085話 間話 エレンティアの情報収集
エレンティア side
ダンジョンマスターの優姫ちゃんが遊びに来る村に前世が大賢者レントであるエレンティアが到着した。
「着いた~それにしても変わったダンジョンだ」
前世の大賢者としての知識を思い返してもダンジョン内に村があるというのは知らないし、記録も見たことがない。
魔法が得意なだけでなくて、敵や状況に合わせて最適な魔法を瞬時に選択行使出来て賢者なのだ。そこに膨大な知識が求められるのは当然だ。
このダンジョンは崖にある普通の洞窟に入ると、明るく畑や家があり店があるのは不思議な光景だ。
独りだと男言葉も少し出るが、基本法やっぱり女の身体に影響を受けてるのか女の子としている。男言葉で話しても違和感を持たれ、前世がバレないようにするのもあったが、今ではどちらの影響なのか分からなくなっている。
ダンジョンの情報はギルドにあるだろうがダンジョンマスターの情報なら酒場もありだろう。
「こんにちは!」
「いらっしゃいませ」
鳥人の女の子が1人で店番をしている。ちょっと無用心かな?ダンジョンがあるなら冒険者が多いし、国の肝入地区なら治安はいいのかもしれない。
そういえば私も女の子でソロだったか。その辺りは前世の男の感覚もあって変な感じがする。
「えーと、スペシャル肉の定食とエール下さいな。これはとっておいて」
一番高いメニューと多すぎるチップを渡す。魔法の研究ために引きこもればお金なんてもう要らないし大盤振る舞いだ。
「気前がいいですね、ちょっと待って下さい」
厨房にオーダーを伝えると、すぐにエールを持って帰って来る。
「どうぞエールです」
「ありがとう、少し聞きたいことがあるの、いいかしら?」
「今はお客さん他にいませんし、時間はありますから大丈夫ですよ」
多すぎるチップは情報料も兼ねてるから話が早い。
「ダンジョンマスターには会えるのかしら?貴族様の依頼で直接手紙を渡さないといけないの」
「ダンジョンマスターに会ったことないし、ダンジョンの最奥にいるらしいですよ。後は女のエルフくらいしか情報が無いですよ。冒険者でダンジョンマスターとラスボスに詳しい人って自慢してた人がいますよ、村人として家買って住んでるので最近は会ってないで、紹介は出来ないですけどね」
これは大嘘である。ここは優姫ちゃんの行き付けのお店というか先日ここで混沌を発生させた場所である。
エマーシュにも全く同じ事を言っていてウソが全くバレないあたり、かなり優秀な密偵なミュウニーちゃんである。
「はぁ、まそうよね。連絡手段とかは知らないわよね?」
「ネイ元女王陛下が窓口で交渉してるらしいくらいですね。もしかしたら村長が繋げるかもしれませんよ」
「シバル王家が直接パイプなのかぁ、エルフには厳しいわ」
密偵は定期連絡をネイにしているし、海くんがミュウニーちゃんを少しは気にかけているので、アポイントメントくらいなら簡単にとれたりする。
何よりダンジョンマスターは暇なのだ。暇すぎてダンジョンメニューの機能で村を監視?・・・いや透視?盗聴?しているくらいだ。今は火薬の変わりに綿を使えないかと試行錯誤していて見ていない。綿をそのまま使っても火薬になることはないだろう。真面目なのは優姫ちゃんだけだ(笑)
ネイは王家の裏の仕事をしていて、キアリーさんは料理に情熱を燃やして、サイオンは修行とクロスボウの強化をしている。海くんは自由人であるが結構鍛えたり訓練したり、サイオンと研究したり魔法を調べたり、片付け掃除とみんな忙しいのだ。
仕事がダンジョンマスターにないのは、リーダーは責任者なのでどっしり構えて、判断を下すのが仕事だからだ。
オリハルコンメンタルで即決するのだし皆優秀なのでリーダーにムダな仕事は残らないからということにしておこう。優姫ちゃんの名誉のために。
「大変ですね」
ミュウニーちゃんは目の前のエルフの下級貴族からの依頼など他人事である。むしろ優姫ちゃんの暇潰し相手になる方が大切だ。
「はぁ、そっちは冒険者ギルドでも聞いてみるわ。別件の、私がしてる個人的な人探しなんだけど、10歳の女の子エルフ知らない?里がオークに襲われてその時にオークナイトの死体があって、赤ちゃんが誰かに助けられたみたいなのよ。もし生きてたら今は10歳なのよ」
「このあたりはエルフは珍しくないので分からないですね」
「ありがとう、もしダンジョンマスターに会うためでも奥深くに行ったら不味いかしら?」
収穫はあまりないな。最後にこの村のダンジョンに対するイメージを聞いて、行動方針にしましょう。
「それは住人としてはやめて欲しいですけど、冒険者ギルドに聞いた方がいいですよ」
「分かったわ、ありがとう」
スペシャル肉の定食を食べて冒険者ギルドに向かいます。あまり無茶な破壊は歓迎されないと覚えて、おかないとだな。
そしてすぐに到着して冒険者ギルドの受付嬢に声をかける。
「こんにちは、ダンジョンマスターに手紙を届ける依頼なんだけど、ダンジョンマスターに会えるかしら?」
「あー、あのジャス・パー男爵の依頼ですか?」
「そうなのよ」
「冒険者ギルドからも男爵が会いたい希望していると伝えたのですがあっさり断られてるので、難しいと思いますよ」
「年齢の近いエルフの女の冒険者が友達になりたいでも難しいかしら?」
「ダンジョンマスターは直接交渉してくれませんからね、どうしてもネイ元女王陛下に仲介いただくので・・・」
「ネイ元女王陛下のところで止められそうね」
実は優姫ちゃんが権力者とか緊張するし、政治とか分からないし、エルフとか興味ないし、そもそも会ってもダンジョンの稼ぎにならないからやだと断っている。
それをやんわりとした断りにネイが調整していたりする。
「奥に進めば会えるのかしら?」
「ダンジョンマスターに会えたという話はほとんどありませんよ。最初期はダンジョンが浅くて会えたらしいくらいですね。今はラスボス部屋の攻略は禁止ですし、奥は稼ぎも悪くてうまみもありませんよ」
「分かったわ、今日は準備して明日、すこし目立つように奥に進んでみるわ。上手くダンジョンマスターの興味を引ければ、向こうから連絡あるでしょう」
「それくらいならかまいませんよ」
こうしてエレンティアは村で買い物して一晩宿で過ごすのであった。
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