080話 間話 大賢者レントの歴史なんて適当
1日かけて出すもの出しきった賢者モードの大賢者レントは皇帝から勅命を受けすぐさま戦場に向けて旅立った。賢者モードはもって1日だろう。大賢者だが魔法以外は賢者ではないのだ。
準備も事前に済ませ連絡だけして即刻送り出す。リモー帝国の大賢者レントへの恐怖が現れた対応である。
旅費も帝国持ちであるし護衛には数少ない女性騎士が生け贄として同行する。
数日あれば全員大賢者レントの手込めにされるだろう。大賢者レントの女になりたくて騎士になる女性も多いので問題はないのである。問題があっても大半は帝国がなんとかしてしまうから望む方が幸せなのは間違いない。
ちなみに馬車は全速力で飛ばして行者と馬を駅伝方式で交代さながら24時間かっ飛ばしている。その馬車で手込めにするのだ。
振動を魔法で軽減させるのは大賢者のMPの無駄使いであろう。だが大賢者レントは真剣である。
もともと平民の大賢者レントは、真面目で酒は屋敷に帰るまで断つし自国内でしか女は抱かないのだ。戦場の大賢者レントしか知らなければかなりモテるのだ。知ったら知ったで金の力と精力でモテるのだ。
そして大賢者レントは任務最初の戦場に降り立った。ターゲットは軍団ではなく兵が出陣した空っぽの城塞都市だ。
「先ずは1つ目」
大賢者レントは詠唱も魔法名も唱えずターゲットを確認だけして大魔法を起動させる。当然、無詠唱のスキルは持っているからだ。
街を囲う城壁も大地も家も兵士以外の人々も平等にズドーンという体に響く爆音と大爆発で瓦礫の山に変わった。
賢者殺しは魔法使いではなく近接戦闘を得意としたSランクの冒険者でそのタフネスさとスピードで魔法に耐え、敵軍に単身切り込み、敵の隊長や賢者を殺して壊滅させていた。
そのためリモー帝国は軍を撤退、後退させて敗北を見せ獣人国に勝ってると思わせ、大賢者レントが戦場にいつ投入されてもおかしくないと思わせたのだ。そうなると別の場所に賢者殺しのSランク冒険者が移動することはない。
いわゆる遅滞作戦である。
軍そのものと広大な国土を囮に賢者殺しを誘き出したのだ。
味方に大魔法を撃てないが敵は味方の中に切り込んで来る。そこに大賢者が居れば殺される可能性がある。戦術的に帝国は負けているのだ。
しかしリモー帝国は戦略的に全く違う判断を下した。敵の本土に大賢者を送り込み都市を破壊する。
戦争を続ければ敵国の兵の家族や知人がどんどん死んでいく。もちろん貴族だけ助けるなんて器用な魔法ではない。
後方の物質と民を破壊されれば戦争継続は不可能だ。基本は略奪で賄うとしても、遅滞作戦で進軍が遅く、略奪の成果も少なくなるように食べ物や民は避難している。
リモー帝国は戦術で負けているなら、戦略的に勝ちを狙ったのだ。
後方破壊されたとの情報が敵兵に伝われば士気は崩壊し大軍を擁するリモー帝国を独りのSランク冒険者でひっくり返す頃には、獣人国の兵士が壊滅し終戦か、獣人国の都市が壊滅しているかどちらかである。つまり、賢者殺しには時間が足りないのだ。それを理解した獣人国は降伏を選び被害を抑えた。
卑怯でも勝てば官軍、正義は我にありである。
リモー帝国の思惑通りに進み領土を切り取り、奴隷を手に入れる。そして賠償金の交渉がまとまり獣人国の敗戦が完全に決まる直前に事件が起こった。
大賢者レントと賢者殺しが戦場で相対したのである。
帰還する大賢者レントがリモー帝国軍と合流したのを獣人国軍がつかみ、国の上層部の意向を無視して攻撃を仕掛けたのだ。
結果だけなら大賢者レントは生き残り、獣人国軍は大魔法の前に全滅、Sランク冒険者は奮戦するも連日の連戦や帝国が常に夜襲を行い同胞を守るため対応したことによる睡眠不足により最後は力尽きた。
この戦いでリモー帝国は講和交渉を打ち切り侵攻、最後の抵抗も大賢者レントが大魔法で粉砕した。
獣人国全土を占領し、リモー帝国は最大領土となり、戦後は統治に全力を尽くし防衛戦争を何度か行うのみで平和を生み出した。
戦後は、大賢者レントは消息を断っている。歴史家は、禁忌なら大魔法の存在も大賢者レントの名前も残らないため、この戦いの無抵抗な民を殺す所業に耐えられず自殺した、女に刺された、暗殺された、の3つが有力と見ているが決定な証拠はなく、大魔法は誰にも伝わることなく失われたのだ。
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真実は違っており大賢者レントは生きていた。
Sランク冒険者のが寝不足でなければ、盾となった帝国軍がいなれば、連戦して消耗していなければ、殺されたのは自分だと理解し、プライドものりにのっていた調子もへし折られたのだ。
だからたどり着いと思っていた、そう自身に思い込ませていた、魔法の真髄を極めることにしたのだ。
だがそれは神の定めた禁忌である。だから人々の前から消えたのだ。
大賢者レントは森の中に魔法で穴を掘り、地中に隠れ魔法の研究を行った。
しかし成長が遅く寿命が長くても魔法の深淵にたどり着く前に寿命がつきる事を理解していた。
そのため残りの人生をたった1つの魔法に捧げたのだ。
それは
魂に記憶を人格を記録し新しい肉体に書き込む事で転生を成功させる。
魂を研究し、肉体を研究し、魔方陣を構築した。それでも彼の魔法は不完全である。肉体の魂が入っていれば自らの魂を入れる事が出来ない。肉体ではなく人形では思考が出来ず動けず転生とはいえない。
肉体に記憶があっても上手くいかない。
彼は魂と記憶がない肉体にのみ転生出来る魔法が限界だった。
それでも偉業であり、大賢者の真髄だ。諦めきれない大賢者は死の間際に彼はもう1つだけ魔方陣を完成させた。
彼はその発動した魔法陣の上で誰にも気付かれることもなく静かに息を引き取った。
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