141話 閑話 暗躍した者達 シバル王国編
ミュウニー side
時は遡り、優姫ちゃん達一行が馬車で移動中の頃です。
「あれは隠れて見張ってるのか?」
カイ様がお声をかけて下さりました。
「見張りというか密偵なり間者なりは、いると思いますよ。どこの所属かは分からないようにしてるでしょうし、認めないか嘘の所属を言うものです。全てを見つけるのは困難ですし、どこの国も大なり小なりやります。よほど露骨だったり、主が気が付いたら追い払う程度です」
「ふーん、隠れるの下手すぎるなら遊んでやってもいいのか?」
「そうですね。隠密スキルのレベルが足りてないか、夜だからとやや近づきすぎなので、好きにやって下さい。シバル王国の密偵は隠れて監視してはいませんので気にしないでください」
ぶっちゃけ私達、ウレナイ商会が密偵ですからね。隠れる意味がありません。堂々と紛れ込んでます。というか今回は全員が密偵で防諜の仕事を、兼任しています。
「それなら命がけの隠れんぼして遊ぶか」
そう言うとカイ様は足音もなく歩いて行きます。密偵にとって捕まる事は最悪の事態です。自死か全力で逃亡するので、確かに追いかけっこになるかもしれませんね。
それから数時間して、私も寝る頃にカイ様が帰って来ました。
「なぁ、隠れんぼどころか全滅させても気が付かれなくて、面白くないんだが?」
確かに小脇に2人ほど怪しい男女を抱えています。上から下まで黒装束で顔まで黒い布を巻いてるので、そりゃもう分かりやすく夜に活動する密偵ですね。
「全滅させたのですか?」
「全部で8人ほど殺したけど抵抗も逃亡もされなかったな」
「構いませんがあまり一般人な見た目の者を殺すと面倒な事になります」
「他にもいるけど、一般人に変装してるぽい奴は隠れるのが下手そうだし今日は、放置したから大丈夫だ」
確かにガチガチの隠密行動してる見た目なのでスキルレベルも高いはずでそれなりにステータスも強いはずです。
まぁ正面から戦って勝てるなら密偵なんてしませんけどね。
「なるほど、一般ぽい人は雇い主も知らない雇われの可能性もありますが・・・それでも殺さない程度までなら、だいたい何をしても大丈夫です」
「そうかならそいつらとも遊んで来るか、また明日の朝に来るな」
「かしこまりました」
翌朝というか早朝日が昇る寸前に、カイ様がまたいらっしゃいました。
「面白い事になってるから来れるか?」
「えっと何をしたのですか?」
「ん?死体の処理と逃走防止だけだ」
なんか嫌な予感がします。宿を出て少し歩いて町の外に向かうと、生首が地面から何本も生えてます。
「頼む助けてくれ!金で様子を見てこいって言われただけなんだ」
どうしてこうなった??
「なぜ埋まってるのですか?」
「こいつら全員が自分で穴を掘って、その穴に入ったから埋めてみた」
端的ですけど、それは強制的に穴を掘らせて無理やり入れて、しかもカイ様が埋めたんですよね?
「無理やりやらせたんですよね?よくこの時間に間に合いましたね」
「死体見せてこうなるか穴を掘るか好きにしろって言ったら真面目に掘ったぞ」
確かに生首は全部生きてます。
「あれ?死体はどうしたのですか?」
「こいつらの足元に足場として埋まってる」
「えっとこの下に埋まってるのですか?」
「俺たちが踏むように足元に死体があるんだ!!」
あー、なるほど穴掘って死体入れて、死体の上に立たされて埋められたのですね。どんな拷問ですか?普通にそんなことをやろうと思いませんよ?
「ドンマイ」
これしか言うことがありません。死ぬほど辛い目に合ってますね。密偵だし拷問としては・・・身体攻撃としてなら拘束だけですし軽い方では?精神的にきついですけど。
「おおう、ありがとう。ってそうじゃない頼む助けてくれ!!」
案外に余裕ありますね?早く出ないと下の出すものとか空腹とか、魔物にかじられたりとか心配しないのですかね?
「助けたいですが、バンパ王家に呼び付けられてるので掘り返してる時間も人手も金もありませんよ」
「金なら死体のやつならあるぞ。俺らのはないし」
ジャラジャラとカイ様が複数の財布をお手玉してます。元の持ち主は、生首達ですか。
「それを報酬に冒険者に依頼を出しましょう。低級の冒険者の良い小遣い稼ぎになるでしょう」
「早く頼む」
「それは冒険者しだいですよ」
この精神力的に、おそらくは全員プロの密偵でしょう。死ぬよりは主にカイ様の情報を持ち帰る事を選んだのでしょうが、カイ様が強いこと、案外優しいことくらいしか分からないのでは?この優しさも明確に敵対してないからですがね。
カイ様の強さが知られるのは良いことです。強き者が自由に振る舞える。この世の摂理そのものですからね。
その後3日ほど同じ事をカイ様がすると、密偵が居なくなり、夜が暇だとカイ様は嘆くのでした。
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各国首脳や密偵を送り込んだ貴族達は、一様に、密偵の不甲斐なさに怒り、その後の報告で海くんの所業を恐れ、撤収を命じたという。
もちろん、証拠隠滅は厳命した。そして埋められた密偵達は所属を超えた友情が芽生えた。何故か?そりゃ数日掘り返してもらえなくて励ましあえばそうなるのは当然である。
皆、あの男は相当に強い。強いがそれ以上に発想がまともじゃないと認識したのだった。
何人かの密偵は穴掘りがトラウマになり穴を掘れなくなったが別の話である。少なくとも痛みこそ初めは少ないが精神力と体力がゴリゴリ削られる拷問であったのだった。
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