037話 間話 上司の無能は罪なのか?
シバル王国の公爵家つまり王家の分家である。先王に権力も影響力も財力も減らされ落ちぶれる寸前であった。
現状公爵家は四つあり、彼らは傀儡王としてオバカを王位に着けた。
計画は完璧であり、それぞれ家長たちは宰相、将軍、財務大臣、外務大臣と主要職を独占し自分達で国家運営するはずだったのである。
しかしオバカ陛下はコントロールすら不可能なほど無能であった。
政敵を追い落とし、国民や貴族を騙す彼らも無能はどうにもならない。話を聞いてないようで聞いている、理解しているようでしていない。何もしなければ問題ないのだがアホな事だけやってくれる。
つまり上司としては最悪でもちろん仕事は任せられない。しかし仕事の邪魔はしてくるので放置も出来ないし最終決定権は持っているのだ。
会社なら転勤か退職してくれ、ずっと社長なら辞めさせられるだろう。もっともその前に倒産するだろう。たまに企業として黒字なのでアホな上司でも問題ない事があるがここまで酷いことは稀だろう。
しかしやる気がある王が、王位を放棄するのはありえないし国家転覆すれば民が路頭に迷う。まだまだ若い29歳なのだから20年は最低でも王に君臨する。長ければ半世紀近く王位にいられる。
残るは反乱を起こすか、暗殺するか、自ら退位してもらうか。
反乱を起こせば国力の低下と王位の正統性がないという2つの問題と誰が次の王になるのかという問題がある。
長女のネイ王女と次女のレイナ王女が候補だが反乱の味方になるつもりはないだろう。国外に嫁ぐ可能性が高く、王位継承は可能性が低いのでシバル王国の恥とならぬように教育されている。
つまり反乱の危険さとして他国の介入で国土が奪われたり最悪国家の消滅につながり、王位の正統性が致命的ということを理解しているのだ。もちろん浪費で財政を傾けたり我がままで国政をおかしいしないように政治や財政の知識もあるのだ。もちろん貧乏くさいなんてこともなく最低限の見栄と浪費の差を理解している。
良妻賢母になれるようにオバカとは全く違う教育がされており、結果として能力があり傀儡には不適切なのだ。
暗殺も問題がある。
国力の低下は戦争がないため少ないが、暗殺の首謀者を見つけて罰せなければならない。もう一つ次の王に絶対に暗殺が無関係と証明しなければ正統性がないとみなされる。
他国の暗殺とすれば戦争は不可避となる。やってないのだから交渉で折れることはなく最後は武力しかない。
外交的にも暗殺で王位継承したとなれば警戒される。身内すら殺す国王を誰が信用して外交するというのか、国家間の条約を守ると思うのか、という当たり前のことだ。封建制なので民の意思ではなく王侯貴族が信用できるかそれが大切なのだ。
法の支配という概念もなく、人型種族の共通敵が魔物であり、余程の得か問題がなければ戦争しない。そして隣国の指導者が家族すら殺すなら排除するほどの事なのだ。
手段は戦争が確実だろう。大陸なのだから周辺国で結束してヤバイ王の国をボコればいい。
穏便に解決するならオバカ陛下が自ら退位し譲位するのが一番良いのである。息子がいれば、高齢で政務が難しければ、健康的に問題があれば、十分な理由になるだろう。
オバカ陛下は女性からあまりの酷さ(お馬鹿過ぎて)に結婚を拒否されて子供はない。夜の相手をしている後宮には子供はいるだろうが王位継承権はない。王家の血筋には母親の身分が低すぎるのだ。
王の子に全て王位継承権を認めれば王位をめぐって争いや暗殺が起こり国家の存亡に関わるのだから仕方がない。
つまり公爵家の面々はこの難題を解決しなければならないのだ。コントロールは不可能と結論は出ているのだからオバカ陛下に退位してもらうしかない。
ちなみにオバカ陛下は民を思い自らの力がで良い生活をさせようとやる気満々で退位するつもりは一切ない。この難題を解決すべく、四人は話し合いという名目で愚痴大会が今日も始まる。
「なぜに寒中水泳を宰相の儂がせねばならんのだ!!」
愚痴はもう最初から始まったようだ。
「今日は寒中水泳か(笑)夏に寒中水泳とは本当に知能不足な奴だ」
外務大臣は当然オバカ陛下に敬意なんてかけらもない。
どうやって寒中水泳したのだろうか?魔法で寒くしたのか?
「貴族の財産を民に配ると言い出たんぞ、寒中水泳などどうでもよいわ!!」
財産大臣もぶちギレである。
「それはマズイ、止めたのだろうな」
外務大臣焦る。
「当然だ!!三時間も能足りんと話したのだぞ」
財産大臣酷い悪口である。
「良くやった、これで今日も無事だな」
外務大臣安心する。
「まったく後宮で遊び呆けておれば我らでまともに政治をするものを!!邪魔ばかりしおってイライラする!!黙ってサインして丸投げすることすらできんのか!!」
宰相が激おこである。
「まぁまぁ、今日は報告がある」
将軍が今日はじめてしゃべった。
「無能には病死してもらう」
「そんな事不可能だ。暗殺すれば我らの地位すら危ない」
「なぁに病死だ、ちょっとネイ殿下の部下が差し入れをしたらオバカ陛下の体調が悪くなり、亡くなれるだけだ」
「外交が終わるぞ」
外務大臣がもっともな事を言う。
「筋書きは完璧だ」
将軍は自信があるようだ。
「聞かせてもらおうか」
宰相興味津々である。
「簡単よ、まずネイ殿下の部下を買収したので無能に毒入りの差し入れをさせる」
「我らは無事だな」
財務大臣は保身を気にする。
「毒は数日後に体調を崩し、1ヶ月ほどで命を奪うキノコを使えば毒殺の疑いは減るだろう」
「なるほど、しかしネイ殿下が我らに従うか?」
「ネイ殿下が暗殺を命令していることにするのだ、それを我らで握り潰すとネイ殿下に言うのだ」
「フハハハ、外交が終わるから殿下の暗殺行為は我らで墓まで持って行くと、そのためには我々に便宜をと脅すのだな?」
財務大臣先回りして結論まで見抜く。
「その通り、保険としてネイ殿下の即位後には近衛騎士団長に殿下の暗殺の事実を伝え、ネイ殿下の部下にはネイ陛下の側付きをしてもらう」
将軍なかなかえげつない。
「ほぉ、それはそれは、近衛騎士団長の忠誠心は弱まり、ネイ陛下は暗殺の恐怖で我々に利権をまわすな、部下を処分すれば暗殺の疑いが掛けられるから不可能なですしな」
宰相さらに先回りして結論を言う。
「計画を実行に移す」
「頼んだぞ、同士よ」
こうして無能な王は殺されるのである。無能はそれほどの重罪なのだろうか?
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