049話 間話 強さ以外の魅力

 サイオン side



 カイに負けて僕が部下になったことに後悔はない。


 正直、相当な手加減をされていて本気で闘えば即殺されてたし、少なくとも僕の攻撃が当たることは現状絶対にない。


 不意討ちでもカイを即死させないと僕が殺される。もう二度と闘いたくない。というのが本音だ。戦闘自体本職じゃないからそこまで得意でもないけどさ。


 挨拶を最低限こなして、今はダンジョンマスターの力で作られた個室にいる。


 ネイは文官タイプでキアリーはメイド、ユウキがダンジョンマスターで組織トップ、カイが戦力でヴィシリアが便利屋というのがこの組織の振り分けになってる。


 私はカイの部下でヴィシリアは外部の人間だから味方に戦力が必要ということだった。


 セルナファス帝国は遥か昔に滅亡して簒奪した吸血種の王国になってるそうだ。元王族のネイは歴史に詳しく直ぐに知ることが出来た。


 政治とか権力とか礼儀作法とか、とにかくめんどくさいから国ごと無くなってせいせいする。


 少し皇族の価値が失われたのがもったいないくらいだろうけど、ダンジョンマスターにつくなら身分はいらないだろう。


 眠くないし、少しカイと遊ぼうとカイの部屋に入り声をかける。


「カイは起きてる?」


「ん?サイオンか、起きてるぞ」


「眠くなくてね、強さの秘密いろいろ教えてよ」


「秘密なんでもなにもない。ただ力を求めて、成果を求めて、成長を求めて、探求してるだけだ」


「僕は努力したけどカイみたいになれそうにないな。スキルレベルもステータスも限界だし、回避のコツとか知りたいかな」


「ステータスとかスキルレベルなんか気にしたこともないし、見えないものに縛られる意味ないしな。今より知識を増やす。出来ないことを減らす。自らを成長させる達成感と知識が増えるのは楽しいからやってる。ケガは楽しいことの邪魔でしかないから避けるそれだけだ」


 なるほど鑑定がなければスキルとかステータス分からないし、楽しいことのために攻撃を避けるって発想はなかった。


「僕のストーンアローをクロスボウで使うのはどう思う?」


 教義的にギリギリセーフだけど教会のトップに近い権力者はどうしても保守的になるから僕は裏切られたし、実力は認められなかった。


 身を守る意味もあって鍛えて魔物を狩ったけどステータスの限界がやって来た。


「威力上がっていい攻撃だった。威力も射程も装填速度も悪くない。威力に対してクロスボウが重すぎると思うけどな」


 ヴィシリアの戦闘みてから挑まれたと聞いたから、撃てなかったけど詳しく分析されてると予想してたよ。


「そっか、カイは使えるかが基準なんだ、構造は本来のクロスボウと違って作り替えてるんだ」


 見た目こそボウガンと同じだけどストーンアローを射出するために内部構造を変えてるのは完全に教義違反なんだ。


 神に背けばステータスとスキル、魔力を失い、魔物どころか下手をすれば強い子供にも簡単に殺される。


 教義違反は死と同じだから言ってしまって後悔する。


 今までボウガンにストーンアローを装填するだけで教義違反のかもしれないと言われてたのに誉められて浮かれたみたい。


「技術なんて隠して、極めて、盗んで利用するものだろ?そして仲間と共有する。強さの根源は技術力、それを支える経済力、兵士は現場で運用してる最後のピースだ。より強くてより安くてより大量に準備した者が勝つんだ。当たり前だろ?」


「そっか僕悪くないんだ。カイはどの神を信仰してる?」


 なんだか今までと全く違う回答に胸に込み上げる感情が大きくなってくる。


「神なんて信仰してない。やりたいように楽しく生きてるだけさ。クロスボウの構造教えろよ」


「うん。いいよ」


 涙が止まらない、おかしいと思ってた自分が認められて、父と母も僕が悪だと僕が弱い信仰心のない異端児と言ったけど、カイは僕が正しくて僕が間違ってないとはじめて遠回しだけど言われて、やっぱり涙が止まらない。


「僕は悪くない?正しい?僕は強い?」


「んー?悪いか正しいのかは俺が決めることじゃないだろ?何が悪いことなんだ?今を楽しく生きれてればそれで良いだろ?サイオンは強くならないと戦って楽しい程の相手じゃないがそれなりに強かったしな」


「ありがどう」


 泣き声でもう僕は長年満たされなかった心が満たされた気がする。


 さみしさと罪悪感がここでは、もたなくてよい。もうカイの側以外で生きて行けない。あんな世界中から否定される環境なんて僕の居場所じゃない。


 理性じゃない。感情が心が居場所を見つけた、安心を見つけたと叫んでいる。


「僕、カイに捨てられたりしない?役にたつ?何をすればいい?女として魅力ある?」


「優姫に頼まれたからな。防衛をするだけで十分に役にたつな。俺は中途半端な奴との戦闘が一番つまらないからな。遊べるほど弱いか、ギリギリを楽しめるほど強くないとな」


 カイの視線が僕の身体に向けられるのが分かると、胸が小さいから魅力ないかなと自分で聞いて後悔する。


「女としては、何回かエロチックな話を聞いたことあるが、感覚が理解出来なかったな。経験もないし興味もないな」


 たまに貴族で女とほとんど触れ合わなくて、恋とか愛とか、性に目覚めてない奴がいたけどカイもそうかも。


 ユウキの義理の父って言ってたから、女の前に子育てで必死なのだと思う。僕が女の魅力を伝えたらカイは楽しいかな?


「好きな人はいる?」


「優姫は楽しいしキアリーは料理事をやってくれて助かってるし、ネイはコネとか交渉とか出来て助かってるな」


 女はいないな!これはチャンス!


「女と男ならどっちが触りたい?」


「男硬いし触る意味ないな。女の方が触りは心地いいよな」


 これは男食趣味じゃない。ならチャンスはあるはずだ。


「えへへ。僕ならいくらでも触っていいよ」


 カイに抱き付いてみるけど本当に僕が満たされれて安心する。


 嫌がってないしこのまま押し倒したい、けど僕も初めてで分からない、悶々としていると安心のしてすっかり眠ってしまったのでした。

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