064話 間話 不思議な村4

 エマーシュ side

 

 

 食事をして、武器のメンテナンスして、小道具を揃えて冒険者ギルドにやって来ました。

 

 冒険者としての仕事はまともにしてなくて、国を移動するための身分として維持してるだけなのだけど、トオイノナンデ伯爵が手を回してダンジョンに入れるようにしました。

 

 国の管理下のダンジョンなので貴族が推薦すれば良いのです。ここはかなり緩いらしく、いらないくらいでしょうが活動が少ないから私は弾かれる可能性がありましたからね。

 

 冒険者ギルドからなにやらトラブルの気配がします。

 

「どうしたのですか?」

 

 とりあえず冒険者ギルドにいた野次馬をしている冒険者に聞いてみます。

 

「アホなやつが受付嬢のナーシャに言い掛かりをつけてるだよ。ナーシャさんの、恐ろしさを知らないのだろうな。ここでトラブルなんて起こしたら後々のランクアップにも影響するだろうにアホだよ」

 

 確かに複数種で構成された強面の獣人パーティーが大人しそうな鳥人の受付嬢相手に騒ぎ立てている。

 

「ダンジョン内で見つけた宝物じゃなくて持ち込みだ、記録忘れだ!とゴネるなんて、良くダンジョンの探索許可おりたよな」

 

「ダンジョンに出禁とか、ギルドからの罰則とかあるのによくやるぜ、しかもナーシャさんにだぞ」

 

 声をかけた冒険者のパーティーなのか、他に2人が状況を教えてくれる。さらにもう一人もナーシャさんという受付嬢が恐ろしいという。

 

 冒険者ギルドの受付嬢は弱すぎるとトラブルになるのでそれなりに強いはずだし、冒険者は教養もあるから酒を飲んでなければまともなやつが多いのだけど、例外のようだ。

 

「ナーシャさんってそんなに強いの?」

 

「一人なら負けないだろうが、パーティーは無理だろ?」

 

「ナーシャさんの恐ろしさはそこじゃないからな。でも本気はすごいかもだぜ?」

 

「なによそれ?」

 

 意味が分からないのでもう少し質問してみます。

 

「ナーシャさんを困らせると股間が濡れるだよ」

 

「えー!?どういうこと?」

 

「漏らしたかのように股間が濡れるだよ」

 

「今は絡んでる奴ら濡れてないじゃない」

 

「後でギルドを出てからな」

 

「公衆の面前でだな・・・」

 

「だから彼女がやった証拠はないんだが彼女が殺ってるだろうな」

 

「それって社会的に殺されるのでは?」

 

「だからナーシャさんが恐ろしいって言ってるんだ」

 

「しかも数日後のナーシャさんが居ない場所で2回目なんて事もあるんだ」

 

 騒ぎ立てていた冒険者にギルドマスターが出て来て対応している。

 

 聞き取りにくいがどうやらこのまま、装備品の持ち出しを認めないなら除名と、ダンジョンの装備品の無断持ち出しで、シバル王国に突きだすらしい。

 

「シバル王国に突き出されたら終わりだろ?極刑もあり得るな」

 

「どこでもダンジョンの富を無断持ち出ししたら人生終わりだろ?」

 

「アホなやつらだな」

 

 私が話しかけたパーティーも呆れている。私も安くても金で買ってくれるなら良心的だと思う。

 

「交渉でいくらでもアイテム出せるだろうが!!少しくらい持ち出して何が悪い!!クズな規則より現場の実力が必要だろうが!! 」

 

 絡んでいた叫び声が激しくなりギルド中隅々まで聞こえるほどになる。

 

 そして静かになる。驚いたというよりは呆れて白けている。

 

「装備品は国家の物と法で決まってますから我々は法に従えと言ってるです。報酬もあるだから問題ないでしょう?」

 

 ナーシャという受付嬢も仕事なので言ってます感がある。あれはビビってはないのかな?

