046話 間話  意地も努力も無駄ではないだろう

 ヴィシリア side



 人間にはどうしても避けなければならないことがあるのじゃ。


 それはもしここで死んでカイの料理で、あの世に送られたら天国も最悪の地獄に早変わりじゃ。


 カイの料理の味は、味覚破壊どころか魂を破壊する恐怖の代物じゃ。


「食べなくて済むなら、女でも手加減はせんのじゃ」


「カイ様の食事は報酬で生きて戻っても食べなくてならないです。私もあの味は二度と口にしたくありませんから気持ちは分かりますが、事実をねじ曲げてはいけません。」


「それなら少しは味方して欲しいのじゃ、カイの料理は拷問じゃぞ」


「カイ様と優姫様が雇い主で、食料も安全も確保して下さってますからカイ様の味方です。さて扉先は戦地ですから、バリア!さて後方支援はしましたよ。」


「感謝じゃ。それでは向かうのじゃ」


 扉を通れるように、ボスのゴブリンが部屋の外に出るのじゃ。


 優姫ちゃんがダンジョンマスターというのはびっくりしたのじゃが、こうして魔物を支配しているのを見れば納得なのじゃ。


 再び侵入すると吸血種の女はやっぱりいる。


「王族か、高位貴族もしくはかなりの財力がある商人でなければあれほどのドレスアーマーは無理です。」


 なんでもダンジョンの力で様子はユウキちゃんとネイ様、カイが見ているらしいのじゃ。最初からそうすれば良かったと思うのじゃ。見えるのは入口付近だけらしいのじゃがな。


「ウィンドプレシャー!」


「また不潔でキモいやつって最悪、死ねストーンアロー」


 ウィンドプレシャーはやはり全く効果が無いようで、ストーンアローをボウガンに装填すると放ってくるのじゃ。


 パキン!とバリアに当たりストーンアローを無効化するのじゃ。


 それをチャンスと近付くべく足を動かし前に進むのじゃ。


「バリアで2発が限界です。攻撃が高いです」


「なかなかの腕じゃない、私につかない?ストーンアロー」


「ウィンドカッター!!」


 パキン!バリアが崩れるのじゃが、なんとか2発防いでくれたのじゃ。


「バリア!不潔てっぺんハゲは足止めもできないのですか?私の雇い主はいますのでお断りします。」


 ウィンドカッターは全く効果がないのじゃ。そして心から金を稼いで身だしなみを整えると決めたのじゃ。


「ウォーターウォール!ワシはヴィシリアじゃ」


 大量の水を出すウォールは魔力消費が大きいのじゃが、接近戦をしなければ勝ち目がないのじゃ。あとキアリーちゃんに名前の主張も忘れないのじゃ。


「ストーンアロー、不潔でキモいやつがあなたの主なら裏切るべきよ。圧倒的に僕が強い」


 パキンとバリアにあたりまた無効化成功するのじゃが、アクアウォールは発動するもコントロールを失い水溜まりになったのじゃ。


「僕っ娘ですか。不潔てっぺんハゲなんかに雇われるほど私は安くありません。魔法は全く効いてません。ドワーフですし接近戦をしてください。」


「戦地では誰か分かれば良いのじゃが不潔てっぺんハゲがワシなのは分かるがヴィシリアじゃ。ワシはドワーフのパーティーの後衛魔法使いじゃ、接近戦は専門外じゃ」


 バリアがあっても近寄れんし相当な腕前の女じゃ。


「ストーンアロー、ストーンアロー、ストーンアロー、魔法使いとかカモだな」


 パキンとバリアが砕けて追加の2発は直撃するのじゃ。


「名前くらい覚えてます。ですが不潔テッペンハゲは事実です。」


「ぐふっ、ほぐっ、カイの料理を口に突っ込まれて火葬だけは嫌じゃ。不潔てっぺんハゲとかどうでもいいのじゃ。生きて帰るのじゃ!!」


「急に強者の気配を感じる」


 とにかくカイの料理を食べることを避けるためだけに突進するのじゃ。


「バリア!魔力がもうありません。」


「ここでバリアとは厄介な。僕は肉弾戦も出来るよ。ストーンアロー、ストーンアロー、ストーンアロー」


 パキンとバリアが一発ストーンアローを無効化したのじゃ。


「 ハッ」


 吸血種の女がアッパー気味に腹パンをしてくる。狙いは鳩尾じゃな。


「ぐぼあ」


 魔法使いとしてあり得ない威力の腹パンじゃ。三途の川で仲間が手を振っているのじゃ・・・川を渡るための食料はカイの料理ってマズイのじゃ、スマン仲間達、ワシはまだ死ねんのじゃ。天国で待っておるのじゃぞ。


「うぉぉー、カイ料理は嫌じゃー!!」


 反撃の拳を出して吸血鬼女にクロスカウンターを狙ったのじゃ。それでもきっちりガードされる。


「何か間違ってません?」


 キアリーちゃんが質問してくるのじゃ。


「間違ってないのじゃ!!!」


 吸血種の女の回し蹴りはギリギリガードに成功するも近接ステータスの差で、ダメージを受けるのじゃ。


 全力で叫んでおるのじゃ。まさにカイの料理を口にして火葬を避けるためなら死力を超えられるのじゃ。


「フッ、そこまで不味いとか逆に興味わくな」


 吸血鬼女にワシの拳はきっちりガードされてエルボーがワシに突き刺さるのじゃ。


「カイの料理は食べないのじゃ」


 ワシは打たれに打たれて力尽きた。


「また僕、閉じ込められる?」


「雇い主の敵は排除します。間違いなく閉じ込めます。」


「いいけど、なら君の雇い主に僕が勝って君の新しい雇い主になるサイオンって覚えててくれる?」


「かしこまりました。努力したヴィシリアは回収します。」


「どうぞ、改めて雇い主によろしく。早く出して欲しいから殺さないでおくよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る