077話 閑話 夜食とキアリー
キアリー side
カイ様は自由気ままな猫みたいな人です。自分からは遊んで欲しいと強制的にやって来ます。逆に遊んでと行っても気まぐれで遊んでくれないのです。
しかも遊び方も自分本意です。ユウキ様も動けなくなるほど毎回遊ばれてます。
ユウキ様は楽しいのでしょうか?毎回勝てないと分かってても立ち向かって行くので楽しんでいるのでしょう。
私はあまり被害に遭いません。たまにとばっちりで絡まれることがあるくらいです。
そんなことより今の目標はカイ様に、食事で美味しいと言って貰う事です。不味いも甘いも辛いも酸っぱいも言ったことがないのでかなりハードルは高い目標です。
料理で困るのは、ユウキ様が知らない食材を持ってきて食べたいと言うことです。ざっくりと調理方も知っていて、食べたら感動しているので問題はないのでしょう。
ユウキ様とカイ様は、はぐれで信仰がないので、本当に大丈夫なのか心配で、気にしてましたが最近は諦めました。
そんな職場ですが、今日はカイ様が私の部屋にやって来ました。
いつもなら夜も勝手気ままなのでダンジョン内を探して押し倒すこともあるのです。
カイ様は寝ないのですが疲れると休憩に自室か私のところに来るので、珍しい事ではありません。順番を気にしない人なだけです。そのあたりも最初は揉めましたが、カイ様が自由なのでみんな諦めました。
私のところに甘えに来るところが普段の強くワガママな彼と違って可愛らしかったりして、ギャップがたまりません。
男爵家でメイド見習いをしましたが正妻を一番にして、側室を同じ扱いにする。簡単なようで口にはしないものの明らかに側室を可愛がってました。そのせいで妻たちは仲が悪かった覚えがあります。
そのあたりカイ様はそれぞれに求める役割があって平等に出来て素晴らしいと思います。
※海くんは狙ってないしそんな慣習知りません。全ては気まぐれとたまたまです。
「お疲れですか?」
「サイオンに何度か吸血されて、ちょっとふらふらするだけだ」
そんな素振りは無かったのですが、私にだけ甘えてると思うともうキュンキュンします。
「お休みになりますか?何か食べますか?」
カイ様は夜も寝ないのですが、その分お腹が減るらしく夜食を食べます。
睡魔族も体型に対して良く食べるので気持ちは分かります。
「肉を食べたいな」
「リクエストとは珍しいですね。それでは腕によりをかけて準備しますのでお待ち下さい。」
「ありがとう、待ってるな」
一礼して部屋を出るとキッチンに向かいます。今日はリクエストがあるので大チャンスです。
血となり肉となる料理、夕食の時間を考えるとまだあまり経っていないので、重くては行けません。
脂を減らし赤身が美味しく食べられる。
串焼きが良さそうです。速く作るために少し小さめに切り火が速く通るようにします。焼きながら串にオーク肉をさして焼いていきます。
小さく冷めやすい上に焦げやすいので手早く正確にしなければいけません。
タレは甘辛いものではなく、ハーブ系で塩を多めに半分はモツにします。
夜食は下ごしらえしてあったので20分ほどで完成してカイ様に食べて貰います。本当は野菜炒めとか考えてましたがガッツリ肉が良いと判断しました。
「おおーいいね」
惜しい!もう少しでしたね。私も少し頂きましょう。
私の場合はつまみ食いじゃなくて、夜食ですが睡魔族としては少食な方です。
「私も頂きます。モグモグ。美味しく出来てますね。」
上手くモツの臭みも消してハーブの香りと塩加減が絶妙です。
「キアリーのおかげで食事も楽しいな」
前よりも楽しそうではあります。ユウキ様の無茶振りの失敗作もカイ様に食べてもらってますがどんな味でも平気そうです。
見た目は大切なんです。カイ様は味より見た目を楽しんでいるみたいです。完成したらユウキ様はよく美味しい、懐かしいって泣きながら食べてます。
「足りそうですか?まだすぐに用意できます。」
「キアリーのおかげで満足だ」
次々とカイ様は串焼きを次々と口に入れて食べきってくれます。
「片付けます。カイ様は体調悪いのですから無理しないで下さい。」
「いや、大丈夫、片付けくらいは俺がするさ」
片付け、掃除は私より早いし上手いので、お任せして、今のうちに勝負下着と身だしなみの再チェックを済ませましょう。
チェックが終わって間をおかずにカイ様が帰って来ました。本当に仕事は早い上に正確で人間味がないほどです。
そこも正確な戦闘能力と関係しているのでしょうか?
「お帰りなさいませ。」
カイ様が部屋に入る所で少しよろけます。思わず手を伸ばして支えようとしますが大丈夫だったようで手が届く前に姿勢は戻ります。
「カイ様!大丈夫ですか!?お休みになられて下さい。」
眠れないカイ様ですが休息が不要ではないのです。
「そうさせて貰おうかな」
カイ様は案外無理していて、ぐったりするまで遊びに戦闘に全力で今を楽しみます。休むときはもう限界という感じなのです。
いつもは添い寝(海くんは思考速度が下がってるだけ)をするのですが今日は本当に体調が悪いようで、私に抱きついて来ます。
「お着替えしますか?」
寝間着に着替えるかを質問します。
「気持ち良いからこのままでいいか?」
「仕方ありませんね。ゆっくり休んで下さい。」
「んー」
どうやら眠れないカイ様の一番かわいいモード、思考ストップしてるけど、意識はぼんやりある状態です。
私はカイ様が意識のぼんやりを維持出来るようにそっとベッドに腰掛けて二人とも座るとカイ様の頭を撫でます。
少しカイ様の表情が緩むのを見て、上手くいったと確認します。今晩は私の順番で邪魔は入らないし、カイ様を堪能するのでした。
もちろん今日の分は添い寝なので、本番は後日乱入してでもお情けもいただきます。
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