195話 間話 誰でも同じは強い
ウレナイ side
カイ様とネイ様が、新しい神の力を披露するとのことで、特等席で見物兼護衛をする。
「ミュウニーの奴はバカやねんな。こんなおもろいことを墓の下から見るなんてなぁ」
そう呟いて感傷を振り切り仕事に集中する。
「冷酷非情なウレナイとは思えんな。偽物か?腕が落ちたのか?どちらか気になるな」
さっきまで居なかった鳥人族の男から声をかけられる。独り言に返事するとか不粋な奴だ。
「そこは年とったか?と聞かなあかんやろ?それよりも密偵長さんも無駄口とは緊張しとるんやないか?」
「偽物ではないらしいな。歴史的な瞬間なのかもしれないと、高揚感があるのは認めよう」
腕はいいが、コミュニケーション能力不足で裏方なのが密偵長だ。まぁ商会とは仲は悪くない。協力関係にあり、表と裏両方があって初めて任務達成出来るし、人事交流もある。
「何事もなくデモンストレーションが終わればいいんやけどな。新たな神言うたらやっぱり混沌神やろ?」
「それこそ今から見れるのだ気にしても、仕方ない事だろう」
「そやけどな、そういうとこがコミュニケーション能力不足なんやで」
「裏の人間なのだ。問題ない。そろそろ始まるようだ。仕事に戻る」
なんのために来たのか不明だが、おそらく奴なりに気を使ったのだろう。
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見たことない様式の城の大広場で数名の将軍がバルコニーから演説し、次にレイナ女王陛下の演説やバンパ国王の演説は、しっかりと民に受け入れられて問題なく進んで行く。
ネイ公爵閣下の演説は、最後であり重大発表がある。カイ様も護衛するのかと思いきや、ネイ公爵閣下の近くには見当たらない。
そんな中でネイ公爵閣下の演説が始まる。清楚で、優しげな笑みを浮かべている。まさに人好きされる雰囲気こそカリスマだろう。人誑しというか気品というかとにかく、政治家に向いている。
「知っての通り、事実上の勝利を既に我々は手にしています。しかしこの勝利は与えられたものにすぎない」
聴衆がざわつくのをゆっくりと眺めて静かになるのを待つと、タイミングを見計らって演説を再開する。
「これはこのダンジョンの力だけではないのです。本当は新たなる神によりもたらされた力なのです。そして新たなる神を信じる者には力を与えて下さるのです。では、神の力の一端をお見せしましょう」
ネイ公爵閣下が城壁の上に設置されている的を指差すと聴衆の視線が集まる。そこには3つ的があり、シバル王国の近衛騎士団装備品である全身鎧を木人形に装備させている。
皆が確認した頃、ネイ公爵閣下は反対側を指すとそこにはカイ様がいる。
もっとも距離が遠くなる対角に配置しており、おそらくは2000メートルは軽く超えている。しかも聴衆の頭上を通ってになる。
近接攻撃は、Sランクでも難しく、大火力攻撃なら的の破壊も可能だろうが、そんなことをすれば聴衆が無事では済まないだろう。
「それでは的の強度を確認しましょう。バンパ王国の騎士にお願いします」
バンパ王国の騎士でも団長クラスの実力者が城壁に上がり、鎧を着た木人形を大剣で斬りつける。付与魔法により防御力の非常に高い鎧を切り裂き、木人形に大剣がめり込んでとまる。
バンパ王国の騎士団の団長はドヤ顔をしながら下がる。
「さすがですが、これが今の神の力です。新たなる神の実力を目に焼き付けなさい。それでは、カイ様よろしくお願いいたします」
ネイ公爵閣下がカイ様に丁寧に公の場でお願いをする。これはネイ公爵閣下が自身よりもカイ様が立場が上だと公言したのと同じなので、内心驚きつつカイ様を見つめる。
カイ様はなにやら鉄の筒を無造作に的へ向けると、筒先から僅かな閃光と炸裂音が2回鳴る。直後に的からも大きな音がなる。思わず聴衆と同じように的を見つめると、頭部は貫通しぐちゃぐちゃになっており、さらには心臓を刳り大穴が空いている。
この威力の攻撃を連射でき、しかもどうやって攻撃したのか、知覚すら出来ない。当然ながら、皆がざわついている。カイ様の攻撃力に興奮しているのだろう。
それを見つめるネイ公爵閣下に、聴衆は徐々に気が付き静かになる。
「この力が個人のものではないと証明しましょう。カイ様また、よろしくお願いいたします」
カイ様は聴衆から誰かを探してるようで、見回して見つけたのか、1点を指差す。どうやら孤児で10歳ほどの鳥人族の女の子を選んだようだ。そしてボディランゲージで呼ぶと、女の子は応えて移動を始める。
かなり非力で弱っているのか、苦労しながらカイ様の元へ向かう。
カイ様は女の子を待っている間に、かなり頑丈そうな三脚をがっちりと動かないように固定する。その上に見るからに大型でヤバそうな、たくさんの筒が輪のように並んだ何かを設置する。
狙いを確認して全てを動かないようにがっちり固定してしまう。
女の子が暫くして、カイ様のもとへたどり着く。カイ様は女の子に簡単になにやら説明すると、離れてしまう。
女の子は、なにやら不安そうに恐る恐る言われたとおりにする。
ドゥルルルルルルルルルル!!!
女の子の攻撃が放たれる。そして的が気になり見てみると、無傷だった的の全身鎧の膝関節から上が木っ端微塵になり消し飛んでいる。
女の子は自分の手を信じられないと、少し見てもう一度操作というか、引き金を握ると、ドゥルルルルルルルルルル!!!再び無慈悲な攻撃が放たれる。
あんなものを軍に向けて使われたら女の子1人でも壊滅させられるだろう。新たなる神の力が圧倒的な破壊力を誇る事を証明し、ステータスが低い者でも強者を薙ぎ倒せると示したのである。
「凄い!!これは凄い!!どうやったら私のものにできるの?」
「今からのネイの話しを聞けば分かる」
「うん!!私がんばる!!」
女の子とカイ様の、会話が驚きと興奮が最高潮でガヤガヤしてる会場なのに何故かよく聞こえたのだった。
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