010話 オーク襲来

 こんにちは、まだ喋れない優姫です。



 誕生日を三回迎えた最近ゴキブリがたくさん部屋に出るよ。


 兄はゴキブリを追いかけるだけで退治出来ないみたい。異世界ゴキブリは速いくて大きい。マジキモい。


 そんなゴキブリに挑む兄は可愛らしいと思う。毎回、諦めずに追いかけるけど、それなら大人を呼べばいいのにね。


 ちょっと上から目線だけど中身は37歳だからね。


 足してアラフォーとか思った奴は死ね♪そして肉は飽きた野菜が食べたい赤ちゃんです。ギリギリでスープなら味が変わるから食べられるかな?お兄ちゃんがスープ持ってくると火傷しそうなくらい熱いんだよね。自分で食べて確認すれば良いのにね。


 ゴキブリとか年齢とか考え事してると叫び声がしてくる。


あーうーあー?なにかな?


 ハイハイくらいは出来るから様子を見に行くか?そういえばベビーベットの柵越えられないや。


「■■■■■■■■■■!!!」


 何か兄が焦ってるみたい。


 交差点に無謀突入したか?

「あーうーあーあーうーあー?」


 アスクは私を抱き上げると家の外に走り出す。


 違ったみたい?

「あうー?」


 説明プリーズ!エルフ語分からないから説明の意味ないけどね。日本語でお願いします。


 村では豚の頭部がある二足歩行の人型の生き物が群でエルフ達を襲ってる。


 身長は2メートルくらいで筋肉質というよりはお相撲さんみたいな体型をしている。


 あれはまさにオークだね!


 エルフ弱いな~♪オークって強くて中堅下くらいでしょう?エルフの天敵かもしれないけどさ。


 火とか水とか土とかいろんな魔法でエルフ攻撃してるけど効いてなくない?無視してオークが突進してるよ。


 オークにエルフって生きたまま食べられちゃうんだ(笑)・・・笑えないよ、ヤバくね?


 笑わないとやってられないけどやべぇよ。死ねるよ!踊り食いされてるよ。赤ちゃんは小さいから食べ応え無いよ。まさか前世のグロ耐性がこんなところで役に立つとは人生分からないね。


 オークの突進は思ったより速い。ダンプカーくらい迫力あるし遅めの車くらいはスピード出てる。救いは短距離タイプぽいからすぐに止まることだね。


 踊り食いは鮮度いいし美味しいと思うけどされたくない!私は白魚じゃないって!口の周り赤いから!!何なら身体も赤いから来ないでよ!!汚れるじゃなくてまだ赤ちゃんなのに死にたくないから!!


 交通違反ごめんなさいもうしません。だからもう許して下さい。なんで追いかけて来るのよ!?


「ブフォー!」


 雄叫びあげてるオークの足が速すぎる。それよりも兄のアスクが遅いのか?


 いや、やっぱりオークが速いよ。誰だよオークが中堅下で素早さ低いパワーファイターくらいの魔物を常識にした奴!!ゴブリンの次なんてもんじゃないじゃん!?


 少なくともめっちゃ突進は速いじゃん。


 兄の足の早さでは逃げられないのは確定だね。いざとなったら女は突貫よー。


 それでもなんとか兄は私を抱いて村を出て森に入る。


 がんばれー

「あうー」


 でもオークに追い付かれて、兄はオーク押し飛ばされる。私は放り出されて少し前に落ちる。



「■■■■!!!」


 たぶん逃げろって言ってるよね?


 ハイハイしか出来ないし打ち身で痛いけど全速力で進む。なんか痛いのに身体は動くからね。それなら川の音が左前の方からするのでその方向に逃げることにする。


 ハイハイで急な坂は速く登れないから川下に移動すれば下り坂のはずだから最速だと思う。


 川は村に戻るのか離れるか分からないけどそれしかない。


 恐怖で逃げてるとアスクが食べられてる音がする。どうやらあっさり捕まった結果だと思う。この恨み忘れないから。オーク敵!!絶対!!いつか絶滅させるからね!


 それより今は交通違反ごめんなさいもうしません許して下さい。助けて下さい。


 とにかく川に向けて進む。


 手足や膝が石や木の根を踏むだけで柔らかい赤ちゃんの手足は凄く痛む。


 これは赤ちゃんの身体では弱すぎて、森を進むことすら満足に出来そうにない。


 女は突貫あるのみ!

「あうーあーうーあー!」


 死にたくない。


 オークに踊り食いされたくない。生きたい。モテたい。お金持ちになりたい。彼氏欲しい。野菜食べたい。旨いもの食べたい。ぐうたら過ごしたい。宝石欲しい。可愛い服着たい。巨乳になりたい。美人になりたい。仕事したくない。ペット欲しい。マンガ読みたい。ネコカフェ行きたい。ネカフェの無料券勿体なかった。もふもふしたい。お酒飲みたい。シメのラーメン食べたい。ネイルしたい。お化粧したい。ヒールは痛いからいらないや。ブランドバッグ欲しい。結婚式したい。ウェディングドレス羨ましい。彼氏はイケメンに限る。旦那は家庭的がいい。


 しかし今は生を渇望してオークから逃げて森を進むのみ。


 無情にも食事を終わらせたオークが迫ってくる。


「ブフォー」 


 私の死はオークの突進と共に真後ろに迫っていた。兄は完食されたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る