098話 間話 ラブラブカップル

 レイナ side



 機密、最重要、最優先、即破棄、複写禁止、機密!!というのが冒頭に書かれている暗号化された手紙がやって来た。機密が被ってるがそれほどのものなのだろう。


 送り主がネイなので正直ヤバい内容なのは確定だ。このまま読まずに破棄したいのだけど確実に収入が増えているダンジョン関連なのだから、読まずにはいられない。


「はぁ、続きも解読しますかね」


 それから小一時間かけて解読した私がキレても悪くない内容と思うのです。


 ゲーヘルを殺した。問題なし。

 エルフにダンジョンが土地とある程度の食糧提供(家なし)。交渉はこっちでする。

 王都にトンネル開通させる。もめくりまわすが将来有益。

 ダンジョンマスターについては1時間後には、行くから人払いを完璧によろしく。


 は?ケンカ売ってるの?


「はぁ解読するだけで時間切れなんだけど、人払いする暇なんてないわよ」


「そう思って私の部下にやらせましたー♪」


 さっきまで居なかったはずのネイが声をかけて来ます。間違いなく高レベルの密偵を複数投入しているでしょう。


「それでここまでする理由はなに?」


「人払いと防諜は完璧です。」


 ネイは側にる部下に目線を送り最後の確認をする。


「もちろん王家と国家の存亡に関わる大問題だからですー♪」


 それでダンジョンマスターが異世界?の前世?らしい記憶があり、エルフというよりはダンジョンマスターとしての意識が強いこと、その記憶を元に新兵器や技術、文化などなどありとあらゆる事を研究再現しようとしていること、ゲーヘルの禁忌認定された技術も含まれること、神を信仰してないこと、大賢者のことを説明される。


「・・・なるほど、神も世界中の信者さえも恐れぬダンジョンマスターですか、滅ぼさねばなりませんか」


「レイナは頭固いなー♪すでに魔王くらいなら滅ぼせる戦力がありますー♪支配下の魔物の全貌は私も知りませんー♪少なくともシバル王国の独力では滅ぼせても致命傷は確実ですー♪それにこのままではいずれ魔王に土地を奪われて滅亡ですー♪」


「確かに強大化し増え続けている魔王は各国の滅亡理由になるが、ダンジョンマスターに味方すれば世界中が敵になる。そうなれば魔王より先にシバル王国が各国に滅ぼされるだろう?」


 私や子の代は問題ないだろうが、数百年も保つのかと言われると分からない。今の魔物との均衡がいつ崩れるのか分からないからだ。


「今はバレなければいいのですー♪現状の私はダンジョンとの繋ぎで保険なのですー♪ダンジョンが各国や教団を全て跳ね返せるならー♪シバル王家は私を通じてダンジョンに味方してー♪魔王から守られるー♪無理なら各国と協力してダンジョンを滅ぼすですー♪」


「なるほど、その時までダンジョンで利益を得てタイミングによってどちらにもつけるようにか・・・しかし民も兵も禁忌を犯したダンジョン側にはつかない、王家の滅亡はダンジョン側につけば確定でしょう?」


 利益だけを見ればネイは正しいが、宗教倫理の壁は突破できない。


「魔王を滅ぼす威力武器を大量配備されてー♪それに対抗してダンジョンで魔法を使うだけでー♪次の補給品を提供するようなものですー♪死んだら一時的でも大量に提供するのですー♪道を狭く深くされてー♪魔物に立て続けに襲われてー♪どうやって突破するんですか?ー♪」


「・・・それはSランクか同等の実力者のみで死者を覚悟して滅ぼせるかどうかというところですか。大軍は無意味で魔物に隙を見せるだけか・・・ダンジョン側で魔王を滅ぼせるのかな?」


「ゲーヘルの武器はダンジョンが関係ないけどー♪コピーは出来るそうですー♪後は自称大賢者が居るとだけですー♪ダンジョンマスターは身内には無条件で味方ですー♪」


「なるほど、なるほど、ネイはすっかり変わりましたね。王家を絶対としていましたがダンジョンマスターにかなり肩入れしてますよ。それなら私からダンジョンマスター側のネイに無茶振りしても大丈夫でしょう?」


「王家とダンジョンマスターの利益になるなら良いですよー♪」


 このままダンジョンマスターの利益がエルフに偏れば偏るほどシバル王国の取り分と発言力が下がりますね。今はダンジョンマスターはシバル王国と戦うつもりは無さそうですがエルフはキナ臭いですし、ダンジョンマスターはエルフ族で家族も親も存命、ならシバル王国はトンネルなんてケチケチしないでエルフよりも大きく投資しましょう。


「なりますよ。王城と王都をちょっとダンジョン内に移設するから作って欲しいだけです。エルフに負けてられませんし身内になればダンジョンが守ってくれるのでしょう?」


「「えっえーーー!?」」


 ネイの控えていた部下とネイがハモります。


「レイナ頭大丈夫?ー♪」


 ここが勝負所でしょう。このタイミングで話を持ってきたネイはさすがですね。


「酷いですね。すぐにとは言いませんがダンジョン側について各国と信者、魔王を相手取るところ言ってるのです」


「さすがに決めるの早くない?ー♪負けたら滅亡だー♪」


「すでにシバル王家単独で魔王に勝てないならどちらか決めるべき。投資は早ければ早いほどリターンが大きいのだから、ならいずれ魔王に滅ぼされる確定のリスクが小さい既存陣営よりは、リスクが大きい新たな勢力を選ぶだけ。エルフ達を送り込んでノウハウが出来たら次は王都をお願いしますよ。シバル王家が全力で投資すれば勝率は上がるでしょ?」


「仕方ない説得は任されましたよー♪エルフ達で原資を稼ぎますよー♪詳細はまた後日で良いでしょう?ー♪」


「かまわない、明日はジャス男爵の説得も頼みますよ」


「そっちはダンジョン側の仕事ですから安心して下さいなー♪バイバイー♪」


 ネイが部下と執務室から去って行くと入れかりに太っちょな旦那がやってくる。


「姉妹の語らいくらいしてもバチは当たらないだろうに」


「ネイは王家が一番、次が自分、他は利益があるかどうかだよ、楽しくない語らいはあれで、十分かな」


「僕は君達の兄を救えなかったからね。少しでも生きてるなら家族で幸せになって欲しいのさ。もちろん僕がレイナは最高に幸せにするよ」


「あの無能な兄は気にしなくていいのに、兄を救えなかったから幸せにしてくれるの?」


「いやすまない、失言だったね。もちろんレイナという聡明で可愛い僕の妻を世界一の幸せ者にしたのさ、ネイは君の姉だから気にするし、君の兄だって君のために気にするだけだよ。レイナの幸せが僕の幸せだからね」


「勝手に引っ越し決めたけどいいかな?」


「地獄だろうと世界の果てだろうとレイナの夫としても辺境伯としてもついていくよ。僕は妻をけっして裏切らないし絶対味方さ」


「ありがとう」


 執務室の椅子からお姫様抱っこされます。


「大変な事があったみたいだし、たくさん愛してあげるよ」


「お風呂がまだだしぃ」


「お風呂にいくかい?」


「やっぱりいい、早く愛して」


「お任せあれ」


 そのままベッドに運ばれました。

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