011話 閑話 新人冒険者のオーク研修

 新米冒険者 side



 俺は冒険者ギルドの建物で指定された会議室に向かう。そこは先輩冒険者の待っており、オークとハイオーク講座と入口の扉に設置された小さな黒板に書かれている。


 何人かは他にも参加者はいるけど、やる気はなさげに後ろの席を選んでる。もちろん俺はやる気があるから、最前列を選んで座る。


 冒険者は戦闘試験と、読み書き計算の筆記試験を突破しなければ成れない職業だ。年齢は関係ないが試験的に年齢はある程度高くなる。10代前半なら早い方だろう。天才は小さな子供の頃に冒険者になるらしいけど。ステータスはなんとかなっても勉強は子供からすることは少ないから当然だろう。


 魔物狩りは冒険者でなくてもできる。


 しかし冒険者は依頼を受けて、魔物を狩り、素材集め納品するプロで冒険者ギルドが身分を証明してくれる。もちろん国から国への移動もできる。


 農民なら土地を毎年耕さなければ成らないし、狩人や漁師だって村の周りが仕事場だし、街の職人ならば街で仕事をしなければいけない。居住地どころか旅すら許可無くできない。


 狩人の狩りは食料のためで素材の価値は二の次だから、冒険者とは違う。狩人のしとめ方は肉が食えればそれで良いのだ。


 騎士や兵士なら持ち場がある。街の商人だって仕入れは行商や貿易商からするから店から遠くに行かない。


 国をまたぐ行商はいない。国内の街や村を巡って仕入れと販売を行う。自分の住む貴族の領地から出る事さえ稀だ。


 貿易商で移動するか、冒険者として旅をするかしか、国家を越えて移動する方法は平民にはない。それが社会の仕組みなんだ。


 貿易商は豪商とも呼ばれて、国家に対抗出来たり影響力があるほど資金を持っている。


 つまり冒険者は凄いのだ。豪商と同じことが許されるのだ。強くなればなるほど国家に影響力を持つほどになる。もっとも俺は冒険者としては弱いから影響力は全くないけど。


 地元の魔物を食材としてしか狩れない狩人とは、知識も身分も違うのだ。だから新米の俺は真面目に勉強して世界を股にかける冒険者になるのだ。


「それでは時間だ。これからオークの授業を始める」


 講師の先輩冒険者が開始の合図をしたので、俺はノート用意し聞き逃すまいと真剣に話しを聞くことにする。


「まずオークだが群れで行動するDランクの魔物で群を相手にするならCランクのパーティーでも辛いだろう」


 ランク設定がおかしいと思い質問する。ランクソロで互角な相手と定義されている。Cランクの魔物はCランクの冒険者と互角であり、Cランクの冒険者で組んだパーティーなら数の差で勝てる。オークが常に群れなら群れに、ソロで勝てるランクが指定されるはずだ。


「群れで行動するなら討伐難易度的にCランクかBランクの魔物なのではないですか?」


「いい質問だ、普通ならそうだろう。だがオークはDランクだ。なぜなら群を作るのに単独行動が好きな変な魔物だからだ」


 意味が分からない。単独行動が好きなら群れにならないはずだ。


 講師の先輩冒険者は続ける。


「Cランクのハイオークか、それ以上に進化した個体が群をまとめているんだ。ハイオーク以上には常にオークが周りにいるわけだ。はぐれはハイオークの群に見つかると取り込まれて群れで行動する」


「やっぱりランクがおかしいと思います」


「それがな、オークは群れでも簡単に1匹だけを誘い出せるんだ。なにせ単独行動が好きだからな。群に敵や、獲物が来てるなんて伝えない。誘きだして簡単に1匹に出来るから狩りやすい魔物だ」


「なるほど、狩り方を知って入れば格段に弱くなるので、ランクが低いのですね。しかしハイオークは群れの中心なのでかなり強いのでは?」


「馬鹿だな。ハイオークが一匹になるまでオークを誘い出せばいいだろ。以外とオークはバカなんだ。お前よりもさらにバカなんだよ」


 なにそれ、その発想はなかったぞ。


「さて次はオークとの戦闘と素材の価値についてだな。皮は防具になるから、斬撃で傷つけると特に価値が下がるぞ。肉は食えるからそれだけである程度のはした金にはなるがな」


「剣で攻撃出来ないというのですか?」


「首から上とか腕だけとか皮のダメージ箇所を減らすんだ。強い冒険者なら首を一撃で落として皮のダメージを最小限にして血抜きも早くする。結果として肉の価値も上げるだろうな。魔石も首元にあるしな。せいぜい1匹なら普通の大人で囲めばなんとか勝てる程度だ。首を落とすなら装備がしっかりしたCランクの冒険者なら余裕だ。Dランクでも一撃では無理でも何発かやれば倒せるだろう」


 Fランクの俺には一撃はまだ難しいそうだが目標として頑張ろう。


「オーク戦は強さよりも問題がある。それはオークの悪食だ」


「なぜ問題なのですか?魔物で肉食なら人も普通に食べますし??」


「腹が減ればオーク同士の共食いもするし草木も食べ尽くすが、何より好きなのは、生きたまま獲物を食うことだからな」


 !?なにその悪魔やべぇ!!


「人も生きたまま食うからそれを見てトラウマになって、狩れない冒険者もいるほどだ。子供が生きたまま喰われたりするぞ」


 俺もそんな光景は見たくないぞ。


「被害者を増やしてなるものかとか、身内をオークに食われたとかでオーク狩り専門の冒険者も少しはいるな。俺はオークが子供食ってるの見たことあるが、オークは狩り易いから、ただの金に見えるがな、特に進化してくれてると皮の質が良くて売値が上がるからな。ガハハハハハ」


 先輩冒険者様メンタル強すぎだろ。俺は冒険者に向いてないかもな。


 いやいや、冒険者はそこらの平民とは違うのだ!俺は大丈夫なはず!


 新米の冒険者は不安になるも基礎講座は進んでオークの攻撃や急所、誘い出し方など進んでいった。

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