 

「なら記録ミスしたてめぇらが責任とれや!!」

 

「なんやうるさいな?どないしたん?」

 

「ウレナイ殿、冒険者が揉めてる様なので危ないですよ。下がってください」

 

 ウレナイって豪商だけど三流の商人じゃない?なんでギルドに来るのよ?というかレストランの女の子も一緒だし、もう一人男がいるけど口ぶりから村の役人か村長かそのあたりかな?

 

「村長さん、我が無理言うて野次馬しに来たからええんやで」

 

 こてこての商人方言!!マジもの商人か?あえてコービニが潰れないように面倒みてるのなら愛人もありね。

 

「そう言って下さると助かります」

 

 村長がお礼を言う。間違いなく中央の法衣貴族が現場に派遣されて村長してるわね。農家の代表なら教養と度胸がありすぎる。

 

 ウレナイが冒険者に声をかけます。マジもの商人なら凄い交渉術を持ってるのだろう。

 

「ほんま大の大人がアイテムの1つや2つでごちゃごちゃ言い掛かりとか、情けないことやで?おつむ大丈夫なんか?」

 

「あぁ!てめぇやんのか!」

 

「自分本当に冒険者かいな?もうちょいまともな人間やないとなれんし続かんやろ?」

 

 冒険者煽ってる!!交渉術はどうした?やっぱりバカな3代目とかなのかな?

 

「死ねや!!」

 

「全く、不正やミスを一度でも認めたら際限がなくなるのですよ。多い少ない、はじめてとか関係ないくらい分かって欲しいですね」

 

 レストランの看板娘がそう言うと冒険者パーティーに瞬速で、接近するとパーティーに腹パンの一撃で鎮めてしまう。

 

「さすがはミュウニーいい仕事やで」

 

「お褒めいただきありがとうございます。ウレナイ会長の方が腕っぷしが上ですし、商会の出世基準は強さでしょ?それにしても女の子に冒険者の相手させるとかとか酷い職場です」

 

 女の子がジト目を商会長に向ける。案外に言うね。というかいつの間にウレナイ会長の横に戻ったのか気が付かなかった。

 

「親心やないかい。うちは物流かメイン商会のやで。魔物やら盗賊やらにいっつも狙われるとるんや。常に鍛えとかんと死ぬで」

 

「何が親心ですか!雑魚冒険者なんてサンドバッグと変わりませんよ。せめて腹パ耐える相手じゃないと意味ありませんし盗賊に遅れなんて取りませんよ」

 

 ウレナイ商会は脳筋武闘派なの?冒険者パーティーを一撃で全滅出来るほど強いとか裏社会のマフィアも、ビックリでしょ?腐っても冒険者は戦闘のプロ集団なのよ。

 

 実力の幅はあるとはいえ、ダンジョン探索は最低でもDランク、女の子が簡単に倒せる相手じゃないはず。

 

「いろいろ盗賊殺してるしうらみつらみは溜まっとる商会やで。冒険者を少しサンドバッグにするくらいあきらめや」

 

「それとこれは関係ないかと思います」

 

「せや、危ない仕事したら臨時ボーナスはださなあかんな」

 

「今後も、このくらいならいつでもやります。お任せください」

 

 看板娘の掌返し凄いな。世の中、金なんだね。

 

「村長さん、出費も増えてもうたし問題解決料を貰えんやろか?」

 

「ギルドの問題ですから冒険者ギルドに請求して下さい」

 

「そういうことなら、冒険者ギルドマスターなのに突っ立とるだけのタンテ頼むで」

 

「はぁ、仕方ないですね」

 

 こうして問題解決したけど、いろいろあって疲れすぎてダンジョンに入る気はしないので、宿に戻ってトオイノナンデ伯爵に村の不思議を報告書にして送って、ファミリーにネイの暗殺受けたけど前金だけ受け取って逃げたいと手紙を送ったのでした。


 トラブルを起こした冒険者はダンジョン産の装備品で人旗上げたかったらしいけど、冒険者資格剥奪とギルドの損失としてミュウニーちゃんのボーナスが請求されて、借金を背負い、戦闘奴隷として売られたらしい。


 ボーナスで冒険者に借金背負わせるとかどんだけ貰ったのか気になる。愛人なのかしら?

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