戦禍に巻き込み、見放されればシバル王国が滅ぼされますぞ」
「それこそ後顧の憂いを断つためだ。なんの問題もないはずだ。味方に怯えるとは信用してない証拠だ!!」
「ダンジョンマスターはすでに自立出来る力がある。シバル王国が提供出来る利益がコストを上回るなら損切りされて当然でしょう」
目の前の会議では、ダンジョンマスターの戦力で領土拡大を狙う野心家の主戦派、現状で満足している和平派で別れている。和平派はダンジョンマスターの力を恐ている貴族も参加しており、多数派だ。
今回は多数派が優勢そうだし、会議の結果を追認で良いだろう。いかに王の強権で押し通せるとはいえ無茶をしすぎれば人心は離れる。官僚としての貴族は必須なのだから、彼らの意思も無視をしすぎれば王家が崩壊する。
税を集めるのも、治安を維持するのも、手足となり命令を実行するのも役人であり貴族がなる官僚だ。全てを王たった一人ではこなせない。
「得た領土からの権益を提供するなり前金を出すなりすれば問題なかろう?」
「バンパ王国から平和条約と、我々に経費請求権を認めさせ、ダンジョンのへの不可侵だけで満足したダンジョンマスターが金や権益に興味がありますかな?必要ならいくらでもバンパ王国から引き出せたのですぞ?」
大国の首都それも中枢を一晩で制圧し、正統なる血統という切り札もあるのだから、その気になれば強国のバンパ王国を完全支配は容易く出来た。
ネイいわくダンジョンマスターの力があれば、お金で手に入らない物や高価な物も簡単に手に入るらしいく、ダンジョン内は、ダンジョンマスターの完全に支配下に魔物さえ置いている。今更お金も権力もいらないわけだ。
権力や権益を担保している根幹は武力だ。どれだけ金があろうと、地位が高くても殺されては意味がない。貴族も王家も他者を武力で征服した者の子孫であり、長年戦闘力で維持してきたのだ。
冒険者を多く排出するのは貴族であり、冒険者が主戦力なのだから当然である。
たとえ今は権威しかなくとも、金で買った貴族の地位と権力があろうとも、根幹は武力。これは揺るがない。
全ては武力で奪えるし破壊も出来る。法とて武力行使すると守らなければ、武力(警察力)で罰を与えるから守られる。
ダンジョンマスターは圧倒的な武力と絶対的な安全が確保出来ている。我国としては逆らうのは自殺行為、仲良くするどころか、気に入られる努力をしなければならないだろう。
国家において戦争は外交の手段だが、国力も消耗する。やり過ぎれば国力が下がり、不満は溜まる。
国家とて長く続けば、権力の腐敗と現実と支配手法のズレ、武力と支配者とのズレが起こり権力で抑えきれなくなり国家は崩壊する。きっかけが外部から攻められるか内乱かその違いだけ。
シバル王国は、兄のオバカのおかげで膿は出し切ったが、同時に政治経験豊かな長期的視点をもつ貴族も減っている。短期的利益を追求しすぎれば癌を呼び込み、無駄に太り、国家の寿命を縮める。
この会議が不満を出して、私に聞かせられるということで内乱より討論を選ばせるためであり、貴族に長期的視点を持った者を見つけ重用するためにも役立つ。
とはいえ、目の前の会議は子供か?と問いたい。言葉こそ大人だが意見を曲げず同じ事を言い合うだけで、まったく進んでいない。ぶっちゃけ暇で無意味だ。これはしんどい。
変な方向でまとまっても、私の意見に大半の貴族は迎合して決まるし、終わるまでもうしばらく眺めるしかなさそうだ。
結論はどうせ凄まじい武力を持つ、ダンジョンマスターには尻尾を振るしかないのだから。
問題はダンジョンマスターが喜ぶ贈り物や、欲しい物がさっぱり分からないから尻尾を振りたくても振れないことなんだけど、分かってる貴族はいないのかな?
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